スマホの画面に「何か」が写り込んでいる…?カメラ機能を使った漫画が斬新でエモい!
恋愛や友情などをテーマにした学園ものを中心に、Twitterやウェブで漫画を配信している川田大智(@daichi_kwd)さん。2015~2018年には「まかろにスイッチ」(全2巻)と「彼女はお義父さん」(全2巻)を出版し、最近はスマホのカメラを被写体に向けている人目線で描く「スマホ主観」という斬新な切り口の漫画を配信している。今回は、川田さんに直撃し、漫画への思いやこだわり、「スマホ主観」が誕生したきっかけなどを聞いてみた。




スマホのカメラ機能で日常を切り取る
2007年に多摩美術大学を卒業後、浅草の和太鼓製造の会社で働きながらイラストや漫画を制作、2014年に漫画家として独立した川田さん。「本格的にウェブ上で漫画を配信し始めたのは、2021年の2月頃からです。商業誌での連載企画が難航していたのと、コロナ禍で社会全体のネット依存が加速したことが大きなきっかけとなりました」と話す。




ネット依存との関連性が強いスマホを題材にした「スマホ主観漫画」シリーズは、スマホのカメラ越しだからこそ成立する設定や展開がおもしろく、短編なのにオチもしっかりとしていて「このシリーズ好き」「エモい」などと話題だ。




「雑誌、単行本、スマホ、タブレット、パソコンなど、現代では作品を見るための手段がいくつもあります。それなのに漫画の描き方自体はあまり変わらないということにもともと疑問がありました。そんななかで『スマホの全画面で漫画を読む』という状況をもっと生かした作品を実験的に描いてみようとして生まれたのが『スマホ主観漫画』。評判がよくて安心しました。スマホのカメラ機能を使っている設定なので、読んで(見て)いる読者の視点が主観になるのが大きな特徴です」と川田さん。




特に筆者のお気に入りは「スマホ主観漫画3」の山ガールたちの話。山ガールたちを写そうとするその画面には、“何か”が写り込んでいるのだが、予想外のオチで驚いてしまった。川田さんは「写真といえば心霊写真だよな…という思いがあったので、それを盛り込んで漫画にしてみました。みなさん、お分かりいただけましたでしょうか…」。
被写体だけでなく、背景や持ち物など細かいところに仕掛けられた小ネタも見どころの一つなので、ぜひじっくりと読んで探してみてほしい。
ギャップや予想外の展開にほっこり
川田さんの作品には学校が舞台のものが多く、恋愛や友情物語がさまざまなシーンで繰り広げられている。「学校生活はほとんどの人が経験しているので、設定として一番共感度が高く、自分としても描いていて楽しい。こんな先生が、友達がいたらいいな、とか妄想が膨らみやすいんです。自分の学生時代が不完全燃焼だったせいかもしれません(笑)」と川田さん。


Twitterで最初にバズったという「女子3人組に呼び出されて…」は、「ほっこりした」「優しい世界」など絶賛のコメントが多数寄せられ、川田さん自身がTwitterでショート漫画を配信する上でのコツをつかむきっかけになったそう。



そのほか、川田さんのお気に入りの作品を尋ねると、「“おしとやかな巫女さん”と“荒々しい太鼓打ち”のギャップを持つキャラクターを求めて描いた『巫女装束を脱いであらわになった本当の姿…』や、行動が大胆で少々強引な“かっこいい”先生を表現した『厳しすぎる生徒指導』、生徒想いの先生を描くことに挑戦した『連続盗難事件の真相』です。こんな学校があったらいいな~という気持ちを詰め込みました」。


どの作品も幸せな展開で、「もし学生時代に戻れるなら…」と考えてしまう。
「あと、ギャルとメガネっ子の組み合わせを描いた『ギャルの方々に呼び出されたメガネっ子の運命…』は、読者から『続きが見たい』というお声をたくさんいただいたので、感情などのイメージをもっと膨らませて、今後の長期連載作品に生かしていきたいですね」


また、漫画を描くときに気を付けていることについては、「読後感のよさや、読みやすいコマ割り、親しみやすい絵柄などを、自分の作品の強みとして伝わるようにすること。またルールやこだわりに囚われ過ぎないようにとも、意識しています」。

「『読んでよかった』と思っていただけるような漫画をたくさん提供できるように、今後も描き続けます!Twitterのフォローなども大歓迎です」と意気込みを語ってくれた。
漫画を読むツールとして、スマホやタブレットが主流となりつつある今、川田さんの柔軟な感性で生み出される新感覚の作品は、新しい漫画の楽しみ方を牽引してくれそうだ。
取材・文=重藤歩美(関西ウォーカー編集部)