うつ病の記憶障害で大事なことを忘れてしまう/『マンガでわかるうつ病のリアル』(25)
慣れないテレワークにストレスを抱えていたり、子供の面倒を見るのに疲れてしまったり。「楽しい予定もぐっと減って、なんとなく気分が落ちている……」という人や、その周りの人にぜひ読んでほしいのがこちらの作品。重度のうつ病に5年以上苦しむも「メンヘラマッスル作家」として奇跡の復活を遂げた錦山まるが、あなたの知らないうつ病のリアルを連載形式でお届けする。

信じられない記憶障害をうつ病が引き起こす

楽しい記憶も幸せな記憶も消えちまうんだ

「うつ病による記憶障害……これがとても厄介です。イヤな記憶だけをキレイに消してくれるのならむしろウェルカムなのですが、病気ですからそううまくはいきません。症状や薬の副作用で起こる以上、こちらの都合なんてお構い無しです」
「筆者はうつ病がひどかったころ、ネトゲにログインしたら、前から狙っていたレアアイテムをなぜか持っていたことがありました。せっかくゲットしたのにその喜びの瞬間の記憶を無くしてしまったんだと気づいたときは本当にガックリでした(しかもガックリした記憶だけはしっかりあり、悔しさのみが残るという……)」
自分が知らない間に爆買い。知らない間に妊娠なんてケースさえある!

「上記は今となっては笑い話ですが、銀行の認印を無くしたり、何に使ったか分からないお金の記録があったり、仕事のデータをどこに保存したか忘れてしまったりと、笑い話では済まない事態になることも何度もありました」
「他のうつ病の人からも『息子の成長過程の思い出がポツポツ抜けてしまっている』『深夜にコンビニで食べ物を爆買いし暴飲暴食したらしいが記憶がなく、朝起きたらゴミが散らばっていた。そんな生活で20kgも太ってしまった』『名前も分からないたくさんの男性と性的な関係を持ったが、それに気づくのは行為が終わってから……ということを繰り返し、いつの間にか妊娠していた』など、記憶障害による大変な思いをたくさん聞きました」
記憶をなくした本人はもちろん、忘れられた恋人や家族や友人も不幸すぎる

「記憶があいまいになることぐらい誰にでもあります。大切な用事があることをつい忘れてしまった。とても大事な物なのにどこかに置き忘れてしまった……なんて体験は誰にでもあるでしょう。そのために悔しさや申し訳なさや情けなさを感じたこともあるでしょう」
「ですが、それが日常的に何度も何度も起こり、どんなに大事な約束だろうとどんなに大切な人との思い出だろうと、まるで本のページをランダムに破られていくかのように、ゴッソリ消えていってしまったら……?」
「人間関係を壊しますし、仕事にも悪影響が出ますし、精神的にボロボロになっていくのは簡単に想像がつくと思います」
「……とはいえ、何度も連絡ミスがあったり約束をパーにされたりデートの思い出を忘れられたりすれば、されたほうだってストレスを感じるのは当然です。いくら相手が病気でも『さっき言ったよね!?』などと思わず口に出したくなるときもあるでしょう」
「できるだけそんな事態になってしまわないように、お互いにつらくなるリスクが少しでも減るように『うつ病で記憶障害が起きることがあるんだ』ということを知っていただき、約束を口頭だけではなくメールでして記録を残したり、何度も確認したりするなど、あなたの負担にならない範囲で歩み寄っていただけましたら幸いです」
次回「うつ病で体調がコロコロ変わる」では、体調がよく見えても急に症状が変化するうつ病の波についてお伝えする。