「なんだこのカオスは」教師と生徒、お互いが“推しの先生”!?噛み合わない駆け引き描くコメディにニヤリ【作者に訊く】

学校の教師や作家、医師に政治家まで、さまざまな相手や場面に使われる「先生」という敬称。時には、お互いが違う立場で「先生」同士ということもあるもので……。

先生の方から補習終了!?立場が異なる“先生”同士の駆け引きにニヤリ画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)

矢尾いっちょ( @1203Yao )さんの創作漫画「先生×先生」は、教師と生徒の関係の裏で、“学校の先生”と“同人作家の先生”という別の関係性が錯綜するコメディ短編。Twitterへの投稿に3万件超の「いいね」とともに、「設定が今までにないほどおもしろかった」「なんだこのカオスは」「尊すぎる」と反響が集まった作品だ。まるでコントのように愉快なシチュエーションが魅力の同作を描いた経緯やアイデアの源を、作者の矢尾いっちょさんにインタビューした。

補習の時間が実は“推し活”に!?水面下の攻防描く新設定コメディ

赤点で補習を受ける生徒と、担当する教師。一見ありふれた光景だが、指導する「深町先生」は、教え子の「芦谷香帆」の異なる顔を知っていた。

「先生×先生」(02)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


それは、芦谷が「ぽむぽむペイン」のペンネームで活動する同人作家ということ。ぽむぽむペインは深町の敬愛する作家であり、授業のノートに描かれた落描きイラストで芦谷が“推しの先生”だと気付いたのだ。

そんな深町は、漫画制作の時間を奪ってしまう心苦しさのあまり「今日の補習終わりにします!」と補習を切り上げようとしてしまう。

「先生×先生」(03)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


一方、芦谷は「補習…してほしいです!!」と懇願。実は芦谷にとっては深町が“推しの先生”。創作活動でスランプに陥っていた彼女は、癒やしを求めるべくわざと赤点を取り彼女の補習を受けていたのだ。

「先生×先生」(04)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


そんな事情は露知らず、「次のテストの答え書いとくわね!!」「先生が授業しないでいいと思ったら謝りにきなさいっ!」と、深町はあの手この手で補習を打ち切ろうとする――。

「先生×先生」(07)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


「違う立場でリスペクトしあえる関係」“先生”が題材になったワケ

“推しの先生”同士が、そうと知らずに互いの目的のため補習を巡り攻防を繰り広げる設定が笑える本作。一方、「先生」という言葉の意味を問うシーンもあり、言葉遊びだけでなくストーリー上でもしっかりと「先生」がテーマに盛り込まれているのも見どころだ。

「先生×先生」(08)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


矢尾いっちょさんは個人連載という形で発表している「できない弟子とやらない師匠」と「痩せれませんよ?もちやさん」をはじめ、SNS上でオリジナル作品を公開したびたび反響を集める作家。今回は、本作の制作秘話や、シリーズものと読み切り作品の違いについて話を聴いた。

――「学校の先生」と「マンガの先生」、異なる“先生”同士の駆け引きが笑える作品です。本作のきっかけを教えてください。

「学校を題材にした作品を執筆したいとネタ作りしていた際に、ふと『教師が生徒に羨望の眼差しを向けるようなことがあったらどういうものなんだろう?』と考えたことがきっかけです。そこから、互いに違う立場でリスペクトしあえる関係の表現として“先生”という言葉を使った本作に仕上がりました」

――一見すると地味ながら別の顔を持つ芦谷さんと、かっこいいけど暴走気味な深町先生、2人ともかわいらしいキャラクターです。2人を描くうえでどんなことを軸にされましたか?

「今作の2人はどちらも表はクールを取り繕い、その裏で大きな情熱を抱えている……と、かなり似通ったキャラクター性を持っています。そのため、差別化に少し苦労しました。結果的には、大人と子供の目線の違いを表現することを主軸に、それぞれの立場からのギャップを描くことを意識していきました」

「先生×先生」(09)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


――前半のすれ違いと、“先生バレ”後のいたたまれなさ、移り変わりながらもテンポよく笑えます。全体の構成やリズムで意識している点はありますか?

「とにかく読者に飽きられないようにすることを心がけています。そのためにもキャラクターの表情や行動、展開を魅力のあるものにするため努力しているつもりです」

――そうしたコメディの中に、「先生とは?」という問いが差し込まれていたのも印象的です。「先生が先生を励ます」というシーンに込めた思いを教えてください。

「“先生”とは尊敬や救いを求めて相手に使うことが多い言葉であり、一方で言われた方にはいくらかプレッシャーのかかる言葉だと考えています。それをテーマに扱う以上、ただのコメディではなく、少しだけこの言葉の意味を考えるきっかけになればと、このシーンを差し込みました」

「先生×先生」(12)画像提供:矢尾いっちょ(@1203Yao)


――矢尾さんは本作のように読み切り作品を描く一方で、自主連載として2つのシリーズを続けています。長く続くお話と読み切りを描く際での制作上の違いはありますか?

「続き物の作品では『長期的な話の中で変わっていくキャラクターの変化や成長』、読み切りでは『後先を気にしなくてよい瞬間的で突飛なおもしろさ』など、それぞれ読者に楽しんでもらうために、使える演出が大きく異なると思っています。今後もそれらをなるべく意識して描きわけ、よりたくさんの人に作品を読んでいただきたいです」

取材協力:矢尾いっちょ(@1203Yao)

この記事の画像一覧(全84枚)

Fandomplus特集

マンガ特集

マンガを読んで「推し」を見つけよう

ゲーム特集

eスポーツを「もっと知る」「体験する」

ホビー特集

「ホビー」のトレンドをチェック

注目情報