「芸人が世界大会5位?」ゲーマー芸人・NOモーション。が格ゲーの世界大会で入賞!激闘の裏側と銅メダル感動秘話
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対戦格闘ゲームの金字塔を新たに実写化した映画『ストリートファイター/ザ・ムービー』が、2026年10月16日(金)に全世界同時公開される。ゲームから映画へと広がり、世界的な注目があらためて高まる「ストリートファイター」。その魅力を“笑い”に変え、言葉や国境を越えて届けているのが、ゲーマー芸人として活動するお笑いコンビ「NOモーション。」だ。
2026年8月、2人はアメリカ・フロリダ州オーランドで開催された世界的な格闘ゲーム大会「CEO 2026」に出演。代名詞である『ストリートファイターII』のモノマネを披露しただけでなく、星ノこてつ。さんが『Virtua Fighter 5 R.E.V.O. World Stage』部門でウィナーズ側からTOP8へ進出し、5位タイに入る快挙を成し遂げた。
しかも、2人が現地から持ち帰ったのは、星ノこてつ。さんが選手として獲得した銀メダルだけではなかった。大会終了後、スタッフの一員として贈られた“もう1つのメダル”には、「CEO」が長年大切にしてきたコミュニティへの思いが込められていた。ウォーカープラス編集部の有賀が、熱狂の舞台裏と格闘ゲームイベントの未来について聞いた。
プロレスのリングを囲む観客たち。「CEO」は「ゲーマーのための楽園」
【有賀】まず、「CEO」がどのような大会なのか教えてください。
【矢野ともゆき。】「CEO」は、アメリカ・オーランドで開催されている格闘ゲームのコミュニティ大会です。名称は「Community Effort Orlando」の略で、EVO(※)などと並ぶ大きな格闘ゲーム大会の1つです。
(※) 「EVO(Evolution Championship Series)」は世界最大規模の対戦型格闘ゲームのeスポーツ大会
【星ノこてつ。】アメリカらしいと思ったのは、プロレスのリングがステージになっているところですね。主催者のアレックス・ジェベイリーさんがプロレス好きで、選手は花道から入場し、リング上でパフォーマンスをしてから対戦します。観客もリングを360度囲んでいて、熱気と臨場感がすごいんです。
【矢野ともゆき。】もともとはオーランドの小さなコミュニティから始まったそうですが、今ではホテルの宴会場がすべてゲーム会場になっています。24時間遊べるアーケードゲームのスペースもあり、大会が終わった人もそこで交流できる。ゲーム好きなら一日中遊べる、楽園のようなイベントでした。
2人が「CEO 2026」へ招かれるきっかけになったのは、前年にアメリカ・ラスベガスで披露したステージだった。海外の格闘ゲームコミュニティでNOモーション。の存在が知られるようになり、日本のアパレルブランド「無敵時間」を通じて、「CEO」主催者のアレックス・ジェベイリーさんと対面。『ストリートファイターII』のネタを知っていたジェベイリーさんから歓迎を受け、今回の出演へつながったという。
【星ノこてつ。】趣味が同じ人たちが集まっていると、言葉が完全に通じなくてもわかり合えるんです。昔の『ストリートファイターII』は日本と海外でキャラクターのボイスが共通だったので、サガットの声やゲーム内の効果音を再現するだけで、海外の人も「わかる!」と笑ってくれる。自分たちがやってきたことは世界でも通じるんだと、うれしくなりました。
ステージ直後に大会へ。「もらった命だから頑張ろう」とつかんだTOP8
「CEO 2026」で星ノこてつ。さんが挑んだのは、『Virtua Fighter 5 R.E.V.O. World Stage』部門。だが、芸人と選手の“二刀流”には、思わぬ危機が待っていた。NOモーション。のステージと、トーナメントの試合時刻が重なってしまったのだ。
【星ノこてつ。】「これは絶対に失格になるな」と思いました。スタッフに「パフォーマンスがあるので、可能なら試合を待ってもらえませんか」と相談したら、ゲストパスを見て「聞いているよ。ギリギリまで待つ」と言ってくれて。ステージを終えた時点で30分以上たっていたのですが、会場へ走っていったら、本当に待ってくれていたんです。
【矢野ともゆき。】僕らはそれぞれのトーナメントへ向かうことになって、「じゃあ、行ってこよう」と別れました。
【星ノこてつ。】待ってもらえなければ、今回の結果にはつながっていません。「もらった命だから頑張ろう」という気持ちでしたね。
勝ち進んだ先で星ノこてつ。さんを待っていたのは、『バーチャファイター』シリーズのボスキャラクター・デュラルを使用する選手だった。「CEO 2026」ではデュラルも使用可能。対戦経験がなく、連係の切れ目すらわからない相手に追い込まれたが、星ノこてつ。さんが使うキャラクターも現地では珍しかったという。
【星ノこてつ。】こちらも相手のキャラクターがわからないけれど、向こうも僕の技を知らない。お互いに通る技を擦って何とか勝利できたような状態で、最後は2人で笑っていました。それでも、これまで教えてもらったことを出せて、すべて納得のいく試合ができました。
『バーチャファイター』は、コンビを組んだころから2人で遊び続けてきたタイトルでもある。ネタを作るために集まったはずが、片方が席を外した隙にゲームを始め、気付けば一日が終わっていたこともあったという。長年重ねてきた時間が、世界大会TOP8という形で実を結んだ。
