【漫画】かつての漫画家仲間の再会、わだかまりの果てに知る本心に涙――。『仲間のシカク』制作秘話

仲間の一人の死をきっかけに再会したかつての漫画家仲間4人。10代の頃、共に同じ夢を追いかけてきた彼らの間にはいつしか漫画家としての格差が生まれていた。告別式の夜、そんな力関係が見え隠れするやり取りに嫌気がさした男の前に、死んだはずのかつての仲間、川崎が現れる――。

10代の頃、同じ漫画家の夢を追った「仲間」の1人が死んだ。通夜の後、明かされる彼らの本心とはもりた毬太(@moritamarita)

コンサルティングファームの株式会社クニエが主催するWEB漫画賞「クニエ漫画グランプリ2021」でグランプリを受賞した『仲間のシカク』は、「仲間」をテーマに漫画家仲間5人の関係性やわだかまり、そしてそれぞれの本心を描いた作品だ。

同賞では「貢献」「熱意」「誠意」「志」「共感」「仲間」の6つの中からテーマを選び応募、各テーマの中から一次審査を突破した6人が、全6話の作品を制作。グランプリ特設サイト上で毎月連載し審査するという方式で、連載中は編集者のたられば(@tarareba722)さんとシャープ株式会社公式Twitterアカウント(@SHARP_JP)担当者による各話の講評がつくなど、数々の特徴的な試みも行われた。

ウォーカープラスでは今回、6作品の中から見事グランプリに輝いた作者のもりた毬太( @moritamarita )さんにインタビューし、受賞の思いやグランプリ作品の制作秘話などを聞いた。

【漫画】『仲間のシカク』を読むもりた毬太(@moritamarita)


「キラキラ」を装わず、自分の持ち味で勝負

――このたびは「クニエ漫画グランプリ2021」グランプリ受賞おめでとうございます。あらためてお気持ちを聞かせてください。

「ありがとうございます。最初は驚きが強かったんですが、時間とともに『工夫や努力が報われたのかな、嬉しいな』って気持ちになってきてます」

――もりたさんは他の漫画賞に応募する中で、この賞を知ったとうかがいました。実際に応募を決めたきっかけは?

「事前に説明会的なトークセッションがあったんですが、そこで感じた印象が『出オチでバズればオッケー』じゃなくて、ちゃんとした読み応えを求めてるように思えたんです。バズを狙ったものは自分にはしんどいな、と思っていたところだったので、そっちの方向ならもしかしたらいけるかな、と。また、佐渡島庸平さん(株式会社コルク 代表取締役社長CEO)、たらればさん、シャープさんといった、普段からTwitterでよく見ていた審査員の方々に読んでもらえて、講評ももらえるかもしれないという点も大きかったですね」

――授賞式でご自身の作風を「バズる作品に比べ、キラキラしてない」とおっしゃられていたのが印象的でした。クニエ漫画グランプリで、あえて「キラキラした作品」に挑戦することも考えられましたか?

「選択肢としてまったく考えなかった、ということはないですね。ただ、若々しい勢いとか真っ直ぐな情熱みたいなものを“よそおう”ことは出来ても、それで本当にキラキラしている作品に勝てる気はしなかったので。物の見方がひねくれているのは『本当』なので、そっちで勝負することを選んだ感じです」

『仲間のシカク』第2話(8/8)もりた毬太(@moritamarita)


ノミネートした読み切りを全6話の連載作品に。変化したポイントは?

――『仲間のシカク』は、一次審査の読み切り作品から連載に移る際「話の軸を移した」とのことでしたが、話の構成などは連載準備でどう変わっていったのでしょうか?

「ノミネートからの準備期間は割とあったので、結末も含めて6話分の構成に関してはきっちり決めてから連載を開始しました。話の軸うんぬんって話は、一次選考時の読み切りも連載もストーリーの大枠としては変えてないつもりで、見せ方というか語り方的に軸足を置く位置をちょっと変えたってことですね。読み切り時よりも連載時の方がキャラクターの感情を描くことに重きを置いています」

――全6話の中で、5人の“仲間”の1人・平塚の視点から見える関係性と、実はお互いにどう思っていたのかが明らかになるまでの演出が綺麗でした。

「連載では感情の描写をしっかりやろうと決めたので、キャラの表情や演出の間なんかには気を使いました。気を抜くとあっさりやってしまいがちなところがあるので、なるべく感情の解像度をあげるというか」

――このほか、工夫した点や苦労した点はありましたか?

「工夫としては、せっかくWEBでの連載なのでカラーを活かした仕掛けをしたいと思って。キャラクターそれぞれの名前はJリーグのチームにちなんだものですが、コマ枠の外にチームカラーと呼応した色を配したり、あとは縦読みでも横読みでも違和感があまりないように、コマの配置やタチキリに気を配ったりしました。そういう、誰も気づかないかも知れないところに労力をかけるというのが、苦労と言えば苦労だったかもしれないです。ただ、結果報われたので、そこはこだわってよかったんだろうな、と思っています」

連載審査で感じた「ライブ感」

『仲間のシカク』第3話(7/8)もりた毬太(@moritamarita)

――連載作品が審査されるという形式のグランプリでした。他の候補作を意識された部分はありましたか?

「公式のハッシュタグ『#クニエ漫画グランプリ2021』とか見ると、感想や人気のあるなしが目に入ってくるので、どうしたって意識はしちゃいましたね。それに作品が影響されないようには、気を付けてました」

――もりた先生はこれまでにも連載の経験がありますが、「連載での漫画賞」という取り組みはいかがでしたか?

「紙の雑誌とWEBサイト、両方で連載経験あるんですが、今回のはまたどちらとも違ってて面白かったですね。ライブ感があるというか、読者の方にも一緒に盛り上げていただけた感じです」

――今後の創作活動についての思いを教えてください。

「なんとかこの先も創作活動を続けて行きたい、に尽きますね。商業連載でも副業しながらSNSで公開でも、形はなんであれ。目標は、今よりももっともっとたくさんの人に読んでもらえて応援してもらえるような漫画家になることかな。なかなか難しいですが、頑張ります!」

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