子供は「ママがいい!」とパパを全否定!?「それ虐待だよ!」と妻は夫を怒鳴る!!キャリアを応援するはずが追い詰められた「男の育児うつ」を描く
「産後うつ」は女性だけではない。実は、育休を取得する男性も同じように育児うつを経験している。これは、今まで女性が抱えていた悩みのひとつ。今回そんな育児によるうつを描いた『こころのナース夜野さん』の中から「男の育児うつ」を紹介する。

水谷月刊!スピリッツで連載していた『こころのナース夜野さん』が、ついに完結!第6巻が発売となった。本作は、精神科に勤めるナース夜野さんが心に病を抱えるさまざまな患者と向き合っていく話題作。答えのない精神科医療の本質をつく、奥深い話が毎話綴られている。
今回紹介する「男の育児うつ」は、妻のキャリアをバックアップする形で夫が育児休暇制度を取得した話。パパが「育児」と「仕事」の両立で頑張る姿を描いたものだ。仕事と育児の両立の大変さ、パートナーとの関係性、キャリアへの不安などさまざまな問題が複雑に絡み合ったリアルな夫婦を描いた姿に多くの共感の声が届いている。
「イクメンパパ」奮闘!!地域でのパパの居場所づくりは難しい?

出版社に勤める妻。2人目は代わりに夫の守が育児を担当すると話し合い、一年の育児休暇を取得。傍から見ると、今どきのイクメンパパ。育児休暇を取得できる会社の体制や夫のイクメンっぷりもうらやましく見える。


しかし、実際にパパが育児をスタートしてみると。地域の児童館では、ママ友のグループができており、周囲のママたちから好奇の目にさらされ、どうにも居場所を作れない守。公園でも児童館でも、平日の昼間からパパが子供を連れて行くと珍しげな視線を送ってくる。世間の声では「イクメンパパ」を望んでいるのに、その温度差に愕然とする。

子供を散歩させたいのにゆっくりできる場所がなく、ひたすらベビーカーを押して自分が散歩する。さらに、育児休暇中に連絡が来たクライアントとのやり取り。一年という長期休暇を取るため、会社の人には言いにくかった仕事も抱えている。

子供が寝ている間にパパッとメールのやり取り程度はできると思っていた守。しかし、いつぐずり出すかわからない赤ちゃんを相手に悪戦苦闘の日々が続いた。抱っこによる肩こり、心労も重なる。1人目の育児を見ていた時は自分でもできると思ったはずが、実際は育児を舐めてたと反省するのだった。

ようやく育休が開けて職場復帰。自分のやりたいようにコントロールできる仕事が楽しくてたまらない守。しかし、一年間職場を離れていた反動は大きく、守は会社の出世コースから外れてしまっていた。

そして、時折かかってくる保育園からのお迎え電話。子供が発熱したから迎えに来て欲しいという。上司に早退を希望すると「またか」と叱責され、妻には土日に仕事をしたいと本音を言えず、不満が少しずつ積み重なっていった。表面張力でいっぱいになった守の心。水が溢れ落ちたのは、長男の癇癪だった。

絵本を買って欲しいとごねる息子。こんなに頑張ってお世話をしているのに、結局「ママがいい!ママがいい!」と店内で叫ばれ、悲しみと怒りが同時に湧いてきた。そして、とうとう「うるせぇ!」と怒鳴ってしまう。
編集長になったママの方が大変だから――、育休取れるなんていい会社ね――などと世間では言われるが、守は会社と育児の壁に挟まれて身動きが取れなくなってしまった。自分でも気づかないうちに追い詰められていたことに気づき、2人は夜野さんの病院を訪れる。
男性の育児によるうつの割合は、11人に1人。今回の守のように不眠や頭痛は産後うつの初期症状だという。自分の感情がコントロールできないほどイライラしたり、ヒステリックになってしまう時は、パートナーと話し合うことも大切だ。現代夫婦を描いた作品に「わかりすぎる」「確かにパパさんだと気を遣う」「子供に全否定されると辛い」などのコメントが届いている。
画像提供:(C)水谷緑/小学館