【矢野ともゆき。】応援している側は、「うそだろ、行きやがった!」「マジか!」という感じでした。現地のプロ選手やキャスターの皆さんからも、「おめでとう」「CEOでメダルを取るのはすごいことですよ」と声をかけていただきました。
【星ノこてつ。】最終結果は5位タイでした。格闘ゲーマーとしてももちろんですが、お笑い芸人というジャンルで「CEO」のメダルを取れたことは、コンビにとってかなり大きい。宝物ですね。
選手には金と銀、スタッフには銅。大会後に知った“もう1つのメダル”
「CEO」では、優勝者にチャンピオンベルトと金メダル、2位以下の上位入賞者には銀メダルが贈られる。5位タイとなった星ノこてつ。さんも銀メダルを手にした。しかし、表彰台に銅メダルはない。2人は大会最終日、その理由を初めて知ることになる。
【矢野ともゆき。】大会が終わり、片付けが始まっているなか、花道でアレックスさんを中心にスタッフが集まり、記念撮影をしていたんです。僕らも最後にあいさつをしようと近くを歩いていたら、「Come on!」と呼んでくれて。「お前たちもパフォーマンスを頑張った。スタッフであり、仲間であり、家族だ」と、集合写真に入れてくれました。
【星ノこてつ。】撮影の後、スタッフ全員に銅メダルが配られたんです。表には出てこなかった銅メダルは、コミュニティを支えたスタッフへの感謝を示すためのものだった。選手とスタッフ、みんなで大会を作り上げているんだとわかって、感動しました。
選手として銀メダルを獲得した星ノこてつ。さん。そして2人は、ステージで大会を盛り上げた仲間として、それぞれ銅メダルも受け取った。世界大会で結果を残した証しと、その舞台を作る一員として認められた証し。異なる意味を持つ2つのメダルは、NOモーション。が掲げてきた「笑いと勝負」の二刀流を象徴している。
【矢野ともゆき。】プロ選手の方にこの話をしたら、「めちゃくちゃいい話ですね」と驚かれました。選手は金か銀しか取れないので、実は銅メダルもなかなか手に入らないんですよ。
【星ノこてつ。】僕は銀と銅を持っているので、あとは金だけですね(笑)。
海外で名前を覚えられ始めた2人。「新規の人にも楽しいお祭りを」
「CEO 2026」では2度のステージに立った。登場時には主宰者のアレックス・ジェベイリーさんが観客を煽り、リングのロープを開けて2人を迎え入れた。『ストリートファイターII』に加え、海外人気の高い『SAMURAI SHODOWN』や『Mortal Kombat』のネタにも挑戦。格闘ゲームへの深い理解が伝わる細部まで再現し、会場から大きな反応を得た。
【星ノこてつ。】ラスベガスで披露したときよりネタを増やし、アメリカの方が好きなタイトルにも挑戦しました。会場の人が喜んでくれたので、「大丈夫だ。ちゃんとわかってくれるんだ」と自信になりましたし、コミュニティの温かさを感じました。
【矢野ともゆき。】数年前と比べて、海外の主催者や関係者の方が、僕らを見つけて声をかけてくれるようになりました。「ゲームだけでなく、レクリエーションも必要だよね」と感じてもらえていると思います。何か催しを入れるときに「NOモーション。を呼ぼう」と思ってもらえるようなアピールはできたのかなと。
【星ノこてつ。】格闘ゲームイベントは、真剣勝負を見る場所であると同時に、新しく来た人が見ても「楽しいお祭りだな」と思える作りが、これからもっと大事になると思います。次は「EVO Singapore」にも行きたいですね。
『ストリートファイター6』で変わった客席。女性、若者、そして親子が会場へ
【有賀】素敵なエピソードをありがとうございます。最後に、日本のイベントシーンについてお聞きします。『ストリートファイター6』の発売前後で、格闘ゲームイベントにはどう変化しましたか?
【矢野ともゆき。】僕らがカプコンさんの仕事に関わるようになったのは、『ストリートファイターV』の後半からです。当時は「格闘ゲームは難しい」というイメージがありました。でも『ストリートファイター6』でモダンタイプが登場して、「やってみようかな」という人が増えましたよね。
【星ノこてつ。】オフラインイベントでは、若い人や女性が本当に増えました。『ストリートファイターV』のころには見なかったような光景が、今は当たり前になっています。
2人が最近、さらに大きな変化として感じているのが親子連れの増加だ。イベント終了後、親子がその日の対戦を振り返り、父親が子どもに対空の反省点を伝える。すると子どもが「でも、いつもお父さんは僕に勝てないじゃん」と返す。以前ならコントの設定だったような光景が、現実の会場で繰り広げられているという。
【矢野ともゆき。】昔の野球少年やサッカー少年のように、“格ゲー少年”が増えているんです。日曜日にお父さんやお母さんが応援に来て、試合後には親子で反省会をする。少し前なら「もしも、こんな親子がいたら」というコントにしていたような場面が、実際に目の前で起きています。
【星ノこてつ。】親子大会も開催されるようになっていますし、これからますます盛り上がると思います。ゲームの大会だけでなく、初めて来た人も楽しめる“お祭り”になってきていますね。
実写映画『ストリートファイター/ザ・ムービー』の公開を控え、ゲームの枠を越えて熱を広げる「ストリートファイター」。世界共通の音と笑いを武器に、選手としても結果を残したNOモーション。は、格闘ゲームの熱狂と、まだその魅力を知らない人をつなぐ存在になりつつある。銀と銅、2つのメダルを携えた2人の次なる“ラウンド”に期待したい。
取材・文=有賀俊澄
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