深夜の自室で背中に感じる気配…古いラジカセが拾った何者かの声!!静かな日常に恐怖が片足を突っ込む!!【作者に聞く】
夜に一人で部屋にいると自分の後ろに何かの気配を感じた経験、誰しも覚えがあるのではないだろうか?特に子供の頃はその気配に敏感で、異様に恐怖を感じていた。そんな身近に存在する“ささやかな恐怖”を描いた作品が、ラジカセをモチーフとした「周波数」だ。

今回紹介する「周波数」を描いたのは、鳩ヶ森(@hatogamori)さん。2023年2月に「第2回朝日ホラーコミック大賞」の漫画部門で大賞を受賞した新進気鋭のホラー漫画家で、現在はpixivにて“犯人を予想しながら読んでほしい漫画”として「仮門」を連載中。まだ序章で、毎回怪しい人物が登場しており、謎は深まるばかりの新作だ。そんな鳩ヶ森さんが描く作品のコンセプトは「日常に潜む狂気」。人が暮らしている日常のすぐ隣で息を潜めている恐怖をテーマに扱っており、どの作品も静かにストーリーが進んでいくのだが、残された余韻がやけに怖い。今回の「周波数」についても話を聞いてみた。

――「周波数」のテーマについて教えてください。
今回のテーマは「子供が夜の暗い自室で背中に感じる薄ら寒さ」です。皆さん覚えがあると思うのですが、自室で一人でいるときやお風呂に入っているときなど、自分の後ろに感じる何者かの気配ってあったりしますよね。特に子供の頃はその気配が怖かったと思います。あの感覚をたまには思い出してゾッとしようぜ!という気持ちを込めました。
――“ラジカセ”という懐かしいアイテムをモチーフにされていますね。
はい。私自身が子供の頃からラジオが好きで、ラジカセに思い入れがあります。中学生になって夜遅くまで机に向かう機会が増えた頃に、親が古いラジカセを譲ってくれました。なので、「夜の1人の時間=ラジカセ」という思い出があるんですよね。親としては、それをBGMに試験勉強をがんばりなさい、ということだったのでしょう。しかし勉強はまったくせず試験の点数も散々でしたが、今回の漫画のネタにできたので結果オーライとします。
――「周波数」というタイトルについて教えてください。
レトロなラジカセは手でつまみを動かして周波数をラジオ局に合わせます。うまく合わせるにもコツがあります。それがおもしろくて夜通しラジカセをいじって遊んでいたのですが、たまにノイズに混じって呪文のような意味不明な言葉が聞こえることがありました。
――急に聞き取れない音声が入ってくるとビックリしますよね。
そうなんです!今なら外国の放送が混線しているのだろうとわかりますが、子供だった当時はその不気味な音声は怪現象そのもの。そんな音声のように断りもなく、“日常にいきなり恐怖が片足を突っ込んでくる”というような漫画を目指して描いてみました。
――こだわって描かれた部分はどこですか?
こだわったのはやはり「お化けの顔」です。私はホラーといってもいわゆる「人怖」ばかり描いてしまうので、ビジュアル的にわかりやすい幽霊や妖怪やモンスターを描くスキルがありません。その練習も兼ねて「異形のモノ」のお顔をがんばって描きました。化け物を恐ろしく描くには「目」が重要だとずっと思っていたのですが、意外と「歯」がポイントなのだなと気づきました。

ラジオから流れてきたのは、火災によって一家が遺体で見つかったというニュース。当初「一家3人の遺体」と報じられるが、のちに次女の遺体も見つかったという続報が流れる。このとき、ラジオの周波数が拾っていたのは、果たして人間が聞き取れる音域だけだったのだろうか?一般的に人が聞きとれる周波数は、20Hz以上と言われている。この作品を読んだ読者からは「心霊スポットとか幽霊が出やすいところって周波数19Hz以下が多いらしいですね」というコメントも!つまみで合わせなければいけない不安定な古いラジオは、一体どの周波数を拾っていたのか…?
年末年始で夜更かしすること増えるこの時期、「日常に潜む狂気」をコンセプトに数々のホラー漫画を描く漫画家からの“ささやかな恐怖”のプレゼントを受け取ってみるのはいかがだろうか?
取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)