不当解雇されたSEの再起ストーリーが話題!ストレス社会を生きる読者から「心に刺さる」「元気をもらえた」と反響続々【作者に聞いた】
2023年5月に第1巻が発売され、ストレス社会で働く人々を中心に共感の声を呼んでいる「え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?」。漫画家の伊於(いお)(
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)さんが、下城米雪(かしろめゆき)さん原作の同名小説をコミカライズした作品で、総合エンタメサイト「PASH UP!(パッシュアップ)」にて連載中だ。

X(旧Twitter)で第1話を公開したところ、8.5万以上のいいね(2023年10月13日時点)が集まり、「心に刺さる漫画」「めちゃめちゃ元気もらえました」などと反響が寄せられている本作。今回は漫画化を手がけた伊於さんに、作品へのこだわりなどについて話を聞いた。
無職になってしまった愛の前に現れたのは…
本作の主人公・佐藤愛は、SEとして働く28歳。ある日、愛はブラックな労働環境に耐えきれなくなり、自分の心を守るため職場でも趣味のコスプレを始める。それと同時に、長時間労働を改善するべく奮闘。5年かけて全業務を自動化することに成功した。しかしその先に待っていたのは、解雇予告だった。コスプレ姿で仕事をしていた愛は、新しく就任した社長に目をつけられてしまったのだ。


その後、ファミレスで悔しさを爆発させていた愛は、幼馴染の鈴木健太と偶然再会。そして、健太が立ち上げたスタートアップ企業に再就職し、プログラマ塾の運営に携わることになる。愛が初めて接客を担当したのは、仕事も私生活も行き詰まっていた小田原茂。無料体験に来た茂は、コスプレ姿の愛を見て初めは不信感を抱くが、彼女からのアドバイスを実行することで、人生が好転していくのだった…。


同業者もそうでない人も楽しめる作品を意識
――作品をコミカライズすることになったきっかけを教えてください。
2021年の春先に、担当編集から「『小説家になろう』で連載していて今度書籍化する作品がある。コミカライズをやらないか?」とお誘いのメールをいただいたのがきっかけです。原作がおもしろかったのはもちろんですが、最初のメールで条件を細かく提示してくださった担当編集の姿勢を見て「この人となら頑張れそう」と思ったのでお受けしました。
――小説である原作を漫画化するにあたって、苦労した点はありますか?
初めて原作を読んだとき、ストーリーのおもしろさはもちろんですが、なによりも情景描写や心理描写をなるべく省いたシンプルな文体である印象を受けました。下城米先生も「長文はプログラムだけで十分」「物語と無関係な文章(風景描写など)がとっても少ない」(※単行本1巻のあとがきより抜粋)とおっしゃっているので、これは意図的な演出ですね。なので文章として読むにはすっきりとしていてわかりやすいのですが、これをそのまま漫画に描き起こすと、読者に共有したいことの大部分をモノローグで処理することになってしまいます。
基本的に漫画は絵で表現する媒体です。なので原作では数行の説明で済まされている部分も、コミカライズ版ではあえてバックボーンを掘り下げたり、言葉に詰まる表現やうつむく表現を入れてテンポを調整しています。それをさらに絵に落とし込むことで、読者がより共感できたり、登場人物が魅力的に見えたらいいなと。
また、読者には同業者としてストーリーの展開に共感できる人もいれば、そもそもSE業界になじみがない人もいます。そのため、システム関連の説明を漫画としてわかりやすく落とし込む方法や、どこをどれだけ詳しく描くかの取捨選択は悩みますね。私も決してSE業界に明るくはないため、「私がわからん部分は、なじみのない読者の皆さんもきっとわからんだろう!そしてわからんとつまらんだろう!」の精神でわかりやすく描くことを心がけながらも、下城米先生(本職)や友人(本職)にアドバイスをいただきながら、同業者が「わかる!」「あるある!」と思う展開も盛り込めるよう工夫しています。
――コスプレを描く際、こだわっているところや気をつけているところはありますか?
原作で登場するコスプレは事前に下城米先生から資料をいただけるのですが、そうでないものは毎回自分で衣装を考えなければいけません。そのときは、なるべく多くの人が「おっ、このコスプレは!」と思えるキャラをチョイスするようにしています。特にこだわっているのは、アップ時の服の作画ですね。愛ちゃんのコスプレは『クオリティが低い自作衣装』という設定があるので、なるべくちゃっちく見えるようにしようと…(笑)。特に1〜3話はわかりやすいと思うので、ぜひチェックしてみてください。

――ストレス社会で頑張る人たちが共感できるストーリーということで、伊於さんご自身が共感したエピソードがあれば教えてください。
どのキャラも「わかる…わかるぞ…!」となるんですが、やはり「認められたいのに認めてもらえない」百合ちゃんや、「やりたいことはあるのにそれが実現できない」洙田には共感しますね。洙田のエピソードは、新しいことを始めようとしてつまずいたことがある人は全員思うところがあるんじゃないでしょうか。
――続きを楽しみに待っている読者のみなさんへメッセージをお願いします。
各サイトのPV数で支えられているだけでなく、X(旧Twitter)やニコニコ漫画でのコメントも楽しく拝見させていただいています。いつも本当にありがとうございます。2023年冬頃にコミカライズ版2巻を発売できるよう、現在単行本作業を頑張っております。最近は京王線に告知ポスターを載せてもらったり、テレビCMが流れたりと、ますます盛り上がっていく「え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?」。原作書籍・コミカライズ版ともども応援よろしくお願いいたします。みんなで読もうワンオペ解雇!

「え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?」は「PASH UP!」で現在連載中!
「え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?」は「PASH UP!」で連載中だ。コミックスは1巻が発売中、さらに2巻も今冬発売予定なので、ぜひチェックしてほしい。

取材協力:伊於(@io_xxxx)/主婦と生活社