フラれた幼なじみに「会うためのひきこもり」!?失恋男子と強気女子の攻防戦コメディがほほえましい【作者に聞く】
幼なじみの女の子に告白しフラれて以来、部屋に引きこもり自堕落な日々を送っていた少年。だが自分をフったはずの当の幼なじみが、なぜか毎朝迎えに来るようになってしまって…!?

電子書籍が普及した今、アマチュアのみならずプロの漫画家が個人制作作品を無料の電子書籍で公開し評判を集めることも多くなった。漫画家の大場玲耶
(@ohba08)
さんが描くオリジナル漫画「だから俺は家から出ません!」もその一つだ。
「勇者様!? こ・・・これってそういう意味ですかっ?!」(双葉社)や「隠れオタクの恋愛戦略」(講談社)などの作品を手がける大場さん。その一方、個人制作の漫画も精力的に発表し、Amazon Kindle向け電子書籍として無料公開された「だから俺は家から出ません!」は1600件以上の評価が集まるなど人気を呼んでいる。今回は大場さんに、本作のアイデアや制作の舞台裏を取材した。
フラれた幼なじみが何故か俺の部屋に来る!?先の読めないラブコメ4コマ
引きこもり歴1年の男子高校生・想太は、失恋のショックから学校に通わず、漫画やアニメ、ゲームにひたる生活を送っていた。

楽しい毎日ではあるものの、心のどこかで自分をフった幼なじみの女の子、アイカのことが気になっていた想太。そんなある日、そのアイカが「もうひきこもりなんてさせないわよ!」と、いきなり想太の部屋を訪ねてくる。

自身がすがすがしい高校生活を送るため、想太を学校に連れ出そうとするアイカ。だが、なんだかんだで幼なじみの彼女は、気付けば想太の部屋でくつろぎ漫画を読んだりゲームに付き合ったりと自由気まま。
ある意味で拷問のような状況ながら、想太は好きな女の子が毎日迎えに来ることを活かし、一緒にいるためにあえて引きこもりを続けようと決意してしまい――、という4コマコメディだ。

「とにかく完結させたい」続きを個人制作で描いたワケ
フラれた女の子に会いたくないがために引きこもったはずが、いつしか会えるのを楽しみに引きこもるというシチュエーションの中で、二人の関係性が描かれる同作。大場さんによると、もともとは商業誌で短期連載した作品の続きを、個人制作として完結させたものだという。ウォーカープラスでは本作の続きを描いた理由をはじめ、制作秘話を大場さんに聞いた。
――「だから俺は家から出ません!」を描いたきっかけと、アイデアの発端をそれぞれ教えてください。
「本作の前に描いていたのが戦国時代のラブコメだったので、『次は現代の普通の高校生のラブコメが描きたい!』と思ったのがきっかけでした。
もともとは4コマ誌での短期連載でページ数が短く限られていたので、全体を通して二人の目的と場所の縛りがあった方がわかりやすいと思い、『家から出ない』『家から出したい』という対立構造になりました」
――もともと商業誌での短期連載作品だったとのことですが、差し支えなければその経緯も教えてください。
「4コマ誌には『ゲスト』という読切・短期連載システムがあって、そのゲスト期間の読者アンケート結果で本連載に繰り上がるかが決まります。本作のゲスト期間は3話までで、その期間の結果が期待値に届かなかったので、連載作品としては一旦終わってしまった作品です」
――アクセルとブレーキが極端な想太と、勝気ながら根っこのところで超鈍感なアイカのやり取りが魅力的です。二人のキャラクターはどんなところを意識して生み出していったのでしょうか。
「想太みたいなタイプは何も考えなくてもポンと出てくるのですが、アイカちゃんは当時私の中にはないキャラクターでした。それまで天然や大人しい女の子を描くことが多かったのですが、当時の編集さんに『勝気な小悪魔系を描いてみたら?』と言われて、描いてみたのがアイカちゃんです。
描いてみたら不思議と何をどう考えて行動しているのか、スラスラ頭に浮かんでくるので驚きました。“根っこが超鈍感”というのは、元々の私の好みがうまく反映できてよかったです!」

――短期連載後、個人制作で完結させたのが現在の作品とうかがいました。制作時が2014~15年とのことですが、どんな思いで続きを描かれたのでしょうか?
「すごく中途半端に終わってしまったので、とにかく完結させたいという一心で個人で続きを描きました。掲載されたのが2014年4~7月号で、個人完結の同人誌を2015年5月に出しているので、連載が短期で終了するとわかってすぐに描き始めたんだと思います」
――そうして結末までを描く中でこだわった点ややりたかったことを教えてください。
「結末までというよりは、当時は『結末をなんとしても描きたい』という意志が強かったので、それができたことを当時も今もうれしく思っています。でも、今思えば結末に気持ちを注ぎすぎて完結が早かったと感じているので、もっと結末までの日常回を充実させればよかったとも感じています。こだわった点は、最終回まで想太を外に出さなかったことですね(笑)」
――ちなみに、個人制作するにあたり商業連載時と変化させた点や、既に出来上がっていた部分のリテイクなどもあったのでしょうか?
「連載時から時間を空けずに描いていたためか、特に変化はないように思います。商業連載部分も一切変更せず、そのまま続きから描いています」
――2015年に完成した作品ですが、今年新たに無料の電子書籍で公開されました。電子書籍化したきっかけは何だったのでしょうか?
「個人的に気に入っている作品ということは勿論、個人で無料の電子書籍として出すのにちょうどいいページ数だったので公開しました」
――電子書籍の公開後、AmazonレビューやSNSでも多くの反響が寄せられています。反響への思いや、今後の漫画家活動での展望などメッセージをいただければ幸いです。
「自分でも気に入っているとはいえかなり昔の作品なので、こんなにたくさんの方に読んでいただけていることにいつも驚いています。本当にありがとうございます!商業でもっと戦える力をつけるために、現在個人でいろいろ模索しつつ漫画を発表しています。いつかメディア化まで果たせる作品を作ることが夢です!応援して頂けたらうれしいです!」
取材協力:大場玲耶(@ohba08)