大人になって100万円で歯列矯正したエッセイ漫画に「私も8本抜歯しました」「すごくわかりやすい」など共感の声多数【作者に聞く】
高校生の頃に「自分の歯並びって変かも?」と感じたことをきっかけに、周りの目が気になるようになったひろぽん酢(@aisuoisi_ne)さん。大きな口を開けて笑うことができなくなり、写真を撮るときは口元を隠すまでになってしまった。社会人になったある日、あることをきっかけに歯列矯正を決意する。
費用は約100万円、医院探しから歯肉炎の治療、8本の抜歯、そして歯列矯正。結果的に5年以上かかった矯正生活を描いた漫画「歯の矯正で人生が変わるエッセイ」がX(投稿時はTwitter)で2万以上のいいねを獲得し、「参考になった」「わかりやすい」「私も経験した」などと話題になった。
今は無事に矯正を終え、納得のいく歯並びとなりコンプレックスを克服したひろぽん酢さんにインタビュー。矯正中の出来事や感じたことを中心に、矯正してみて変わったことなども聞いてみた。

医院の決め手はアクセスのよさ。8本抜歯の衝撃
――歯並びがコンプレックスだと感じ始めたきっかけを教えてください。
「歯並びが気になりだしたのは高校生のときです。当時はプリクラが流行っていて、そのプリクラに映っている自分と周りの友達の歯並びを見比べたときに、なんか…変じゃない…?ということに気づきました。一度気になりだしたらもう最後、それから自分の歯並びが気になって気になってしかたなかったです」



――口元がコンプレックスで、笑うときは口元を手で隠されていたとのことですが、そのときどのような気持ちでしたか?
「とにかく歯並びを見られたくないと思っていました。相手に気持ち悪いって絶対思われると決めつけていたし、そう思われることが嫌でした。こんな歯並びで恥ずかしいという気持ちもあったと思います」


――2015年1月に歯列矯正を始めようと決めたきっかけと、当時の気持ちの変化を教えてください。
「きっかけは、テレビを見ていたら歯並びが悪いと思っていたバナナマンの日村さんが、めちゃくちゃ綺麗な歯並びになっていたのを見たことです。なんで⁉と思いネットで調べると、500万円かけてインプラント治療をした記事が出てきました。そんなお金ないよ〜…と思っていたのですが、関連記事に歯列矯正100万円の文字を見つけました。そのときは『矯正ね〜小学校のとき同級生がやってたな〜』くらいにしか思ってなかったのですが、気づけば矯正のことばかり考えてしまうようになりました。ふと寝る前に歯列矯正の症例を調べると、自分より歯並びが悪い人が凄く綺麗な歯並びになっている例がたくさんでてきました。そのとき、もしかしたら私もこんな風に綺麗になれるのかな?と希望を持ちました」


――歯列矯正を始める前に3つの病院でお話を聞かれたとのことですが、3つに絞るまでにどのようにリサーチされましたか?
「私はとにかく通いやすさを重視しました。やはり長く通わないといけないものなので。当時電車通勤だったので、電車の定期の範囲内にあって駅からも比較的近いなどエリアにこだわり、その条件に一致したものがその3つでした。私はネットの口コミとかはあまり信用していなくて、特に病院の口コミとかは悪いことばかり書かれている印象があります。ネットよりも実際に行って見て話を聞いて決めています」



――3つの病院の中からS病院を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?
「決め手は、1つ目は安すぎないというところです。相場より安いところもありましたが、私は安かろう悪かろうの精神なので、相場の金額を提示してきたS病院を選びました。2つ目は矯正だけを専門に行っているというところに魅力を感じました。先生も日本で数少ない矯正専門医の資格を持っていたので安心感もありました。3つ目はカウンセリングに行くとめちゃくちゃ患者さんが多くて、人が多いってことはいいところなんだ…!と思いました。あと施設も綺麗で、小さい冷蔵庫があって飲み物が飲み放題だったのも魅力でした(笑)」



――初診で8本抜歯をすると聞いたとき、率直にどのように感じましたか?
「歯ってそんなに抜いて大丈夫なの!!?となりました。驚きと恐怖でしたね。実際大丈夫でしたが、当時は不安でネットでかなり調べました。すると8本抜いたという人も結構いたので、そこに関しては安心できました。あと幼少期に虫歯の治療で歯を抜いたことがあって、そのときに歯茎に打つ麻酔の注射が痛くてめちゃくちゃ泣いたという記憶があり、抜くその日まで恐怖で怯えていました。結果的には医療の発展のおかげでまったく痛くなく、これが医療の進化ってやつ?と感心しました」


