人生疲れたら「タヌキにならねーか?」とスカウトされた!?仕事に疲れた、居場所がない人たちが笑顔を取り戻すまで【作者に聞く】
ゴールデンウィークは、おうちでゆっくりしたいという人におすすめ!ウォーカープラスで人気のタイトルをご紹介しよう。
山の住人を増やしたいタヌキのこがね丸は、人間たちをスカウトしに街へ繰り出す。仕事に疲れたOL、居場所がない中年男性、親との関係に悩むいじめっ子など、さまざまな問題を抱えた人々が、ふと「もう人生終わりにしたいな…」と思った瞬間、こがね丸が現れ、「人間やめるなら、タヌキにならねーか?」と、声をかける。そんなタヌキが主人公の奈川トモ(@nagawatomo)さんの『お前、タヌキにならねーか?』を紹介するとともに、制作のきっかけやこだわりを聞いた。
その人の人生は続く、余白を残した結末が読者に滲みる!

主人公のタヌキ・こがね丸は山の住人を増やそうと、変身術を使って人間に化け、街へ繰り出す。人生に疲れた人間に「人間やめるなら、タヌキにならねーか?」と声をかけるのだ。

タヌキを主人公にした理由について伺うと、「この漫画を最初に思いついたのは、2018年のことでした。読み切り作品のために考えていたプロットの一つで、小学生の頃にタヌキを学校で保護していたことがあり、タヌキを題材にしたものを描いてみたいと思い立ちました。踏み切りを前に命を絶とうとしている人間をタヌキが引き留めるという構図が浮かび、それを物語の冒頭にしました」(奈川さん)

しかし、プロットの段階でうまくいかず、ボツになった。そして、2020年に再び執筆。「コロナ渦でみんな不安に苛まれていたこともあり、読んだ人の心が軽くなるものが描きたかったです」。商業を意識せず形にしたいと第1話を描き、Twitterに投稿したのが始まりだった。

人の心に染みるハートフルストーリーだが、「励まそうとして価値観を押し付けない、説教臭くならないようには気をつけています。自分もやられると嫌なことなので(笑)」と言う。「どんな物事も全員に当てはまることはなくて、人や状況によってほしい言葉や救いになる展開も違ってくるのですごく難しいです」と言うが、違う景色の切り取り方で、人間では気づかなかったことに気づかされる。

タヌキ・こがね丸は非常に人気があり、モフモフに癒やされる読者が多い。それについて伺うと、「なるべく、作品で扱う動物などは実際の生態を調べた上で描いています。タヌキ好きの中で常識となっている『尻尾で感情を表現しない』『なるべく2本足で立たせるシーンは作らない(コマ割りや構図の都合で立ってもらうことはあります)』また、化けタヌキなので設定上は何を食べても問題はないことをコミックスでも記載しておりますが、『現実のタヌキが死に至るような危険な食べ物を、タヌキの姿で口にしている描写は避ける』などを心掛けています」(奈川さん)

こがね丸は、「現実のタヌキとは少し違うデフォルメを加えるなどして、漫画的に仕上げるようにはしています」と、リアルさと可愛さの絶妙なバランスを保つ描き方が魅力だ。

本作は人生に行き詰まった人たちが最後には救われるような物語だが、「正解のないものに起承転結をつけるので、読み手が好きなように受け取れる、受け取りやすい余白を残せるように気をつけてはいます」と、奈川さん。どこか救われたような描き方をしており、温かい気持ちにさせてくれる。

漫画は現在4巻まで発売中で、最新話はTwitterで投稿している。また
pixiv
や、
pixivコミック
、
マガポケ
などでも追って読めるよので、気になる方は、続編も読んでみよう。
■取材協力:奈川トモ(@nagawatomo)