「おんなじ時間を過ごしてよ…」タイムリープに取り残される少女を描く短編漫画に「予想外のラスト」と反響【作者に訊く】
今年も残るところあとわずか。SNSを中心に2023年もウェブ漫画の盛り上がりは衰えず、一年を通してさまざまな作品が話題を呼んだ。2023年4月に漫画家の太田トオミ(
@omi_103
)さんがX(旧Twitter)に投稿した創作漫画「オタサーの姫『以外』がタイムリープする話」もそうした作品の1つだ。作品の反響とともに、作者の太田トオミさんにアイデアのきっかけや制作上の挑戦についてインタビューした。

「タイムリープされる側の疎外感」に着目したビターな短編
「オタサーの姫『以外』がタイムリープする話」はそのタイトル通り、時間物SFでは定番の「タイムリープ」(時間跳躍)を、一風変わった手法で取り入れた短編作品だ。過去や未来の世界へ時間移動するのは、主人公や強敵といった物語の中心人物自身が行うのが定番。だが本作では、ある学校の漫研の中で、“姫”と慕われる女の子だけがタイプリープが起きていることに気付けないことから生まれる残酷なすれ違いを描いている。

漫研部員たちはあくまで姫のために過去改変を繰り返すが、変わったことそのものに気付けない姫は、その状況に疎外感を募らせていく。誰もが夢見るタイムリープ、その負の側面をひしひしと感じる構成やストーリーに、4000件を超えるいいねとともに「なんだこの、軽そうで重い話は」「かなりひねくれた愛」「ヒューマンホラーじゃねえか」と読者から多くの感想が寄せられた。
作者の太田トオミさんは、2023年10月から週刊少年サンデー(小学館)にてオカルト部員の少女・佐渡イオと、彼女が出会った怪奇現象が実体化した少年・アスカの二人が織りなす青春オカルトバトル
「出席番号0番」(コミックス第1巻は2024年1月18日(木)発売予定)
を連載しているプロの漫画家。

太田さんに話を訊くと、「オタサーの姫『以外』がタイムリープする話」は連載開始以前、漫画賞への応募する作品として制作した短編だという。
「もともと福地翼先生の『サイケまたしても』(小学館)というタイムリープ漫画が大好きで、その作品を読んでいるとき、タイムリープされている側の気持ちが気になったのがアイデアのきっかけです」と、本作の着想に触れる太田さん。実際の物語を作り出すうえでは、タイムリープの仕掛けに焦点を当てるため、登場するキャラクターの情報はあえて最小限にしたそう。「“姫ちゃん”と“それ以外”以上のキャラは持たせないようにしたので、“姫ちゃん”の本当の名前も含め、登場人物全員、名前が出てこないんです」と、狙いの一端を大田さんは明かす。

「タイムリープされる側の疎外感」がテーマだけに同作のストーリーはビターな雰囲気が漂っている一方、“姫”や漫研部員たちの表情豊かな掛け合いも見どころの一つ。太田さんは作品を振り返り「絵をそれまでで一番丁寧に描きました!お気に入りは、2ページ目1コマ目で、各部員たちがいろんな方向から飛び出してきているところです。あと登場人物が全員漫研なので、タイムリープという事態に対しても飲み込みが早いところも気に入っています」と話す。
「現実ではあり得ないことが起こったときどんな感情が発生するのか考えることが好き」だという太田さん。現在連載中の
「出席番号0番」
でも、怪奇現象そのもののアスカをはじめ、作中に登場するさまざまな怪異とともにそこに向き合うキャラクターの姿が描かれている。
最後に、本作で興味を持った読者に向けて、太田さんにメッセージを訊いた。
「この作品を読んでくださってありがとうございます!現在週刊少年サンデーで『出席番号0番』という漫画を描いていますので、そちらも良ければ読んでいただけると嬉しいです!」
取材協力:太田トオミ(@omi_103)