【4コマ】 「漫画家に引導を渡す」のも編集者の仕事?“自分の身の振り方くらい自分で決める”と語る漫画家の矜持
編集者と漫画家は、作品作りにおいて“車の両輪”とも形容される重要なパートナーだ。しかし、両者の関係について、「以前は上から目線の人がいた」と語るのは、週刊少年マガジン新人漫画大賞・特選受賞デビューし、『梅干と日本刀(梅干編)』(祥伝社・2016年)、まんが学術文庫『西郷南洲遺訓』(講談社・2018年)などを執筆している漫画家・玉屋かつきさん。先日、4コマ漫画『漫画家に引導渡すのも仕事』をSNSで公開すると、「全くもってその通り!」「職業としての否定なら大きなお世話」といった共感の声が集まっていた。同作に込めた意図は何だったのか、玉屋さんに話を聞いた。

“必要以上に自分の中に踏み込んでくる人”に拒否感を示す人も
――Twitterで4コマを発表する意図は?
【玉屋かつき】たとえ原稿料が発生しなくても、自分の思ったことをシンプルにまとめて発信できるからですね…。あと発信していないとドンドン忘れられて、世間的にいない人になってしまうので(笑)!仕事関係で相手のいる場合だと、いろいろシガラミや配慮が必要になりますし、自分の考えをストレートには表現できなかったりするのでストレス解消的な…。でも明らかな個人攻撃とか、差別発言はしないように気をつけています。
――今回、「漫画家に引導わたすのも仕事」作品がバズった理由はなんだと思いますか?
【玉屋かつき】やっぱり漫画家界隈の人は、編集者からの態度に圧迫面接のような意識を持っている人が多いのだと思います。今は昔よりコンプライアンスを意識している編集者さんが多いでしょうけど…。それでも高圧的に感じているんじゃないでしょうか。もちろんすべての編集者さんがそうだという話ではありませんけども。あと、漫画業界の人でなくても自分の周りで似たように経験をしていて、“必要以上に自分の中に踏み込んでくる人”に拒否感を示すんじゃないでしょうか。
――本作を描いた経緯を教えてください。
【玉屋かつき】Twitterに上げている4コマとかは大体そうなんですが、明らかな経緯やきっかけは特にないことが多いです。不意に昔のことを思い出したり、ちょっと心にひっかかったコトをボーッと考えているうちに「コレ描こうかな…」と思う感じです。でも昔のことですが、編集者とのやりとりでイヤな思いをした経験は多いですね。
――どのような体験をされたのでしょうか。
【玉屋かつき】昔の担当編集との打ち合わせですが、私の漫画の話はそっちのけで…、私がアシスタントをしている女性漫画家さんの男関係を根掘り葉掘りと毎回聞いてくる人がいました。私的にはいい加減にして欲しかったです。もっとスゴイ印象に残っている人のこともありますが、話すと関係者に迷惑がかかるので公にはできません(苦笑)。
――“車の両輪”にも例えられる漫画家と編集者の関係ですが、玉屋さんが言葉にするとどんな関係になりますか?
【玉屋かつき】当たり前ですが、“対等な関係”のビジネスパートナーだと思います。担当編集といったって人事異動や雑誌が変われば離れるわけだし…。漫画家が出版社の下請けみたいになっていたりして、漫画家に対して編集者が上から目線で漫画の描き方を指導したりもありますが、ヒットを連発しているカリスマ編集者ならまだしも、ヒット作を自分で立ち上げたり、担当したこともない人に言われても説得力がありませんよね。なので、相手を尊重する“フラットな仕事相手”であるべきだと私は思います。
――漫画の反響はどんな声がありましたか?
【玉屋かつき】「自分も似たようなことを言われた…」という人がけっこういました。「やっぱりね…」という感じでしたが、その人が漫画家を辞める前にその編集者が辞めた…と(苦笑)。あと、“他人が引導を渡すこと”に肯定的な人も何人かいて…。今どきそんな古臭い考えの人もいるんだな、という印象でした。私は、“自分の身の振り方くらい自分で決める”ものだと思っています。
画像提供:玉屋かつき(@TamayaKatsuki)