読書家ギャルは「自分の物語」を書きたい!作りたい人の背中を押す短編漫画が愛おしい【作者に訊く】

WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。イラストレーター・デザイナー業とともに、SNSで大きな反響を呼んだ「東京藝大ものがたり」(飛鳥新社)をはじめ作品を発表するプロの漫画家でもあるあららぎ菜名さん( @Araragi_Nana_23 )も、Amazon Kindleインディーズにて過去にSNSにあげた漫画や読切漫画をまとめた短編集 「あららぎ菜名のマンガ集」 (既刊4巻)を配信している。

正反対の二人が自作の小説を軸に影響しあう創作漫画「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


第2巻に収録され、主人公のひとりが表紙にも描かれている「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」は、小説を書きたい少女・蓮見梅子が、図書委員の桐谷文に自分の作品を読んでもらうというストーリー。創作することをテーマに、「お話を書きたい」という気持ちにまっすぐな分不安も抱える梅子と、読むだけのつもりがいつしか自分もその熱意に当てられる文が、お互いに影響し合う青春短編で、SNSやpixivでの発表時は大きな注目を集めた作品だ。そんな同作の舞台裏を、作者のあららぎ菜名さんに取材した。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(3/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)

「なんとなくでもいい」創作への一歩目を後押しするような短編

同作を描いた背景には、「本当は“何か作ってみたい”と思っているのに『創作は高尚なことだから自分にはできない』と思っている人は実は多いのではないか?」という考えがあったとあららぎさんは話す。

「あららぎ菜名のマンガ集2」はAmazon Kindleストアで配信中あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


「おもしろくて感動させられる物語は、この世の中に数え切れないほど存在します。だから『今更自分が作らなくったっていい』と思うかもしれませんが、創作は表現であり、その人が持つ世界はその人にしか描けません。『おもしろくなければだめだ』『うまくなければだめだ』は、最初は考えなくていいのです。なんとなくでもいいから、もっと手軽に創作に触れてほしいと思い、この物語を作りました」

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(8/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


そんな本作では、創作に前向きな梅子と、そんな梅子の作品を批評する一方、影響されもする桐谷の関係が描かれる。あららぎさんは梅子を「『とりあえずやってみよう!』と行動する、ある意味で創作者の“理想”」として、桐谷を「読者・編集者の立場」になぞらえたそうで、「私は、好きは伝染していくものだと信じているので、この二人にもそうあってほしいという願いを込めました」と、お互いが刺激しあう形が生まれていったと話す。

また、作中では梅子の描く小説の場面が断片的に挿入されている。梅子の描く物語の大筋はファンタジーとして構想し、梅子と桐谷の現実の世界と対比させ、また梅子の小説世界が現実に入り込むという漫画ならではの画面映えも意図しているという。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(15/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


そんなあららぎさんは、小学生の頃ファンタジー小説を書いた経験があるという。それだけに桐谷が梅子の作品に触発され自分自身で書き始める場面は「一番描きたかったシーン」だったそうで、その場面には“自分が書いていいのかという恐怖”と“それでも書いてみたいという心情”を込めたと話す。

「まじめ図書委員と読書家ギャルのハナシ」(23/32)あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)


同作が多くの読者の反響を集めたことには、「たくさんの読者さんに読んでいただけたことが大変うれしかったですし、同時にやはり桐谷のような人は少なくないのだと思いました」と思いを述べるあららぎさん。

そして、「梅子のようにどんどん動けたらいいですが、何かを作ること、そして誰かに見せることは怖いです。ただ桐谷が梅子に背中を押してもらい、作品を書き切ることで見えてくる世界があります。そして出来上がった作品は、たとえうまくできなかったとしても人が作った作品とは違う愛おしさを感じさせてくれます。ぜひその感覚を体感していただきたいです」と、創作をしたいという気持ちを持つ人へのエールを送った。

取材協力:あららぎ菜名(@Araragi_Nana_23)

この記事の画像一覧(全41枚)

Fandomplus特集

マンガ特集

マンガを読んで「推し」を見つけよう

ゲーム特集

eスポーツを「もっと知る」「体験する」

ホビー特集

「ホビー」のトレンドをチェック

注目情報