【猫マンガ】古今東西の昔話に猫が登場すると…クスッと笑えて和める新展開に!

グリム童話の「カエルの王さま」。王女が池に落としてしまった金のまりをカエルに拾ってもらったことからカエルと知り合いになるのだが、そのカエルは実は素敵な王様だった、という話。さて、そのカエルが猫だったらどういう展開が待っているのだろうか?

「カエルの王さま」のカエルが猫だったら…?

元の話では、王女はカエルを嫌がっていている描写が多い。王女がカエルにキスをしたことで、カエルは王様の姿に戻るが、このときも王女はいやいやキスをしている。原典では、カエルの要求に腹を立てた王女が壁に叩きつけた弾みで王様の姿に戻っているというから、もはや動物虐待だ。しかし、カエルが猫なら漫画の王女のように、むしろ猫でいてほしい!なでたい!となるだろう。

あらゆる昔話に猫が登場したらどうなるかを描いた漫画「ねこむかしばなし」をTwitterで発表しているのはぱんだにあ(@pandania0)さん。自由気ままな猫たちが作り出す、笑えて癒やされる漫画が生まれるきっかけを聞いた。

「考えていることがわかるようでわからない、そんな猫に惹かれます」

「ねこむかしばなし」を筆頭に、猫がモチーフとなった作品が多いぱんだにあさん。ぱんだにあさんにとって猫は一番身近な動物であることから、自然と題材に選んでいるのだそう。

「猫は表情があるようなないような、考えていることがわかるようなわからないような…それでいて一緒にいると楽しい、不思議な存在です。『カエルの王さま』がカエルではなく猫だったらどうなるかな?と思って描いた話が幸いにも好評だったので、続けてみようと思いました」

「ねこむかしばなし」に出てくる猫たちは笑顔やドヤ顔を見せていることもあるが、無表情なことも多い。表情のバランスが絶妙なのも、「猫がいたら確かにこうなる!」と思える秘訣なのだろう。

「さるかに合戦」より。降りられなくなる猫はあるある


「今は飼ってはいませんが、昔ヒマラヤンを飼っていました。あまりベタベタするのは好きではない猫で、たまにすり寄ってきて『あれ、私、好かれてる!?』と喜ぶとスッと去っていくタイプでした。多分、猫から寄ってきてもらえるタイプではないんです。たまに猫カフェに行くことがありますが、猫からは無視されています(笑)」とぱんだにあさんが現実の猫たちと片思い状態なのも、「ねこむかしばなし」の猫たちが人に対して必要以上にデレデレせず、どこかクールな理由なのかもしれない。

怖い話や悲しい話が猫のおかげで癒やしの話に

モチーフとなる“昔話”がおとぎ話や童話、神話、民話、偉人の逸話と幅広いことも「ねこむかしばなし」の魅力。その引き出しの多さはどこからくるのだろうか?

「昔から神話や昔話に興味がありました。とくに妖精が出てくる民話が好きです。ちくま文庫の『ケルト民話集』をきっかけにそういった本を集めるようになりました。オオカミやクマ、ランプの魔神という恐ろしかったりすごい力を持つ存在や、ちょっと悲しい結末が、猫に変わったり猫が加わることおもしろくなると感じています。自分で気に入っているのは『山月記』のネタです。トラではなく、猫に変身した李徴が『詩作も順調だ』という態度が気に入っています」

「山月記」でトラになるはずの李徴が猫になっている

「詩作は順調」という言葉を果たして信じてよいのだろうか?とはいえ、確かに猫になるのはいいかもしれない

「山月記」は自尊心の高い李徴が社会から孤立していく悲哀を描いた話だが、猫になった李徴は幸せそうで、思わず友人の袁傪(えんさん)も「いいなあ…」と和んでしまう。詩作を本当にしているかどうかはさておき…猫になるのはなかなか悪くなさそうだと思える話だ。

コンスタントにネタを発表しているが、ネタ作りには困らないのだろうか?

「それが、よく困っています。近所のスーパーへの買い物など、漫画を考える以外の事をしている時に思いつくことが多いです。思いついた物はスマホにメモをしていますが、たまに読み返すと意味がわからないメモもあります…」

そう言いつつも、2021年2月には多数の描き下ろしとともに発表作を収録した「にゃんと!ねこむかしばなし」を刊行。本では元となった昔話の解説もあるので、新しい神話や民話を知るきっかけにもなる。猫好きにはたまらない一冊であること間違いなしだ。

「ねこむかしばなし」1-1


取材・文=西連寺くらら

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