『人生が一度めちゃめちゃになったアルコール依存症OLの話』著者のかどなしまるさんに聞いた「依存症に陥った背景にあるもの」(1)
社会人になったばかりの新人OLがひょんなきっかけからアルコール依存症になってしまうという衝撃の実体験をつづったコミックエッセイ『人生が一度めちゃめちゃになったアルコール依存症OLの話』。ブログが話題になり、ウォーカープラスでの連載も反響を呼んだ本作が10月29日に書籍として発売される。今回、著者のかどなしまるさん(「
お酒がないと××できません
」/
@marukadonashi
)に当時の心境を振り返っていただきました。

ーー仕事に行く前に飲酒していたことが、アルコール依存症になるきっかけだったんですね。なぜお酒を飲むようになってしまったのでしょうか?
当時の職場は人間関係がとても悪く、毎日誰かに怒られないかビクビクしながら働いていました。気付けば出社恐怖症のようになっていて、朝からお酒を飲まないと会社に行けなくなっていたんです。お酒を飲んでから会社に行くと、心がとても楽になって、苦手な先輩にも気軽に挨拶できたり、業務も驚くほどスムーズにこなせました。本来なら「しらふの自分」がやるべきことを「お酒を飲んだ自分」がスキップしてくれた感覚でした。お酒を飲むことで、嫌なことをスキップできるならそんなに楽なことはない!と、いつしか出社前にお酒を飲むことが当たり前になっていきました。

ーーどんなに飲んでいても「いつでもやめられる」と思っていたんですよね?
そうですね。そんなに強いお酒でもないし、自分ではいつでもやめられる程度の飲み方で、飲まない選択もできるって思っていました。その場限りというか、「この瞬間だけちょっとお酒の力を借りよう」という気持ちです。だけど飲まないと落ち着かなくて、その気持ちを消すために結局また飲んでしまう。その繰り返しでした。
ーー普段のかどなしまるさんはどんな性格なのでしょうか?
普段の私は生真面目で、車が全く通らないような信号でも、青になるまで延々と待ち続けるようなタイプです。でもとにかく自信がなくて、赤で渡っている人を見ると「私も渡ったほうがいいのかな?待ってる私が間違っているのかも」と、恥ずかしくなってしまうんです。友達と会った後も「あんなこと言わなきゃよかった」と後悔したり、自分がいることで不快な気持ちになってる人がいるんじゃないかと不安になってしまったり。
そんな私でも、お酒に酔うと心の感度がぐっと下がって、細かいことを気にせずにおおらかになれるんです。スルー力が上がって良い意味で鈍感になるんですよ。

ーーかどなしまるさんが子供の頃からずっと抱えてきた「過緊張」という性質も、アルコール依存症になったきっかけのひとつだったんですね。
外出中は常に緊張している状態で、たとえば駅のトイレでひとりだけルールを守らないで変な場所に並んでるんじゃないかと不安になるので、混んでいるトイレには入れないんですよ。スーパーでレジに並ぶのも「よし…いくぞ!」って一旦呼吸を整えています。とにかく緊張しなくてもいいような場面ですごく緊張してしまうんですね。お酒に手を出したのも、いろんなことを気にせずに、もっとリラックスして外を歩きたいなっていう気持ちがあったんだと思います。
取材・文=宇都宮薫