【望まない妊娠】6人目に絶望する母親と堕ろせという父親「せめて俺たちだけでも」隣の“よしみ“に涙する人続出

望まない妊娠だった。親の祝福もなく、誰からも喜ばれない出産。それは生まれてくる子供のせいではない。少なくともこの世で誰か1人でも、生まれてくることを喜んでくれる人がいたっていいじゃないか――お節介という名の「親切」に救われる母親を描いた柏木大樹(@kasiwagidaiki)さんの『隣のよしみ』に「涙が止まらない!」と反響が届いている。
突然、隣人が6人目の出産祝いを持って現れたら?


突然、出産祝いを持って現れた隣に住む宮田さん。今どき、隣の住人に出産祝いなんてどういう心境だろうか?「宗教かなんかっすか?」と、懐疑心たっぷりの母親。「そ〜んなんじゃねえよ、えーと...6人目だっけ?」と宮田さんは言う。自分が懐妊していることを知っていて「なんで知って…...」と驚く母親を前に、「おめでとう」と宮田さんは笑っていた。

さらに翌日、「昨日は疲れてるようだったから、子供たちは妻と一緒に一日預かろう」「あんたはお腹の子とゆっくりしてなさい」と言うのだ。母親はあまりの優しさに、素直に受け入れることができない。なぜ、宮田さんはこんなに親切にしてくれるのだろう。

しかし、本音はありがたい申し出だった。母親は、5人の子供を抱えていっぱいいっぱいだったのだ。言葉に甘えて子供を一日預かってもらうことにした。横になっていると、昼になって長女がご飯を届けてくれた。

宮田さんが隣に住む母親に親切なのには理由があった。それは、夜中の夫婦喧嘩。「6人目なんか妊娠したくなかった!」と言う母親に対して、「なんで堕ろさなかったんだ!」という父親の言い争う声を聞いたからだった。お金を飲み代に使い果たしてしまうような旦那のもとで、6人目を堕ろすことができなかった母親の本音は――もう産みたくない。

それを聞いてしまった宮田さんは「どんな家に産まれるにせよ6人目なのはお腹の子のせいじゃねえからな...俺達だけでも気にかけてやろうじゃねえか」と奥さんと話し合い、子供のためにできることをサポートしてくれたのだった。

その後、母親は身重の体で旦那と離婚。母1人で子供5人を育てることは容易ではない。母親は宮田さんに「これからも頼らせてください」と頭を下げた。そして、宮田さん夫婦とともに6人目の出産を待ち望んだのだが――。
『赤毛のアン』に出てくるミス・コーネリアをベースに作った本作

商業漫画を経て、「自分の好きな好きな作品を描き続けたい」と毎月2本
短編漫画
を描く漫画家の柏木大樹(@kasiwagidaiki)さん。切ない話やコミカルな話、背筋がゾクリとする話など幅広いジャンルを描く。

本作「隣のよしみ」は、L・Mモンゴメリの小説『赤毛のアン』シリーズ6作目の「アンの夢の家」に登場するミス・コーネリアがベースになっている。望まれてもいない8人目の子供に服を仕立て、まるで望まれていたかように振る舞う親切な女性。このミス・コーネリアが、隣に住む宮田夫妻なのだと柏木さんは語ってくれた。
核家族化が進み、隣近所の顔すら知らない昨今。隣だからこそ頼って欲しいという宮田夫妻の温かさに触れ、産みたくないと思っていた母親も命の大切さを再確認することができるようになる。その思いは長女にまで受け継がれ、宮田さんとの隣のよしみはずいぶん長く続いた。
画像提供:柏木大樹(@kasiwagidaiki)