庵野秀明も愛する「安彦ガンダム」の“キャラクター性”、撮影技術で増すガンプラの魅力【ガンプラ×写真】
コロナ禍による“おうち時間”の変化によって、その魅力が再認識されている「ガンダムプラモデル(ガンプラ)」。そんな、苦心して組み立てたガンプラ作品を「綺麗な写真に収めたい」と思う人は多い。しかし自分で撮る場合は撮影機材やスペースなどさまざまな制約があるのも事実。本連載【ガンプラ×写真】では、プロカメラマンがトップモデラーの力作を撮影し、作品がどう変貌を遂げたかを検証する。
キャラクターとして描かれている「安彦ガンダム」が好き
「RX-78-2 ガンダム 最終決戦仕様」を製作したヲパ(@GunGunpla)さんに本作で設定したストーリーを聞くと、「一年戦争を戦い抜いた機体・RX-78-2 ガンダム。何度か整備修理・改修を経て、実戦に耐えうるよう手入れをされ、宇宙要塞ア・バオア・クーの最終決戦に挑む、という設定です」と回答。1980年代のガンプラブームを経験した世代のため、いつかは本家本元でもある『ガンダム』を本気で作ってみたいと思ったのだそう。「手間はかかるものの、完成したときの満足感があるのと、顔にも手を加えるつもりだったので大きなサイズの方が都合がよかったんです」と話してくれた。
今回ヲパさんが使用したのは1980年発売の1/60 ガンダム(旧キット)。安価でシンプル、自分のイメージを投影しやすいためこのキットを使用したとのこと。「製作の際は顔と胸ダクトの造形にはこだわりました。あと全体的に、直線ではなく緩やかなアーチで構成しています」と、こだわりについて教えてくれた。
コンセプトについては、一番好きな作品と語る「ファースト劇場版3部作」の“安彦ガンダム”が基準となっているそう。「作画監督の安彦(良和)さんが描く『キャラクターとしてのガンダム』を再現することを目指しました」と強調した。
では、“安彦ガンダム”に近づけようとする理由は何なのだろうか。
「アニメ本編、とりわけ劇場版でガンダムが活躍する印象的なシーンは安彦さんが原画を担当しています。やはり、僕の中で“正しくガンダム”しているのはキャラクターとして描かれている“安彦絵”のガンダムなんです」
前述の通り、ヲパさんの“安彦ガンダム”へのこだわりは強く、一度完成したあとも再度ガンダムの顔を作り直したのだという。「一度は完成したものの、なんだか似てないんです。気になって仕方がなくなり、キットの頭部を使って新しく作り直しました。隈取りとマスク、そして顎、それぞれのバランスを見直しました」
撮影技術によってガンプラの魅力は十二分に引き出される
ファーストガンダムは、昨今の主流となっている“線の多いガンダム”とは真逆のスタイル。シンプルさの魅力について聞いてみた。
「どんなディテールのガンダムも、今となってはどれも正解だと思います。ですが、僕が一番最初に『カッコイイ!』と思ったのは、映画のスクリーンの中でメカとして、また“キャラクター”として描かれたガンダムでした。ディテールを足すよりも、塗装やウェザリングでスケール感を表現しました」
実際、1988年公開の映画『逆襲のシャア』で製作スタッフに加わっていた庵野秀明氏も、過去のインタビューで「ファーストガンダムのころは安彦さんがモビルスーツをキャラクターとして動かしていて、その適度な線の量がよかったと思うんですよ」(GUNDAM.INFOより)と語っている。このように、“安彦ガンダム”の持つ「キャラクター性」は40年以上経った今なおガンダムファンを魅了し続けている。
そんな「安彦ガンダム」を再現したヲパさんの作品を、今回はプロカメラマンが撮影。その魅力を最大限に引き出した撮影手法について聞いた。
「ポイントは陰影とディテールです。照明もバチっとあてるのではなく陰影が出るよう意識しました。あとはスケール感が出るように少し下からあおり目にワイドレンズで撮影したのと、モデラーさんがこだわったウェザリングをマイクロレンズで接写しました」(カメラマン・佐々木薫氏)
こうしたプロの技法を目の当たりにし、ガンプラ撮影の難しさと楽しさを再確認したというヲパさん。「これまで一眼レフで撮影したことはありますが、背景・ライティング・ピント・被写界深度・色温度の調整などに苦労していました。今回、プロの方に撮影していただいて、しっかりと撮影された作品は十二分に魅力を伝えることが可能なのだと痛感しています。一眼レフカメラが欲しくなっちゃいました(笑)」
今後の展望については、「1/60サイズでゲルググとガンダムを完成させました。いずれザク各種やドムも作ってみたいなと思っています」と笑顔で教えてくれた。
取材協力:ヲパ(@GunGunpla)
(C)創通・サンライズ