私を捨てた母の声？「部屋から出るな」草取り中に養母からの命令。出しっぱなしの鎌を取りに行こうとして聞こえてきたのは…【作者に聞いた】

Instagramやライブドアブログ「ゆっぺのゆる漫画ブログ」で、実話をもとにしたエッセイ漫画を描く漫画家のゆっぺさん。ブログは2021年には月間3000万PVを記録し「ライブドアブログ OF THE YEAR2021」最優秀グランプリを受賞。2021年12月から執筆してきた 「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」 では、戦前から生きる“祖母・キヨさん”の幼少期からの実体験を漫画化し、コメント欄を解放した最終話には500件以上の熱い応援コメントが寄せられた。

現在92歳の祖母・キヨさんの過去を知ったゆっぺさんは、その経験から伝えられるものがあると感じて漫画化を決断。作品化のために時間を掛けて聞いたエピソードは、心が痛くなるものだったそう。今回は、ゆっぺさんがどんな覚悟を持って描いていたかについて聞いた。

どんなにつらい内容でも決して描く手が止まることはなかった

――キヨさんが養子先で養母から受けた仕打ちは読んでいるだけでもハラワタが煮えくり返るもので、小さな子に対して、よくあんなことができるなと思いました。

私には娘がいるので、自分の娘と重ね合わせてしまいました。今の娘よりもさらに小さな子どもに対して、こんなことがよくできるな！って。腹が立ち過ぎて、泣きながら描くことが多かったです。漫画の中でキヨが泣いてるシーンを描くときは、私もほぼ泣いていました。

――物語の中のキヨはお嫁に行くまで養母にいびられ続けました。ストーリーがつらくて、描く手が止まるということはなかったのですか？

それはなかったです。つらくて涙が出ることはあっても、手が止まることはありませんでした。描かなくては！と思ったので。ただ、いつも複数の作品を並行して描いており、この時もそうでしたが、この「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」は描くのに飛び抜けて時間がかかりました。

祖母の気持ちを伝えたかったから、キヨのセリフにはとことんこだわった

――イラストや展開、セリフなど、漫画にはいろいろな要素がありますが、どんな部分に一番時間が掛かりましたか？

絵を描くことよりも、どう伝えるのかに時間が掛かりました。毎回、おばあちゃんに話を聞くたびにノートを取っていたのですが、昔の話だからどうしても時間が前後してしまう。だから、時系列に整理するのも大変でしたが、一番悩んだのはどう描いたら状況や気持ちが伝わるかということでした。ですから、イラストよりもテキストの部分に時間が掛かりましたね。最も時間が掛かったのは、キヨのセリフ。どういう言い回しにするとおばあちゃんの気持ちが一番伝わるのかに悩みました。

――今作は、Instagramやブログで配信されていましたが、読者からはどのような反響がありましたか？

このお話に関しては、コメントもDMも一切を閉じていました。なぜかというと、伝えたい確固たる思いがあったので、それをほかの人の言葉に遮られたくなかったからです。感想を受け付けていたら、きっと批判的な意見も来たと思いますが、キヨのお話は他人が評価するものではないと思ったんです。読んでいただき感想をもっていただくことは自由ですが、評価はしてほしくなかった。私が伝えたいのはキヨの気持ちだったので。ですから、最終回までコメント欄は設けませんでした。

みんなの気持ちを汲んでしまうと描けなくなってしまうと思った

――とすると、家族など身近な方からの感想も聞かなかったということですか？

そうです。いろんな意見を聞くと、こっちよりもこっちの話を描いた方がいいかな？とか、これを描いたらキヨの娘である私の母親がイヤな気持ちになってしまうかな？などと、作品を描くうえで余計な感情が生まれてしまうと思うんです。それにみんなの気持ちを汲んでいたら、描けなくなってしまっていたと思います。これはおばあちゃんのお話なので、おばあちゃんがいいと言ってくれている以上は、ただひたすらに真っ直ぐに描き上げようという気持ちで作品に向かっていました。

――真っ直ぐに話を聞いてくれる孫のゆっぺさんの気持ちに応えて、祖母のキヨさんも飾ることなく話を聞かせてくれたんですね。 次の連載7回目では、キヨさんが高等小学校(現在の中学1、2年生にあたる)を卒業したあとのお話ついて伺います。