ジオンMS開発史”を再現した「76体のガンプラ=ジオンの系譜」はゲーム「機動戦士ガンダム ギレンの野望」から着想

誕生から40年以上が経った今なお、幅広い世代を魅了し続ける「ガンプラ」。2023年3月末時点のガンプラの累計出荷数は7億6000万個を超え、世界的なロングセラー商品となっているが、そんな同商品の魅力を発信し続けているのが、自由な発想で“ガンプラ創作”を楽しむモデラーたちだ。

画像提供:佐藤健司・kobaruto/ジオンMS開発史”を再現した「76体のガンプラ=ジオンの系譜」(C)創通・サンライズ


本稿では、モビルスーツ開発の歴史をガンプラで表現した作品 「ジオンの系譜」 を製作し、SNSに投稿しているモデラー・佐藤健司/kobarutoさん(@modelerkobaruto)をピックアップ。製作にいたる経緯や、製作過程でもっとも苦労したポイント、楽しかったポイントなどを話してもらった。

商品化されていない21体のMSは自作で用意

「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」に登場したモビルワーカー(C)創通・サンライズ


「ガンプラビルダーズワールドカップ(GBWC)」日本大会において幾度となくファイナリストに選ばれ、そのほかのガンプラのコンペでも多数の受賞歴を誇るkobarutoさん。こちらの「ジオンの系譜」はゲーム「機動戦士ガンダム ギレンの野望」から着想を得たそうで、「ガンダムの世界において“兵器としてのモビルスーツ(以下、MS)”がどのように開発されていったのかを、絵ではなく立体物で表現できたらおもしろいのでは……と考え、プラモデルで製作する案を練りました」とコメント。

そうしたアイデアと、自身が過去に製作した「GAT-X105」という作品(※)の手法を融合させた試作品を作り出し、「北海道モデラーズエキシビジョン(HME)」で発表したところ、これが高く評価されたそうで、そこから少しずつ増加・改良をくり返して、現状の形に行きついたという。
(※アクリル板を使い、作品をパネルのように展示する形式)

一般的なガンプラ作品やジオラマと比べて、使用するガンプラの数が圧倒的に多いところも「ジオンの系譜」の特徴の一つ。製作を進めるなかで、各ガンプラの配置には頭を悩ませたと話す。「まず悩んだのは、パネルそのものについてです。90センチ×90センチの透明アクリル板にどうガンプラを配置するか?どう固定するのか?というところで悩みましたが、CAD図面でMSや矢印、ボルトなどの位置を計算しながら書くことで、少しずつ作り上げていきました」

そうして準備を整え、いよいよガンプラの製作開始……となったところで新たに浮上したのが、MSのカラーリングに関する問題。当初は12体で完結させる予定だったため、色味は統一するべきか?それともバラバラに仕上げるべきか?なかなか決められず、大いに迷ったという。

画像提供:佐藤健司・kobaruto/陸戦型ザクII(J型)(C)創通・サンライズ


ここで解決のヒントになったのが、コンペに出展する際に何気なく書いた作品の説明文だそうで、詳細をうかがったところ、「サブタイトルに“MSの開発における外観の変遷を楽しんでもらうために、あえて量産カラーのグリーンで統一しております”という言い訳の文章をつけてみたんです。するとそれに対して、好意的なご意見をたくさんいただきまして。だったらこの方向性で行くしかないな……と思い、こちらの作品で使うMSはすべてグリーンで塗装することにしたんです」という裏話を聞かせてもらえた。

ちなみに「ジオンの系譜」は、前述のとおり、当初は12体で完結する予定だったものの、その後続々とMSの数が増えていき、現在(2024年7月時点)、76体ものMSがずらりと並ぶ超大作となっている。そのなかには既製品だけでなく、kobarutoさんお手製のガンプラも数体含まれているという。

【画像】ドアン専用ザクII(現地改機)をはじめ、量産カラーで統一した76体のガンプラがずらり(C)創通・サンライズ


「76体のうち55体は、今でも普通に購入できるか、パーツの組み合わせで再現できるMSです。ただ、残りの21体は数十年前に発売されたガンプラだったり、そもそも商品化されていないものでして……。そこを作ることこそ、モデラー・kobarutoの真価を発揮するところ!という思いで製作させていただきました。人が持っていないものを作り出すのは、やはり楽しいですね」

このようにkobarutoさんのこだわりが凝縮された「ジオンの系譜」は、SNSでも話題になり、多くのガンプラファンから支持されている一作だが、まだ完成はしておらず、これからもどんどん進化していくという。最後に、同作品の今後の展開について話してもらった。「これで終わりではなく、ここからさらにバージョンを変えながら進化させていって。この作品はまだまだ広がっていきます。もしかしたら一生かかっても終わらないかもしれないのですが、新たな表現方法も模索しつつ、自分のライフワークとなったこの『ジオンの系譜』を、これからも成長させていきたいと考えています」


取材・文=ソムタム田井
(C)創通・サンライズ

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