大手エリートサラリーマンの副業が「女風のセラピスト!?」2時間2万5000円で女性が満たされたいのは?リアルな本音を描く【著者に聞く】
女性用風俗、略して「女風」。文字どおり女性用風俗サービス店のことだ。性的な快楽を目的としたサービスのほかにも、雑談や添い寝など肉体的な接触を伴わない疑似恋愛のような癒やしを提供する。本作「僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~」は、取材を通して見えてきた女風で働く人や利用者のリアルなドラマをベースに描く。今回は、著者の水谷緑さんに取材を経て見えてきた女風について話を聞いた。

大手に勤務する29歳男性。副業は「女性用風俗のセラピスト」




女風は店舗を持たない。店とやりとりを通して、セラピストと待ち合わせ。そこから指定したホテルへ向かう。女風にもさまざまな店があり、アイドル風の若い男の子が多い店や職人気質のおじさんがやっている店などカラーがある。ナツキが経営する店は、女の子が嫌な思いをしない誠実なセラピストを選ぶ。そこでナンバーワンの悠は、現職は大手企業に勤めるサラリーマン。週に数回、セラピストとして副業をしている。




連絡が来たのは、初めての利用客。30過ぎて未だに経験のない医師のみさは、女風を利用することにどこか後ろめたさを感じていた。ガチガチになっているみさを見て、悠はリラックスしてほしいとハグをして、手をつなぐ。アロママッサージをしながら、適度な会話。いきなり直接的な行為はしない。ある程度の精神的な信頼がなければ、利用者が楽しめないことを悠は知っていたからだ。悠は、チャラチャラしていないだけでなく、無理強いしない「癒やし系イケメン」だった。



女風を利用する人のなかには「妙齢を過ぎたが、男性経験がない」「快感を得ることが怖い」「パートナーとはセックスレスで自分は終わっている」など、性に対してコンプレックスを抱いている女性も多い。経験のないみさは、勇気を出して女風を利用した結果、「私の体は大丈夫」だと思えた。
利用客の多くは「人恋しくて誰かと触れ合いたい」か「性のコンプレックスをなんとかしたい」
水谷緑さんといえば「こころのナース夜野さん」(小学館)や「私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記」(文藝春秋)など、精神科・ヤングケアラーなど、心が抱える問題について描いてきた。今回は大きくイメージを一転し、性風俗を題材にした漫画を描くことになった経緯を聞く。
――本作を描くことになったきっかけを教えてください。
4年くらい前に知人から女性用風俗を使った話を聞いて、女性用風俗というものが本当に存在するのかと驚き、知りたくなりました。失礼ですが、正直ものすごい変わった方がやってるのかと思いましたが、実際取材してみたら、想像と違い、セラピストの方は快感について真面目に深く研究していたりして、意外性に惹かれました。
――女性風俗に抵抗感はありませんでしたか?
性欲は老若男女みんなあるものだと思っています。男性中心の社会で、女性は性欲をなかったことにされてきた歴史があるので、女性が自分の性や心身を大事にし、自ら行動して性的サービスを利用しようとするのはいいことだなと思います。そういう面では抵抗はありませんが、ただ、最初、自分が女風の漫画を描くということを告知するときは自意識が爆発してものすごく恥ずかしくなりました。それまでは医療漫画を描いてたので驚かれました。ただ、もう慣れました。最近は女風も知られるようになり、興味津々でおすすめのお店を質問いただくことも多いです。
――取材を通して、最初に抱いていた印象と変わったことがあれば教えてください。
意外と女風を利用してる女性は多いんだなと思いました。職業年齢もさまざまです。一方で、女性は、お金を払っていても、性に対する欲望をストレートには絶対出せないという複雑さを実感しました。
――セラピストに本気になってしまったり、パートナーに言えない性の悩みを解消したり、さまざまなドラマがあって驚きます。取材をしていて、一番驚いたことは何ですか?
いろんな使い方があるようです。2巻に描いてますが、勃ち待ちをやられたセラピストの話や、セラピストの名前の刺青を入れたお客さんの話がインパクト大でした。具体的には、よければ2巻をお読みください。
――2時間で2万5000円。なかなかの料金だと思いますが、需要があるということですよね?女の人はセラピストに何を求めているのでしょうか?
少女漫画のヒーローしかやってくれないような非日常的な時間を味わえるサービスかとは思います。その分それを演出するセラピストは大変だと思います。女性が求めているのは、大きく分けて、人恋しくて誰かと触れ合いたいか、性のコンプレックスをなんとかしたいのどちらかのような気がします。利用を通して、コミュニケーション、心のつながり、肌のぬくもり、性欲の発散、自分の体が反応するのか自分は大丈夫かの確認などをしているのかなと思います。
――本作でこだわったところがあれば教えてください。
綺麗な理想的な部分だけでなく、実際あったことを描くところです。
――皆様へメッセージをお願いします。
「興味はあるけど、実際利用するのはちょっと…」という方は、まずは単行本の最後に載ってるお店での電話コースを利用してみるのもいいかもです。お店におすすめのセラピストを相談もできます。利用の際、自分のためになってるかは確認されてください。単行本ぜひ読んでいただけたらうれしいです。あと、どんな話が読みたいなどありましたら教えてください。
人には言えない性癖を解消したり、セラピストに愛してほしかったり…。「満たされたい」というなかで、疑似恋愛のような関係からどんどん沼に落ち、本気になっていく女性もいる。そんなリアルが描かれた本作は現在、マンガアプリ「Palcy」で連載中。第2巻では、悠のライバルが登場。禁止されている本番行為を繰り返して人気を駆け上るが、彼の前に現れた利用客は――?
取材協力:水谷緑