【漫画】「宇宙兄弟」のアシスタント体験を漫画化。己の不甲斐なさに落ち込む筆者に、先生がかけてくれた“言葉”とは【作者に聞く】

イラストレーター兼、漫画家として活躍するあさころ(@asa _cororo)さんが、「宇宙兄弟」(著:小山宙哉/講談社)のアシスタント時代の体験を描いた漫画『先生へ』がSNSで話題を呼んでいる。将来が不安だった学生のころ、「心に残る素晴らしい言葉がたくさん登場する『宇宙兄弟』に勇気づけられた」というあさころさん。本作を描いたきっかけ、名作と名高い『宇宙兄弟』の魅力、アシスタント時代に支えられた“言葉”についてうかがった。

先生へ01漫画=あさころ asacoroさん


高校時代から愛読していた『宇宙兄弟』のアシスタント募集を知り、当時大学4年生だったあさころさんは、勇気を出してアシスタントに応募する。背中を押してくれたのは、『宇宙兄弟』に登場するシャロンの言葉ーー「『どっちが楽しいか』で決めなさい」だった。ここからはじまった、あさころさんのアシスタント生活。苦悩と喜びが同居する本作には、小山先生や仲間たちに対する大いなる感謝が込められている。

先生へ02漫画=あさころ asacoroさん


あさころさんは、漫画家として活動するほか、アートブック『FOOD2024』にイラストを掲載するなど、幅広い活躍を見せる。本作を描いたきっかけは、『週刊宙哉』なる『宇宙兄弟』の公式メルマガの存在だった。

「毎月1回、『週刊宙哉』の配信を私が担当しており、制作秘話と一緒にアシスタント漫画を掲載していました。アシスタントを卒業することになり、最後の配信漫画として描いたのが『先生へ』です。アシスタント生活を振り返りつつ、お世話になった先生に感謝の気持ちを伝えたくて描きました」

先生へ03漫画=あさころ asacoroさん


本作の序盤に登場するシャロンの言葉以外にも、『宇宙兄弟』の台詞に何度も勇気づけられたとあさころさんは語る。

「『宇宙兄弟』の15巻で、厳しいバレエの練習に辟易したオリガが、「苦しいよ、これ。もっと楽なのがいい」と弱音を吐いてしまう場面があります。その際、オリガの母・エミーリアが、「苦しくて苦しくて、大変な演技ほど、美しく見えるの」と言葉をかけるエピソードがあって。アシスタントになり、この場面をあらためて読んだ時、自分に言ってもらえたかのように感じました。

資料がなくて構造がわからず描くのに苦労したり、一生懸命時間をかけて描いた絵に修正がかかったり……。苦しい場面は多々ありましたが、単行本を見返すと、あぁ、ここ何度も直したな、大変だったなと思う絵ほど、自分で見ても“いい絵”になっているんです。エミーリアの言葉は、苦しくて逃げたくなった時、自分を励ましてくれるメッセージでした」

先生へ04漫画=あさころ asacoroさん

先生へ05漫画=あさころ asacoroさん


アシスタントとして奮闘する中で、不甲斐なさに落ち込む日も多かったことが本作から読み取れる。そんな中、あさころさんはどのようにアシスタントを継続するモチベーションを保っていたのだろうか。

「悩んだときや落ち込んだときは、アシスタントの仲間達や友人に相談していました。人に話すことで、頑張っているのは自分だけではないんだなと気づけて、何度も救われました。また、『宇宙兄弟』のイベントやメルマガの感想を通して、読者の皆さんと交流する機会が多かったこともありがたかったです。応援メッセージが励みになっていたのはもちろん、『宇宙兄弟』がたくさんの人に愛されていることを改めて実感できて、作品づくりに携われることを幸せだと思えました」

先生へ06漫画=あさころ asacoroさん

先生へ07漫画=あさころ asacoroさん


「自分のこと見くびっちゃあかんで」
あさころさんがアシスタントの仕事に対して悩んでいる最中、小山先生がかけてくれたこの一言はとても力強く、多くの読者が共に励まされたことだろう。独立した今でも、先生の言葉はあさころさんにとって大きな支えとなっている。

「今でも自信を失うことが時々あるのですが、そんな時はこの言葉をはじめ、先生にかけてもらった沢山の言葉を思い出しています。小山先生のみならず、先輩方も本当に優しくて、親身になってくれました。『宇宙兄弟』の制作現場は、とても恵まれた環境だったと思います」

先生へ12漫画=あさころ asacoroさん


あさころさんが背景も含めて自信を持って描けるようになったのは、アシスタントになって3〜4年ほど経った頃だったという。今後は、「恋愛ものや音楽ものの作品にも挑戦したい」と意気込みを語ってくれた。

アシスタント時代のエピソードは電子書籍化を予定しており、現在新しいエピソードを描きおろしている最中とのこと。最後に、あさころさんから読者の皆さんへのメッセージをいただいた。

「『先生へ』を読んでくださり、本当にありがとうございます。思いがけずたくさんの感想や反応をいただいて、描いてよかったと心から思える作品になりました。
私みたいに最初どうしようもなく仕事ができなくても、続けていると気づいた時にはできるようになっていて、後から自信がつくこともあります。自分のペースで、一歩一歩進んでいきましょう!」

取材・文=碧月はる

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