会話下手な人は「むしろ気を遣いすぎ」かも!?“コミュ症”を自認する作者のあるある漫画に思わず共感【作者に訊く】
用があっても話しかけられない、言いたいことがうまく伝えられない、緊張してズレた反応をしてしまう……。会話やコミュケーションの得手不得手は人それぞれ、けれど苦手な人にとって苦手な部分や失敗のエピソードはと自分事のように共感できるものだ。
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でオリジナル漫画を発表しているジョセフ鶴屋
(@yukkurishitette)
さんの創作漫画「コミュ症人間」シリーズは、そんな対人関係が不得意な“コミュ症さん”たちのあるあるなエピソードをコメディタッチで描く作品だ。

2022年にX(旧Twitter)で公開された「コミュ症と会話が噛み合わない理由」では、会話が噛み合わない時の“コミュ症”さんの考えをピックアップ。同僚が何気なく申し出た文章チェックに対し、「未決定の案件なので手伝ってもらうには上司の許可をもらわないといけない。だが上司は外出予定なので急いで確認しないといけない」という筋道立った思考をめぐらすコミュ症さん。けれどその過程は一切伝えず、「今何処ですか?!」と上司の居所を突然訊ねてきたコミュ症さんに、同僚は混乱してしまう――、という一幕が描かれる。


こうしたコミュ症さんたちの苦悩を、電話やメールへの葛藤や来客対応、何気ない雑談まで、会社の中でのやり取りを中心にさまざまな場面で切り取り、読者からの共感を呼ぶ同シリーズ。自身の実体験をベースに描いているというジョセフ鶴屋さんに、シリーズの舞台裏を訊いた。
「笑ってもらえるのが一番本望」実体験をベースにしたコミュ症さん漫画への想い
シリーズのはじまりは、2019年に公開された「コミュ症どうしがエンカウントするとこうなる」。会社員で極度のコミュ症である「田村ゆうか」が、独りで飲食店に入ったところ、偶然同じ会社の「水樹さん」と隣の席に座ってしまうエピソードだ。
「何か話題を振るべきなのか…!?」「水樹さんも私なんかと喋りたくないよな…!?」と、だんまりを決め込む田村さんだが、その態度に水樹さんは「なにやらめっちゃ怖い顔してる」と動揺。実は水樹さんもコミュ症さんで、お互いに同類であると知らない二人は、きまずいその場をなんとかしようと悪戦苦闘する……、という物語。

「自分はお昼は絶対『一人で食べる!』と決めていて、会社を出て人気の少ないところに避難するんです。何故ならそれが“心の休息”だから。しかし、お昼に行った定食屋で、たまたま他部署の人の真横に座ってしまったんです」と、冒頭部分は実体験をそのまま描いたものだと話すジョセフ鶴屋さん。「コミュ症さん」エピソードの数々も実体験や、知り合いの人間関係のいざこざ等々がベースに描いていることが多いという。
そんな同シリーズは当初、田村さんと水樹さんの2人を主人公に据え、数ページのショート漫画では「コミュ症同士がエンカウントするとどうなる?」というテーマで、4コマ漫画ではあえて2人を同時に出さず、それぞれのエピソードを描く形で制作していたそう。そんな書き分けの理由を、「満を持して2人をエンカウントさせることで、コミュ症同士だからこそのどうしようもない化学変化が起きる気がしていて描くのが楽しいです」とジョセフ鶴屋さんは振り返る。
一方、近作では2人とはタイプの異なる新たなコミュ症さんも登場。「初期の頃は4コマを1本ごとに読み切りで“コミュ症さんあるある”をひたすら描いてました。ただ、純粋なコミュ症あるあるエピソードが底を尽きた感じになってしまって。最近は、軽くストーリー性を持たせた回を描くようになりました。『こういう場面に放り込んだら、コミュ症ちゃんたちはこういう行動をとるだろうなぁ……』というような、ある程度連続性を持たせた描き方をするようになりました」と、長期シリーズゆえの変化を語る。


もともとは「なんとなく始めたシリーズ」だったという同作だが、「『コミュ症は会話した後にこうなる』は何気なく描いたエピソードだったんですけど、予想以上に反応を頂きました。いつもコミュニケーションがうまくいかなかったことをずーっと頭の中で繰り返し反省しちゃうんですよね……。たくさん反応をいただいて、『自分だけじゃなかったのか……』とむしろ励まされました」と、ジョセフ鶴屋さんは読者から共感を集めたことへの驚きとうれしさを感じるという。
現在は他の作品を準備中ということもあり不定期更新となっているが、「余裕が出来たらまた続きを描きます!」と話すコミュ症人間シリーズ。
ジョセフ鶴屋さんは「自分はコミュニケーションが苦手で、『生きづらい世の中だ……』と思っていたこともあり、超絶ネガティブ人間なんで、『なにやってんだろう自分……』ってたまに筆が止まりそうになる時もあるのですが、今はそれを漫画の題材にできているので、むしろコミュ症でよかった!と思っています。そんな風に開き直って描いている漫画です」と作品への思いとともに、どんな反応だとしても、それぞれの人が抱えている『何か』に引っかかってくれたらうれしいです。でも笑ってもらえるのが一番本望ですね!」と読者へのメッセージを寄せた。
取材協力:ジョセフ鶴屋 WEB漫画描く人(@yukkurishitette)