人を迷わす悪霊に不気味な男が持ちかけた「イタズラ」とは…?真相が「素敵すぎる」と反響呼ぶ“悪霊退治”漫画【作者に訊く】
オープン以来、1人もお客がやってこないクレープ店。その原因は「人を迷わせる悪霊」の仕業だった。それを見抜いた不気味な男は、悪霊に「イタズラをするなら――もっと面白いのがあるよ」と提案し……。

10月、矢薙(
@yanaginga
)さんがX(旧Twitter)に投稿し、2.5万件を超える「いいね」を集める創作漫画「悪霊を退治する人の話」。不穏な笑みを浮かべ霊を手なずける男による予想外な形での“悪霊退治”に「めちゃいい話」「適材適所」と多くの反響を呼んでいる作品だ。
同作は、Amazon Kindleインディーズマンガで公開中の無料電子書籍にも、シリーズ累計1万件以上の評価がつく人気のインディーズ漫画。今回は注目を集めた新エピソードの紹介とともに、作者の矢薙さんにアイデアのきっかけや作劇法について取材した。
人を迷わせ害をなす悪霊、けれど迷わせる矛先を変えれば“いい霊”に!?
「あれ~見つからないなぁ~」。幾人もの人が探すのは、開店したてのクレープ店。不思議なことに、その人たちは目当ての店の目の前にいるのに店舗に気付けずにいた。

落胆する店主の女性だが、そこに一人の男が初めての客として来店する。不気味な雰囲気を漂わせる男は、客が来ないという店主の言葉に「お客さんは増えると思いますよ 今日から」と答える。

実は霊能者であるその男は、店主にとりついていた「人を道に迷わせる悪霊」をお札に封印。迷っていた客たちも店を見つけられるようになり、一件落着…と思いきや、男は捕らえた悪霊に、イタズラをするならもっと面白い相手があると不穏な提案を持ちかける。
その夜、とある町で盗みを働こうと車を走らせる強盗団がいた。彼らはターゲットの家をカーナビにセットするが、カーナビの案内は密かに改ざんされており、気付けばすっかり道に迷ってしまう。

視界が真っ白になり慌てる強盗団はなんとか不思議な現象から抜け出すが、行先は警察署。霊能者の男は、悪霊の取りつく先を警察署長に代え、強盗たちを迷わせる“イタズラ”を教えていたのだった。
意識するポイントは「後味の悪い終わり方にはならないように」
店に客が集まるようになった店主、近隣の強盗の発生率が下がった署長、そして楽しいイタズラができてご機嫌の“元”悪霊と、誰もが笑顔の結末を迎えるエピソード。「悪霊を退治する人の話」シリーズではさまざまな悪霊を相手に、その能力の使い道を誘導することで、霊を始末することなく“悪霊退治”をする男の活躍が描かれる。

作者の矢薙さんによると、シリーズの発端は、透明人間を題材にした作品のアイデアに遡るという。2パターン考えたアイデアのうち、一方は
『暗殺者クリア』(少年ジャンプ+掲載、作画:綾広)
という読切となり、もう1パターンの「見えない人に霊が道を導く話」を自身で描いたのが、シリーズ第1話にあたるのだそう。
その後、“悪霊をやっつけずに退治する”という独創的な形でドラマが描かれるシリーズとなった本作。その作劇は悪霊の能力から考える場合と、オチからの逆算で考える場合があると言い、「人を乗っ取る悪霊関連の話は前者にあたるので、比較的話が作りやすいです」と矢薙さんは話す。また、不気味な笑みを浮かべる主人公の霊能者は「前振りに時間を使わないため強調して描いています」と、短いページで話をまとめるため、またオチとのギャップを際立たせるために意図したキャラクター像として生み出したものだという。
毎回意外なアイデアとともにハッピーエンドが描かれる同シリーズ。矢薙さんは本作へのこだわりとして「後味の悪い終わり方にはならないように気を付けています」と話し、1話に1つは温かな気持ちになれるシーンを入れるよう意識していると教えてくれた。
取材協力:矢薙(@yanaginga)