「気にしなくていい」と誰かに断言してほしかった……せん妄とわかっていても受け流せない娘の切ない葛藤
母親の介護と看取りを描いた『20代、親を看取る。』で大きな反響を呼んだ漫画家・キクチ(
kkc_ayn
)さん。
現在連載中の話題作『父が全裸で倒れてた。』では、今度は父親の突然の倒木と闘病、そして過酷な看病に向き合う怒涛の日々がリアルに描かれている。
一度は一般病棟へ移り安堵したのも束の間、父親の容体が再び急変。ICU(集中治療室)へ戻ることになり、キクチさんは大切な家族が別人のようになっていくという、身体的苦痛以上の精神的試練に直面することとなる。
「お母さんみたいになるな!」一般病棟での激しい感情起伏とせん妄の兆候
一般病棟へ移動してからの父親は、気分の浮き沈みが極めて激しかったという。
「俺なんて生きてる価値がない」と弱音を吐く父を励まそうと懸命に声をかけるキクチさんだったが、返ってきたのは「お母さんみたいになるな!!」という予期せぬ強い拒絶の言葉だった。
当時は「弱っている父親にキツく言いすぎてしまったのではないか」と自分を責め続けたキクチさん。医師からは「それは一時的な『せん妄』による症状ですよ」と説明を受けるものの、激しく傷ついた心を素直に整理することはできなかった。
拘束具を引っ張り大暴れ……「お前だれ?」の一言が胸に突き刺さる
その後、容体が悪化して再びICUへ戻った父親。面会に訪れたキクチさんの目に飛び込んできたのは、ベッド柵によじ登ろうと拘束具を力任せに引っ張り、大声を上げて暴れる父親の姿だった。
病院側から事前説明を受けていたとはいえ、「そんな筋力がどこにあったのか」と驚くほどの暴れぶりに、深い衝撃を受ける。
さらにキクチさんを追い詰めたのは、せん妄状態の父親から放たれた暴言だった。「死にかけたのはお前のせいだ」「お前だれ?」。頭では病気の影響だと理解しようとしても、「意識が朦朧とした時に本音が出るのではないか」「温厚な父の本当の気持ちなのでは」と自問自答を繰り返し、深みにハマってしまう。
言葉をそのまま受け流す術を持たなかった当時の葛藤と、大切な家族の変化に向き合う重厚なコミックエッセイ。介護や看護の現場で誰もが抱え得る精神的苦痛を浮き彫りにする本作を、ぜひチェックしてみてほしい。
取材協力:キクチ(@kkc_ayn)
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