家出をした妻は、狂気の姑から逃げ切れるか!?怒涛の展開を見せる「どちらかの家庭が崩壊する漫画」に注目【作者に聞いた】

パートナーが勝手に親との同居を決めていた。しかも、その親とは徹底的に馬が合わない…。同居という重要な事柄を自分の同意もなしに進めていたと知ったら、パートナーへの信用がなくなり、離婚の2文字が浮かぶ人も少なくないだろう。
仕事のできるエリート・薬師寺シュウは妻のユイ、一人娘のリエと暮らしている。母はシュウのことを溺愛しており、何かにつけて家にやってくる。シュウにとっては「デリカシーが少々欠けるところがあっても、娘のことも大事にしてくれるいい母」だが、ユイにとっては「悪気はないが自分の意見を押し付けてくる、距離を置きたい義母」だった。ユイの気持ちを知っていたシュウだったが、シュウはユイの意見を無視し、新居の物件決めと母との同居を決めてしまう。











当然ながら同居の話を拒否するユイ。シュウと母にはっきりとノーを示すのだが、シュウは諦めていなかった。その結果、ユイはリエを連れて家を出ていく。行き先はママ友の毒山海(ぶすやま・マリン)の家。一時は、コワモテヤンキー主夫・ゴンが詐欺の疑いをかけられ、警察に連れて行かれるというトラブルがあったが、毒山夫妻の信頼関係は磐石。ユイとリエのことも温かく迎え入れてくれる。一方、ユイたちに出て行かれたシュウは憔悴した様子。母はそんな息子に「ママがなんとしても、リエちゃんを取り戻してみせるから…!」と息巻くのだった。
本作は、2022年年末に「大晦日までにどちらかの家庭が崩壊する漫画」「家庭が崩壊した妻の逆襲」としてX(旧Twitter)で連載された作品を大幅加筆・オールカラーで書籍化した横山了一(
@yokoyama_bancho
)さんの「どちらかの家庭が崩壊する漫画」。11月30日(木)の発売に先駆け、横山さんに話を聞いた。
勢いのある線を生かした表現で、怒涛の展開を魅せていく
――ママ友ではなく「マブダチ」としてユイに接するマリンがとても清々しいですね。子供を経由して知り合いになる「ママ友」とは思わぬトラブルに発展してしまうような話もSNSで散見します。横山さんはお子さんがお2人いらっしゃって、育児もしっかり参加されていたとお話をうかがいました。「パパ友」はいらっしゃいますか?
息子が幼稚園のときに結構お話をするパパはいましたが、一緒に飲みに行くなどはさすがにありませんでした(笑)。同世代の子供がいる同業者とは一気に距離が近づいたと思います!そっちのパパ友は多いですね。
――パパ友とはどんなお付き合いをされていましたか?
子連れで家族ぐるみで遊んだりといったことはたびたびありました。でもだいたい妻も一緒だったと思います。やはりパパ友のみの集まり、というのはハードルが高いといいますか…僕のように時間の融通が利くパパさんもそんなにいるわけではありませんしね。そういう意味では深いパパ友というのはいないと思います。でも息子が6歳の時に育児漫画をネットに載せるようになってから、いろいろと温かい意見を下さるパパさんもけっこういたりしたので、僕は恵まれているほうなんじゃないかなとは思っております。
――もともとXで連載されていましたね。投稿するたびに多くの反響がありました。読者からの反応でうれしかったこと、印象的だったことを教えてください。
仕事の合間とかの息抜きに楽しんでますって言ってもらえることが多くて、それはうれしかったですね。男性漫画家からこういう作品が出てきてうれしいという話もありました。「女性が描くと生々しくなるが、さっぱりしていて読みやすい」っていう意見をいただいたりしましたね。男性が描くことに意義があるという話もあったりして、描いてよかったなって思います。
――書籍化にあたってどういった部分を変えていますか?
ストーリー展開は一緒です。ただ、おまけページを描き下ろしで入れて、SNSで投稿したときに荒かった絵は描き直しをしています。
――本作では、いわゆるトーン(影表現や洋服の柄などを表現する際に使用するパターン模様のこと)を使っていらっしゃらないですね。
商業のときはトーンを貼っていましたが、SNSで発表する作品については線だけで表現しています。描き直すと絵が固くなってしまうので、書籍化にあたっても同じように線で表現する形を踏襲しました。全編に色を入れてもらったので、絵の勢いはそのままに、より読みやすい内容に仕上がっています。SNSで連載したときには表現しきれなかったキャラクターの髪の色や洋服の色などもわかって、より「どちらかの家族が崩壊する漫画」の世界に浸れるんじゃないかと思います。なので、既にSNSで連載を読んだという方にも新しい気分で楽しんでもらえたらうれしいです!
一度あった家庭が崩壊してしまったとしても、新しい形でよりよく生きていけるのなら、その崩壊は価値のあるものなのかもしれない。ずっと周囲に対して自分の意見を言えず、我慢ばかりしていたユイ。彼女が自分の意志で人生を切り拓いていけるのか、その行く末を見守りたい。