【漫画】「息子が学校に行けなくなった理由」は?母親の体験を描いた漫画に共感の声
息子が学校に行けなくなった、連れて行こうとすると泣き叫ぶ…。そんな体験を描いた漫画「息子が学校に行けなくなった理由」が共感を呼んでいる。この漫画の作者は、花森はなさん(@hanamori_h)。当時、小学生だった息子さんが学校に行きづらくなった理由と治療の過程、周囲とのやりとりをかわいいタッチでわかりやすく描いている。
自分の経験を役立てたくて描き始めた漫画
花森さんがこの漫画を描き始めたのは、同じような境遇の母親の参考になればと考えたことがきっかけだという。「子供が不登校になり始めた時、そういう経験に関するTwitterのつぶやきなどはあったけど、それを描いたお母さんのための漫画が見当たらなかったんです。自分の経験が役に立てばいいなと思っていました」と話す。



作品はTwitterやInstagramに、2週間に1度のペースを目標に1話ずつアップしている。当事者の息子さんは、繊細で人のことを敏感に感じとってしまうことがあるという。「それで同級生が先生に怒られている姿を見て学校に行けなくなったけれど、優しくて物作りが好きな、ユニークな子です」と教えてくれた。
小学3年生で行き渋りが始まった息子さん。花森さんが特に印象に残っているのは、初めて病院に行き、薬を飲み始めたころだという。「お薬を処方されて息子が寝っぱなしになったころは、暗闇で出口が見えないような気持ちでした。ずっと寝ている姿を見ていて、何もわからなくて何もできなくて辛かったです」と振り返る。


作中では6話あたりで、息子さんは完全に学校に行けなくなってしまう。「学校には行くものっていう固定観念があると思うし私自身もそうだったんですが、無理やり行かせるような状態ではありませんでした。だから、行けたら行ってほしいけど、それよりも、元気になってほしいというのが一番でした。以前は、毎日、学校から帰ってきて友達と遊んでいたような子だったんですが、学校に行かなくなってからの息子は、表情から別人のよう。薬の影響もあるんですが、常に眠たいようにとろんとしていて、やる気がない、しんどそうな顔なんです」


学校が理由で不登校になった子供はたくさんいることに気付いた
漫画を描くようになって、気付いたこともあるという。「SNSに公開することで、私の子供も不登校です、子供が行き渋りをしています、というDMやコメントを思っていた以上にすごくたくさんいただきました。うちと同じように学校や先生が理由だったというのが多くて、自分自身が普通に学校に行っていたころは見えなかった部分だったので、衝撃でした」
公開中の漫画では現在、小学4年生の1学期が終わる時期にさしかかっている。「2学期に学校とすごくもめました。学校とトラブルになることって結構あるけれど、表に出てくることがあまりないと思うんです。学校側はアップデートしているところもあるけれど、怒鳴る先生がいたりと、昭和のままの部分もあります。息子の付き添いで、学校という場所を改めて一人の大人として俯瞰的に見ることができたので、細かく伝えられればと思っています」
学校には行きたければ行けばいい、元気に過ごしてほしい
息子さんが学校に行けなくなったことで、親子関係にも変化があったという。「学校に行きたがらなくなった小学3年生のころって、男の子がお母さんから離れていく時期だと思うんです。実際、息子も私と手をつないでいたのを友達が来たら離したりしていました。今は手をつないでいないと息子がパニックを起こしたり不安になるので、外出時はずっとつないでいます。話す時間も増えて、深い話もたくさんしました。本来なら反抗期だった時期に、一歩踏み込んだ関係になれたと思います」


また、学校外での息子さんの人間関係も良好なよう。「ネットでのお友達とずっとゲームはしているし、小学校のお友達も遊びに来たりしてくれています」
作中では小学4年生の息子さんは、実際には支援学校の中学1年生。21年の11月に初めて登校したが、担任の先生が継続的に家に来てくれるほか、放課後に数回学校に遊びに行ったり、オンラインで先生と会話したりしているという。「『息子が学校に行けなくなった理由』は、小学校卒業までを区切りとして描く予定です。同じような子供を持つ親御さんにとっても重要なことだと思うので、卒業の時期はきっちり描きたいと思っています。息子には、大体の内容をチェックしてもらっています。息子自身も、同じような子がいたら参考にしてもらいたいという気持ちがあるそうです」
中1になってから、コミュニケーションの困難などが特徴の自閉スペクトラム症の診断が下りた。「そうではないかとずっと思っていたのですが、漫画でも描いた2つの病院では否定されました。3つ目の病院の先生から診断を聞いて、やっと、と思いました。精神障害者保健福祉手帳など、とれるものは利用していきたいと思っています。行政の支援も受けられるものが変わるので、それで息子が楽になるんだったら」

また、「うちは明るい不登校なので、どうせ家にいるなら子供も親も負担がなく、機嫌よく過ごせるようにしたいと思っています。息子はネットやゲームをしていることが多いのですが、自分でプログラミングし作ったゲームを家族で遊んだり、電子レンジでできるご飯を自分で作ったりしています。学校に行けなくても楽しく過ごしているよという内容のものを、『息子が学校に行けなくなった理由』の合間に描いていきたいです」と別作品の構想も。
息子さんの今後については、「本人が元気だったらなんでもいいです。学校に行きたいんだったら行ったらいいし。50歳を過ぎてから資格をとって保育士になった友人もいるし、勉強に年齢はないと思います。その時その時でいいと思えれば。ご飯をおいしく食べてよく眠れて、悪いことをしなかったらいいと思っています」と話してくれた。

取材・文=上田芽依(エフィール)