「まさか父まで…」母看取り2年後…全裸で倒れた父から「苦労かけて申し訳ない」と謝罪
右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をコミカルな漫画で描いてきたキクチさん(kkc_ayn)。母親の自宅介護と看取りがテーマのコミックエッセイ『20代、親を看取る。』では、現実的な介護の厳しさや親との死別に向き合う複雑な感情を描き、多くの読者から大きな反響を集めた。
※本作は著者の体験を描いたコミックエッセイです。紹介している病状や治療の経過には個人差があり、医学的な見解を代弁するものではありません。気がかりな症状がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。
困難を乗り越えついに本格治療へ!父から届いた突然のビデオ通話
母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れる姿を描いた『父が全裸で倒れてた。』。一人っ子として頼れる家族がいないなか、さまざまな決断を迫られるキクチさんの姿を通して、誰もが直面する親の老いと死を描く。今回は、本格的なリンパ腫治療の開始と、父からのビデオ通話にまつわるエピソードだ。
父が新型コロナウイルスに感染してから少し経ち、担当医師から呼び出されたキクチさん。感染に伴い抗がん剤治療を中断していたため腫瘍が大きくなっていると告げられるが、コロナ自体は回復傾向にあり、ようやく本格的な治療を再開できるという。父が倒れてから約2カ月弱、ようやく迎えた前進だった。
「腫瘍が大きくなっていると聞いたときはやはり不安になりました。それでも幸いなことに、やっと本格的な治療ができると聞いて安堵しました。これまでは身体がズタボロで標準的な抗がん剤に耐えられる体力がないため、様子を見ながら少量で投与していたのです。本格的な治療ができるということは父の体力が復活してきた証拠でもあり、ここからがスタートラインだと感じました」
画面に映ったのはむくんだ顔?画面越しに復活した父の元気な姿
スマホで文字を打てるまでに回復した父から、なんと直接ビデオ通話がかかってくる。担当医師から深刻な説明を受けた直後だったが、画面に映し出された父の表情やあっけらかんとした話し方は、元気だったころの姿そのものだった。
「ビデオ通話を受けて映った画面が“これ”だったので、本当に笑いました。いつもよりむくんだ顔が、余計につぶれた表情を誇張していて…。コロナに罹っていたとはいえ、医師が言っていたようにほとんど症状がない状態で体力も戻ってきたことから、元気だったころの父が戻ってきた印象でした」
せん妄中の言動を謝罪された日。救われた心と不穏な予感
さらに父は、せん妄を起こしていた時期の記憶が断片的に残っていると明かす。「苦労させて申し訳なかった」と謝罪する父の言葉は、せん妄状態の父と必死に向き合ってきたキクチさんにとって、救いとなるものだった。
「せん妄は脳の意識障害なので、まさか覚えているとは思いませんでした。今思えば『意識がありながらあんなひどいことを言っていたんかい!(笑)』と突っ込まずにはいられないですが、過ぎ去ったことなので責める気にはなりません。でもやっぱり謝ってもらえると心が救われました。実際、せん妄を振り返って謝ってくれる人なんてまれなのではないでしょうか。すごく私は幸せ者だと思いました」
本格的な治療への期待と父の回復に胸をなでおろしたのもつかの間、物語は不穏な気配を残して締めくくられる。過酷な状況のなかでも笑いを忘れないキクチさんのコミックエッセイから目が離せない。
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