自分は努力することができると自信が持てた
――2カ月かけて8本の歯を抜いたとのことですが、1本、2本と抜いていく過程でひろぽん酢さんの生活にどのような影響がありましたか?
「最初は抜くときめちゃくちゃ怖かったです。抜いたあともずっと血の味がしたり、抜歯したところの穴が気になったりしていました。それも回数を重ねていくと慣れてきて6本目を抜く頃には何も感じなくなりました。はいはいどうぞ〜抜いてくださ〜い、みたいな。はいはい、はいはい、また来週〜、と虚無でしたね(笑)」





――歯茎を切開して8本目を抜いたあと、鎮痛薬も効かないほど痛くて寝るしかないという状態でしたが、何か対処はされましたか?
「8本目を抜いたときは、今までの抜歯とは全然違ってめちゃくちゃ痛かったし腫れました。やはり切開までしたら腫れるんですね。薬も効かなくて普通に痛かったので、寝ようと思っても全然寝れなかったです。冷やしたりしてみたけど全然だめで、もう本当朝方ぐらいに痛みより眠さの限界が来てようやく眠れるって感じでした」

――歯列矯正が始まる前に、病院からしっかりと説明はありましたか?説明を受けて感じたことはありましたか?
「しっかりと説明がありました。かかる金額、大体の期間、どんな装置なのか。ほかにも、途中で遠くに引越しすることになったらどうしたらいいのか、装置をどうしても外したいとき(結婚式など)はどうするのか、などいろんなことを説明してもらいました。聞いていた私は未知のことばかりだったので『ほうほう…』みたいな感じでわかっているかのようにして聞いていました」



――歯列矯正で歯にワイヤーを通したあと、口の中が爆発したような痛みを感じたとありましたが、食事をしたり歯を磨いたりする際に工夫されていたことはありますか?
「とにかくワイヤーをつけて3日間は痛くてたまらなかったです。普通に生活してる分には大丈夫なのですが、歯に固形物が当たると死んでいました。最初の3日はとにかくあまり噛まずに飲み込めるものを食べていました。それこそ豆腐はお友達です。ほかには、そうめんやめちゃくちゃ柔らかくなるまで茹でたうどんなどが食べやすかったです。麺類は飲み物でしたね。歯磨きに関しては、もうソッ…と磨くしかなかったですね。あまりに痛くて歯磨きもできないときはマウスウォッシュをしていました」





――矯正器具を外して綺麗になった口元を見て最初に感じたこと、また矯正後の生活で歯列矯正をしてよかったと思ったことを教えてください。
「歯並びっていきなりドン!て変わるものじゃなくて徐々にゆっくりと変わっていくので、めちゃくちゃ変わった〜!!!っていうのは正直なかったです。でも器具を外した自分の歯を見たときは感動しました。歯並びが綺麗だな〜と憧れていたものが鏡に写っていたので。先生に『よかったですね』と言われて、今までのいろんな嫌な思い出と頑張ってきた思い出が溢れ出てきて泣きました(笑)。
歯列矯正をしてよかったことは、人目を気にしなくなった、人前で笑えるようになった、笑顔で写真が撮れるようになった、などいろいろありました。でもその中でも一番よかったのは、自分に自信が持てるようになったことです。歯の矯正をするんだ!と自分で決めて自分でお金を払って、痛みや不便さに耐え、自分のために圧倒的な努力をすることができました。私はなんでも頑張れるんだ!という自信がつき、自分のことが好きになれました。今はすごく幸せです」










――今回の「歯の矯正で人生が変わるエッセイ」を描く際に気にされたことや工夫されたことがありましたら、教えてください。
「痛いし実際やってることはグロいことなので、とにかくそれをマイルドにするためにかわいく描くように意識しました。それでも恐怖の感想はたくさんもらいました(笑)。あとはわかりやすいように専門用語はあまり使わず、誰でもわかるように簡単に描きました。ほかにも、ただ過程を描くだけじゃつまらないのでおもしろエピソードを入れました。先生たちに感謝していたので、とにかく気持ちを伝えたかったです。ここでも言います、本当にありがとうございました」










最後に、矯正を経験された方やこれからやってみようかと考えている方、また自分の歯並びに悩んでいる方へのメッセージをお願いすると、「この漫画でそういうことあったな〜!懐かしい!って思ってもらえたり、歯の矯正をやりたいと思っていた人の手助けになれたらうれしいです!年齢を重ねているし今更…と思ってる人も少なくないと思います。私は変わりたいと思うことに年齢なんて関係ないと思います。今から最高の自分になったらいいじゃん!私は歯の矯正をしてめちゃくちゃ幸せです!もちろん矯正はやらないと決めた人もそれはそれで素敵です!みんなが自信を持って生きていければいいなって思います!」と話してくれた。