お墓の上で正座待機!?孤独死した58歳のサラリーマン 別れた妻と子を待ち続ける理由は？男の過去を知ると温かい気持ちに【作者インタビュー】

ウォーカープラスが厳選するおすすめ漫画！今回は、「お盆」の時期に合わせて、泉紗紗( @sasa_iky )さんの「お墓に参ろう」を紹介しよう。本作を読んで「当たり前だけど大切なことを思い出させてくれた」「すぐお墓参りに行きます」などの声が届いている。

お墓の上で待ち続けているご先祖様!?温かい気持ちになれる結末に9.1万いいね集まる！

「初めまして、私は墓です」という語りで始まるインパクトのある始まり。享年58歳の支島知郎。お墓の上に鎮座するおじさんだ。

霊園には多くの故人がお墓参りを待っている。今はいわゆるご先祖様が現世に魂が帰ってくる「迎え盆」の時期だ。

地域によって異なるが、お盆の期間にはお供物の中にキュウリを馬、ナスを牛に見立てた「精霊馬」を飾り、霊はそれに乗って戻っていくとされる。お墓参りにきた家族と一緒に戻り、わずかな時間をともに過ごす。

しかし、支島の墓には一向に家族が訪れる気配はない。なぜなら、離婚した妻は再婚してサンフランシスコに移住してしまったからだ。それでも、支島は妻と娘が会いにきてくれることを心待ちにしていた。

お墓が遠いからと久しくお墓参りに行っていなかった人からも、本作を読んで「すぐに行ってきます」というコメントが届く。今回は本作を描いたきっかけや裏話を泉紗紗さんにインタビューした。

――お盆の時期になると、ふと思い出すような漫画ですね。本作を描いたきっかけは何ですか？

この漫画は、私がまだプロになる前、短期間漫画の専門学校に通っていた時期に出た最終課題でした。ちょうど、8月頃だったと思います。好きなものを描いていいと言われて、時期がちょうどお盆だったので、お盆にまつわる話を描こうと思ったのがきっかけでした。そのあと、ある出版社の編集さんの目に留まり、その出版社の雑誌で小さな賞をいただきました。

――すごいバズ漫画になりましたね。本作の裏話があればお伺いできますか？

ありがとうございます。この漫画は前述したように、専門学校の課題でした。ちょうどその頃、祖母の介護の手伝いもしていまして、死に関わることも意識はしてたんだろうなとも思うのですが。ネームに起こした段階では、終わりがまったく違うもので、死に対して抵抗があったのか無理やり明るい終わり方にしていました。

そのネームを読んでもらった学校の先生から「もっとよくなるよ」とアドバイスをもらって、今の終わり方になりました。先生からもらった意見を取り入れて、いい作品にできたんだなと改めて思いました。原稿を描いていたときは、懐かしい雰囲気や自分がお盆にお墓参りに行った際に感じた情景をできるだけ取り入れて描きました。

――「初めまして、私は墓です」の出だしが強烈で、初めはギャグ漫画なのか？と思って読み進めました。すごくキャッチーですね。

名前が刻まれる墓石に、人が座ってたらおもしろいよな…という思いつきで出だしのイメージがパッと出ました。読んだ人がおもしろいと思って次のページをめくってほしかったので、ギャグ漫画なのか？と思って読んでいただけたのはうれしかったです。

――現世に後悔を残した人も救われる漫画になっていて「温かい気持ちになれた」とコメントがたくさん寄せられていますが、作者としていかがですか？

温かい、ほっとするような漫画を描ける人だと編集さんにも言われているので、私の得意とする分野なのかなと。私自身はあまり自覚してないのですが(笑)。商業では全ページ掲載されなかったので、このような形で日の目を見れて、いろいろな方に読んでいただけて本当によかったです。

――現在は、どんな漫画を描いていますか？

現在は、作画に鳶野さんを迎えて、新連載「 灰かぶりの子は光の公女様 」をピッコマ独占配信中です。奴隷のような日々を過ごしていた孤児・シンダーは、ある日“光の女神”の末裔であると告げられ、侯爵家に引き取られることに。初めての「家族」、優しい兄たちに囲まれたシンダーの愛され令嬢生活を描いています。こちらもぜひ、チェックしてください。1～3話は無料公開、4話以降は「待てば0円(R)」で楽しめます。

忙しさにかまけて家族を蔑ろにしてしまった支島の過去。そんな孤独な男性が救われる結末に、本作を読んで「お墓参りに行ってきます」「こうしてお墓で待っていてくれるといいなと思う」など、たくさんのコメントが届いている。

取材協力：泉紗紗(@sasa_iky)さん