【漫画】音大出身漫画家が描く、アラサーピアニストの“もしも”に「続きが気になる」と注目集まる
スポーツなどの分野では持って生まれた体の大きさがアドバンテージになるのはままあること。だが、音楽でも「大きさ」が求められるケースがあるという。より離れた鍵に早く指が届き、力強い演奏が可能となるピアニストの世界だ。手が小さく小柄なピアニストが、もし自分より大きい男性の身体を手に入れたら――。そんな“もしも”を描いた漫画がTwitter上で反響を呼んでいる。

努力では手に入らない「才能」。ピアニストの再起を描いた作品に反響
Twitter上で1.8万件を超えるいいねを集めるのは、漫画家の輪立さく(
@39wdc
)さんが自身のTwitterに投稿した「ピアニストになれなかったアラサー女の話」。

主人公は、32歳の女性ピアニスト「茅野結希(かやのゆき)」。彼女が、権威ある国際コンクールで一次審査落ちを迎える場面から物語ははじまる。コンサートピアニストを目指す人間にとって、その実力を証明する華々しい実績は何よりも求められるもの。だが、国際コンクールの多くは30代前後を上限に年齢制限を設けており、結希にとっては制限のないそのコンクールを勝ち取ることが、ピアニストとして生き残るための残り少ないチャンスだった。

絶え間ない練習を重ねてきた結希だったが、彼女にはどれだけ努力しても得られないものがあった。それは「体の大きさ」。背が低く手も小さい彼女は、体格という点で他のピアニストに見劣りしていたのだ。「もっと大きい身体なら…」と半ば自暴自棄になっていた結希は、不注意からトラックの前に飛び出してしまう。
死を覚悟した結希だったが、病室で目を覚まし、自分がまだ生きていることに気付く。だが、手を見るとそこには自分とは似ても似つかない長い指と大きな掌。なんと、彼女の意識は名前も知らない少年の身体に宿っていたのだ。

混乱する結希のもとに、少年の母親が現れる。コンサートでピアノを弾けと命じる母親の言葉に「私はまだピアノが弾ける」と思った結希は、誰かも分からぬ少年の姿を借りて、もう一度ピアノに挑戦していく――、というストーリー。
本作は輪立さくさんが「サイコミ」上で連載中の作品『リプライズ 2周目のピアニスト』の第1話。Twitterユーザーからは「続きが気になる」「主人公がピアノを弾く姿、もっともっと見たい」とコメントが寄せられた。
作者の輪立さんは音楽大学出身で、プロを目指す音楽家の卵たちと同じ環境を過ごした経歴の持ち主。劇中の音楽知識や描写にもその経験が反映されている。
本作のアイデアも、学生当時のエピソードに一端があるという輪立さん。「留学先でコンクールを受けたとき、小柄な女性参加者が『コンクールで自分より手が小さい人に出会ったことがない』と呟いていたのが印象に残っていました。現在の担当編集に出会い、いろいろとアイデアをいただいて晴れて連載の形になりました」と話す。
また、連載に多くの反響が集まったことについては「たくさんの方に読んでいただいて嬉しいです!ピアノ学習者にはもちろん、クラシック音楽に明るくない方にも楽しんでいただける漫画だと思います。ぜひ読んでください!」とコメントを寄せた。
取材協力:輪立 リプライズ連載中(@39wdc)