人々を襲う魔物の名前は「ハクビシン」!?害獣駆除が熱いバトル展開となった漫画に被害者から共感の声
かわいらしい見た目ながら、人里に出没し農作物や民家に被害を与えることが社会問題となっている動物、ハクビシン。そんなハクビシンから自分の育てた畑を守る姿を描いた漫画が「完全にバトル漫画」と話題になっている。

作者は漫画家のとうろう(
@xiuFyioC0AZYEtb
)さん。話題となったのはTwitterに「ハクビシンと戦う漫画」として投稿した作品で、祖父から畑の世話を任された主人公がハクビシンの脅威と真っ向からぶつかり合うという内容だ。
野菜を荒らす害獣駆除のはずが…どう見てもバトル漫画に
小さい頃祖父と一緒に世話をした思い出の畑を任された主人公は、おいしい野菜を作ろうと模索しながらトマトやナス、キュウリを手塩にかけて育てていく。そんなある日、作物が何者かに食い荒らされているのを見て呆然とする主人公。その前に、武道の達人のような老人たちが現れ、畑を荒らしたのが“白鼻芯”であることを告げる。復讐を誓った主人公は、厳しい修業を経て「畑の守護神」として“白鼻芯”に立ち向かうというストーリーだ。

描かれているのは畑を荒らす害獣退治のはずなのに、スピード感や駆け引きは明らかにバトル漫画のそれ。「日本の農業が……日本の未来が懸かっているんだ」という壮大な思いの前には、見た目はかわいらしいハクビシンも、強大な魔物のように見えてくるから驚きだ。同作には7000件以上のいいねがつき、読者からは「思い出しました。実家でのハクビシンを攻略するために色々とやったことを」「屋根裏で大暴れされた経験のあるものです。感動しました」と、ハクビシンの被害を経験した人から共感のコメントも寄せられた。
同作は「守りし者 ~HAKUBISIN~」というタイトルで月刊コミックバンチに掲載され、それがデビュー作になったというとうろうさん。今回の反響や作品制作の背景を訊いた。
園芸関係のバイト中に聞いた「ハクビシン被害」を漫画化
――本作を描かれたきっかけを教えてください。
「もともと家庭菜園自体が趣味としてあって、その経験からアルバイト時代園芸関係で働いていました。その中でお客さんと話していると、主な害獣として挙がってくるのがハクビシン。いろんな被害を聞きました。そんな話をアシスタント時代に現場で笑い話にしていたら、(漫画家の)先生を含め周りに『漫画にしたら面白そう』と言われたんです。まったく漫画にしようとは思っていなかったんですが、とりあえず軽いノリで作ってみることにしました」
――害獣駆除の話が熱いバトル漫画になったんですね。こだわったポイントはありますか。
「とにかくバカな漫画にしようと思って作りました。テンポが大切なのでページ数もなるべく少なめ、と意識しました。作品のベースとしては男塾や、アニメ『ミスター味っ子』や『ジャイアントロボ』を手掛けた今川泰宏監督の作品など、作中のキャラクターたちは至って真面目だけど、傍から見るとぶっ飛んでるみたいな作品を参考にさせていただきました」

――ご自身でお気に入りのシーンはありますか。
「個人的には穴掘って逃げようとしてるシーンなんかは漫画表現全開で好きですね」
――デビュー作の再掲ということですが、今回あらたに反響を呼びました。作者としてはどう感じていらっしゃいますか。
「正直この作品自体、周りには『絶対賞は取れない』と言いつつデビュー作になったので、存在自体がギャグみたいな作品なんですよね。だから私自身、こんなに反響をいただいて驚いています。読者からも被害者報告みたいなコメントが多くて、農家や園芸に携わる人が思うことはまあ一緒なんだなと思いました(笑)。被害にあった方に少しでも笑いを届けられたなら漫画家冥利に尽きます。読んでいただいた方はありがとうございました」
農作物に関わる人にとって頭の痛い日常の被害を、突き抜けたバトル漫画に昇華した同作。なお、ハクビシンは鳥獣保護法で保護されており、現実には被害を受けても捕獲をするには許可が必要だ。ハクビシンへの強い思いは漫画で晴らしつつ、被害を受けたら適切な手続きを取ろう。
作者のとうろうさんはくらげバンチにて
『勇者に敗北した魔王様は返り咲くために魔物ギルドを作ることにしました。』
を連載中。5月8日には
単行本第3巻
も発売された。こちらも手に汗握る熱いバトル漫画になっているのでぜひチェックしてほしい。
取材協力:とうろう(@xiuFyioC0AZYEtb)