“おじさんと少女の逃避行”は、やがて謎と恐怖渦巻く展開に…長編サスペンスホラー漫画に「終始鳥肌」の声
新型コロナウイルスの影響や、全国的な猛烈な暑さで、なかなかおでかけもしづらかった今年の夏。ウォーカープラスでは、夏の風物詩や涼を感じられる怪談など、夏に読みたい漫画を特集。今回は、「すごい展開」「終始鳥肌」と二転三転するストーリーが反響を呼んだてぃーろんたろん(
@tearontaron
)さんのWEB漫画「この子知りませんか?」を紹介したい。
少女との逃避行は、やがて恐怖の物語に…。累計20万DLのホラー長編
てぃーろんたろんさんが昨年Twitterやpixivなどで投稿した同作。自分で何かを決めたことがない人生を過ごしてきた主人公の「中山良平」が、人生を取り戻すために上司を殴りつけ、職場を飛び出すところから物語は始まる。

数カ月に渡る準備の末、この日のために購入したマイカーで、やりたかったことをやるための旅に出発した良平。だが、その車には思わぬ同乗者がいた。毎日のように職場の裏口に遊びに来ていた小学生の女の子「木口千秋」が忍び込んでいたのだ。
すぐに降ろそうとするものの、普段はへらへらと小生意気な態度を見せていた千秋が「家だけはだめ…」と涙ながらの懇願をしてきたことにうろたえる良平。そして以前、顔に傷や血を浮かべた千秋が夜中に一人たたずんでいたことを思い出し、彼女も何らかの事情と、その胸中に暗いものを抱えていることに気付く。

「おじさんと一緒に遠くへ行きたい…!」と願う千秋が真剣であることを悟り、彼女を乗せたままアクセルを踏み込む良平。その荷台には太いロープ。思わぬ道連れを加え、良平は「最後の旅」に出発するのだった。
作画はもちろん、伏線もパワーアップのリメイク連載
お互いに事情を抱えた、おじさんと少女との逃避行。だが、回を重ねるにつれて良平が「一人でぶつぶつ喋っていた」という証言や、普段と違う威圧感のある笑みを浮かべる千秋など、物語は徐々にその不穏さを増していく。

「おじさんと家出少女とのエスケープ」のようにはじまり、やがて怪奇現象すら取り込んだサスペンスホラーと呼ぶべき展開に突き進んでいくストーリーに、読者からは予想を裏切る物語と伏線の妙に驚く声が多く寄せられた作品。Amazon Kindleでは電子書籍版も無料公開され、ダウンロード数は20万件を超えた話題作だ。2022年には日本文芸社のマンガアプリ「
マンガTOP
」にて、作者によるリメイク版の連載もスタート。作画は全編にわたりブラッシュアップされている。
作者のてぃーろんたろんさんに話を聞くと、本作はもともと商業誌での作品企画の没ネタからスタート。「没になった後に、アシスタントさんと雑談していた時に形になった感じです。初期の頃は千秋の設定もまったくなく、後半の展開は描きながら考え伏線を繋ぎ合わせていきました」と話す。

「マンガTOP」で本作のリメイク連載をするとともに、日本文芸社の漫画雑誌「
コミックヘヴン
」上で『学校でいちばん地味な2人が付き合う話』も連載中(コミックス第1巻は2022年10月下旬刊行予定)のてぃーろんたろんさん。『この子知りませんか?』の商業化の際は、SNSや無料の電子書籍版で発表した際の読者の反響が後押しになったという。
「実は『この子知りませんか?』より前に、日本文芸社さんの方で『学校でいちばん地味な2人が付き合う話』を連載しないかとお声がけをいただいていたんです。その打ち合わせの中で、『この子知りませんか?』もせっかく反響があるのだから掲載しないかという流れで連載に至ったので、読者の人たちの声が届いたんだなぁ、と感じました」

商業連載版でのリメイクでは、「千秋の表情や良平の心情みたいなものをより細かく描きたい」という思いで作画に力を入れていると話す一方、「さらに、個人連載版の先の展開に広げるための大きな伏線をリメイク版では入れています」と、物語の面でもさらなる仕掛けを盛り込んでいるという。
リメイク版では、個人連載時よりも先の2人の物語を描きたいというてぃーろんたろんさん。「連載版はやはり商業作品ですので、人気次第では途中で終わり……なんてこともあるみたいです。読者の皆さんには、是非ともリメイク版も読んで応援していただければと思います!」と今後への思いを語っている。
取材協力:てぃーろんたろん(@tearontaron)
(C)Tearontaron/日本文芸社