妻の復讐アイテムは餃子!?不倫中の男性は震えながら召し上がれ!!「心霊より人間が怖い」と語る作者に聞く
「今夜は会社に泊まりになる」という夫の連絡から、このホラー漫画は幕を上げる。妻は夫が浮気をしていることに気付いている。今夜も女のところへ行くつもりだということもわかっていて、決して口に出すことはない。

今回紹介する「夫の髭剃り」を描いたのは、鳩ヶ森(@hatogamori)さん。2023年2月に「第2回朝日ホラーコミック大賞」の漫画部門で大賞を受賞し、現在はくらげバンチ(新潮社)にて新作「足」を掲載中。人間を無差別に踏み殺す正体不明の怪異を描いた読み切り作品で、コメント欄ではすでに好評を得ている。鳩ヶ森さんのホラー漫画のコンセプトは「日常に潜む狂気」。生きている人間にとって一番怖いのは生きている人間だという。「人間の悪意は日常に存在し、あなたのすぐ隣にいます。それどころか自分の中にもじっとりと巣食っている。朝、玄関を開けたらそこに立っているような恐怖を、漫画で表現できたらいいなと思っています」と彼女は語る。

――「夫の髭剃り」という作品のテーマについて教えてください。
この作品のテーマは「家庭内の恐怖」です。不倫にまつわるアレコレは、ドラマや小説でもよく取り上げられる題材ですが、狭い家の中で夫婦が対峙したとき、そこにどのような恐怖が生まれるかを描いてみました。
――妻は復讐のキーアイテムに“餃子”を使っています。妻は“狂気”を包み込んで夫に食べさせますが…
はい、どこの家庭でもお馴染みの料理を妻には使わせました。餃子という平凡な家庭料理の中に潜んでいるかもしれない「刃」は、まさに狭い家庭内で妻だからこそ操れる凶器であり、復讐方法です。

気付いていても口には出さず、妻の中で静かに息をしていた狂気はやがてじわじわと形を帯びてくる。夫は自分のすぐ隣まで忍び寄っている狂気に気付くのだろうか?「カミソリが中に隠れているって、気付かない男多いわよね」と最後に妻はつぶやく。その日の夕飯は餃子だった――!最終ページに描かれた“笑っていない妻の笑顔”までお見逃しなく、本作品を隅々まで“さぁ召し上がれ”。

取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)