「アレ、今大丈夫じゃない？」汚れた部屋は心の乱れを表す!?「大丈夫倶楽部」とは一体【作者に聞く】

「アレ、どこいったっけ？」すぐわかる場所に置いたはずなのに、探し物が見つからない。ごちゃついた部屋を探していると、チケットの半券を発見！「これノートに貼らなきゃ」と別のことに夢中になってしまい、探していたものを忘れてしまう。「ああ、こんなことしてる場合じゃないのに!!」とイライラする花田もねは、「大丈夫の研鑽」に励む女性。大丈夫になりたくて頑張ったり、でも大丈夫になれなかったりもする日常の漫画、井上まい(@omo_mai)さんの「大丈夫倶楽部」を紹介しよう。

自分が住みやすい場所「ハビタブルゾーン」を探している

マンガファイブで連載中の「 大丈夫倶楽部 」。現在、第4巻までが電子書籍化されており、「ちょっと大丈夫じゃないときに読むと、自分の心に拳一個分の大丈夫が生まれて救われます」などのコメントが届く人気作だ。

主人公の花田もねは、大丈夫だと自分に言い聞かせながら、失くしたものを探していた。しかし、整理整頓されていない部屋の中で、次々とやらなければいないことが見つかって、全く大丈夫ではなかった。

1人で悶々としていたところ、友人の芦川さんが訪れ、部屋の片付けのお手伝いをしてくれることになった。芦川さんの声がけのおかげで、冷静さを取り戻し、今できることをやろうと動き出すことができた、花田さん。なぜ花田さんは、「大丈夫」と自分に言い聞かせているのだろうか？作者の井上まいさんに「大丈夫倶楽部」について話を聞いた。

大丈夫という言葉でほっとしたい。そこを願って目指していく

ーー「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせる無理をしない生活。おまじないのような言葉「大丈夫」をテーマにした理由があれば教えてください。

大丈夫になりたい、ほっとしたい願望を実際に長く持て余す時期が自分にもあり、ふとそれを作品に翻案して形にできそうと思えたからです。個人的には、言い聞かせるというより願って目指すようなイメージです。

ーー芦川さんの出現にびっくりしました。芦川さん、一体何者なのでしょうか？(笑)

読んで感じていただいた通りで構わないのですが、他人はみんな正体不明で、人でも人じゃなくてもわからないというニュアンスが伝わっていればうれしいです。

ーー「大丈夫じゃなくなってしまう」状況が多くの読者の共感を得ています。どうやって大丈夫にしていくのか、毎回ストーリーが楽しみです。描くうえでこだわっていることがあれば教えてください。

逆に、共感してしまう人たちに向けて「でも仕方ないし別にいいんですよ」と言ってしまいたい。押し付けない力の入れ具合で心の角を丸くしたい気持ちでいます。

ーーうまく行かないこともあるけれど大丈夫倶楽部を読むと、大丈夫な気持ちになれると言う読者の声も届いていますが、いかがでしょうか。

作品はあくまで可能性の提示で、大丈夫になったならそれはその方の自力によるものですし、読んで落ち込んでも、期待通りにならなくても、一つの読書体験になれたらと思います。

ーー大丈夫倶楽部の今後の展開や読者の皆様にメッセージがあればお願いします。

このインタビューで答えたような心持ちで、最後まで描き続けたいと思っています。漫画は娯楽ですので、この作品に興味を持っていただいた方に好きに楽しんでもらえれば本望です。

すっかり片付いた部屋でくつろぐ花田さん。でも本当は片付いたのは半分だけで、まだまだ大丈夫じゃなかったりもするのだけれど「それでもいいんだよ」と、肩肘を張らずに過ごせる心に余裕を与えてくれる漫画だ。

取材協力：井上まい(@omo_mai)