「ヤムチャしやがって…」からの裏切り?“モブキャラ”を主人公にする逆転の発想で大人気、SNS漫画「ゴリせん」がヒットしたワケ

バトル漫画における悪役の登場シーンは、残虐性や強さ、特殊能力をお披露目する重要な場面となっている。その際、悪役に威勢のいいセリフを吐いておきながら、アッサリとやられるモブキャラの顛末が定番化。漫画ファンは、某国民的マンガの名シーンをなぞらえて「ヤムチャしやがって…」とツッコミを入れるのが様式美となっている。
そんな、死亡フラグを立てまくる“モブキャラ”にスポット当てたゴリラ漫画…もとい、
体育教師のゴリせん(※ゴリラ先生)」が主人公の『〇〇で死ぬタイプの体育教師』シリーズ
が話題となっている。
実際、『ゴリせ』』シリーズを描いている漫画家・酒井大輔(@sakai0129)さんのフォロワーは10万人を突破(2022年1月4日現在)。その勢いは衰え知らずで、
ヤンマガwebでの『ゴリせん』連載をはじめると2021年9月6日に第1巻を発売
し、たちまち重版に。そして2022年1月20日には待望の2巻発売も控えている。


そこで今回、酒井さんに“モブキャラとして真っ先にヤラれがちな体育教師”を主人公にした理由や、SNSに漫画を投稿することのメリットなど、ゴリせんの「原点」について振り返ってもらった。
伏線や死亡フラグを逆手にとる「3ページ目まではギャグを入れない」


2021年6月にスタートした「真っ先に死ぬタイプの体育教師」シリーズ。SNSでの反響がどうだったか聞いてみると、「正直1000いいね!いけば万々歳と思っていたので、5万いいね!を超えたときは驚きました」と述懐。それ以上に驚いたのがリプライの数で、最初はネタがウケたのかと思ったのに、実際にリプを見てみるとゴリ先に関する反応がほとんどだったそう。「フォロワーさんたちがゴリ先のキャラの掘り下げをしていて驚いたのと同時にうれしかったです」と当時を振り返った。
いわゆる「伏線」や「死亡フラグ」を逆手にとるという“閃き”について聞くと、「過去にも、恋愛漫画に登場するモブキャラを主人公にした漫画を描いていたので、多分モブキャラとか脇役に魅力を感じてしまうのかと思います」とコメント。死亡フラグに関しても「自分は絶対的な強者」と思っている悪役が狼狽する姿を面白いと感じるようで、「恋愛漫画で言ったらツンツンしている子がデレる瞬間みたいな感じです!」と笑顔で語った。
本作を読むと、「ゴリせん死んだ~!」「ゴリせん逃げて~!」からの大逆転にカタルシスを感じるわけだが、漫画を描く際に意識しているポイントはあるのだろうか。
「全体を通すとギャグ漫画ですが、不気味な雰囲気が大事なので、3ページ目まではギャグにならないように気をつけています」
ゴリせんのキャラ設定が重要?「蹴ったり殴ったりさせない」
死亡フラグをことごとく破壊していくゴリせん。読み進めるごとにゴリせんへの“愛着”がわいてくるから不思議…。キャラづくりのポイントについて聞くと「ゴリ先の言動にルールを設けて気をつけています」と、話づくりの核心を披露。
「ルールは何個かありますが、1番大事にしているのは、ゴリせんが“蹴ったり叩いたりしない”です。ただ、うっかり敵を潰しちゃうこともありましたが…(苦笑)」
SNS漫画から商業誌連載へのステップアップ。そして、単行本の売れ行きも好調と、SNS漫画で夢を叶え続ける酒井さんに、SNSで作品を発信することのメリットを聞いた。
「一番は読者の反応が早いことです。また、プロを目指す方であれば就職活動の一環にもなると思います。ゴリ先をSNSで投稿するようになってからは、さまざまな反響やお声かけをいただきました。今後も、より多くの方に楽しんでもらえる方向に進めればと思います!」
画像提供:酒井大輔(@sakai0129)ゴリせん1巻発売中!