母親に捨てられた少年…家を飛び出してホームレスのおじさんと生活を始める!?居所不明児童の行く末とは?【作者に聞いた】

学校や地域からいなくなる、行方がわからなくなる子供を「居所不明児童」という。彼らはさまざまな事情で戸籍がなかったり、学校に行けない、住む場所がないなどの事情を抱えている。母親に捨てられ行き場を失った少年がホームレスのおじさんと生活する鈴木真澄(@ma_suzuki_mnyt)さんの作品『空中くらげ』を紹介するとともに著者に話を伺った。


母親は住む場所や仕事を探しに少年を叔母に預けて行ってしまう(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

奔放な母親に振り回され、湊はいつも住む場所を転々としていた。母親が男と別れると、また次の住む場所を探さなくてはいけない。そのせいで湊は小学校もろくに行けず、周囲に頼れる大人も友達もいない。「次こそは」と安定した生活を始めたい母親は、息子を叔母のところに預けた。期間は1週間。

空中くらげ(15)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

空中くらげ(18)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

叔母は仕方なく預かっただけ。鍵とお金を置いて湊を構うことはない。ヒステリックな叔母の態度に湊はうまく馴染めず、日中は公園をフラフラとさまよった。そこで出会ったのが仕事を失い、公園で生活するホームレスのおじさんだった。

空中くらげ(19)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

本作を描くきっかけを鈴木さんに伺ったところ「居所不明児童という言葉を知ったのが制作のきっかけでした。この日本で所在地の分からない、知られていない子供がたくさんいるということに当時衝撃を受けました」と語る。

空中くらげ(27)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

「テレビのニュースの特集でした。親が住民票を移さずに転居した場合など、住所地に居住実態がなくなると、官公庁も子供の行方が分からなくなるとのことです」こうして親の都合で振り回されて生活が安定しない子供を救える手立てはないのだろうか。

空中くらげ(31)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

空中くらげ(41)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

母親の迎えを心待ちにしていた湊。しかし、約束の1週間を過ぎても母親の迎えはなく、湊は叔母の家を飛び出し、唯一の知り合いであるホームレスのおじさんの元へ向かった。行き場を失った湊は、河川敷へ移動するおじさんの荷台にひっそり乗り込む。

空中くらげ(46)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

お互いに住むところがない同士で言い争いを始めるが、通りがかりの通行人に「誘拐なんですか」と疑われ、居所不明児童とホームレスの奇妙な共同生活が始まった。

空中くらげ(50)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

一旦、社会生活の枠から外れてしまうと元に戻るのはかなり大変なことだ。「そうですね。彼の場合はおじさんとの暮らしを経て自分の望みを自覚し、勇気を出して母に自分の気持ちを伝え、その結果環境が変わっていくという形の希望の物語にしました」

「ただ、一旦社会生活から外れてしまうと元に戻るのは大変だというのはその通りで、現実としては同じように立て直せるケースばかりではないとも思います。親子にしろ、おじさんにしろ、ラストで割愛した部分にそれぞれの踏ん張りがあるのだと思っています」

空中くらげ(52)(C)鈴木真澄/講談社good!アフタヌーン

おじさんはリスクを背負いつつも湊とともに1カ月半をともに過ごす。しかし、ホームレスのおじさんが少年を誘拐したと大きな事件となり、2人は別々の人生を歩むことなるーー。

本作は2016年講談社のgood!アフタヌーンに掲載された。いびつな形でも湊の心はあの時、救われたという社会問題をテーマにした心温まる物語だ。Twitterに配信後も「何度も読み返したくなる」という読者からのコメントが集まっている。

取材協力:鈴木真澄(@ma_suzuki_mnyt)

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