こだわりはシャアザクのスケール感。20センチのガンプラを約18メートルのモビルスーツとして見せるための工夫とは

“推し活”を応援するトレンドメディア「Fandomplus」では、編集部が衝撃を受けた“推しガンプラ”を連載で紹介していく。本稿では、スケール感が印象的なザクを制作し、SNSに投稿しているモデラー・まんねん工房(@hide94373)さんにインタビューを実施。制作にいたる経緯や、制作過程で苦労したポイント、この作品を通じて学んだことなどを振り返ってもらった。
リアルさを追求した作風……塗装では質感よりもスケール感を重視
――本作品を制作するにあたり、どのようなアイデアやインスピレーションがありましたか?
この作品に限ったことではないのですが、自分はジオラマという情景を表現するモデラーですので、ガンプラを使って「モビルスーツは実在するんじゃないか?」と想像してもらえるような作品づくりを心がけています。
プラモデルというのは10センチ~20センチほどなのですが、それを約18メートルの兵器として表現するには単体ではダメで、人であったり、建築物であったり、車両であったりと対比させる必要があります。それによって“スケール感”や“空気感”を表現することこそ、ジオラマの醍醐味だと私は思っています。

――制作過程で難しかった部分は何でしたか?
20センチのプラモデルを約18メートルのモビルスーツに見えるように表現するため、自分が一番大切にしているのは“スケール感”です。改造するにも、塗装するにも、スケール感を損なわないようになるべく細かく、細く、部位によっては薄く表現することが重要だと思っていて。自分にとってザクというモビルスーツは、戦闘機より戦車に近いイメージなので、改造についてはあまり精密機械風にならないよう、装甲の隙間からチラリと見える程度にとどめています。

また、サビ、雨垂れ、砂や土などの汚しも、機体が約18メートルであることを想像して、オーバースケールにならないよう気をつけています。たとえば塗装はげの表現は、0.3ミリの極細ペンで時間をかけて描き込んでいるのですが、これはドライブラシやシリコンバリアなどの手法に比べて手間がかかります。ですが、手書きだとすべてをコントロールできるので、自分はそれがベストだと思っています。一般的には質感などを大切にする方が多いように思いますが、自分は質感を犠牲にしてでも、スケール感のほうを重視しています。

――今回の制作で楽しかった部分を教えてください。
自分にとって生み出す過程は、常に“自分の心の中のド直球な感想”との対話です。自分は技術力よりも鑑定眼のほうが先行して成長するタイプなのですが、心の中の自分はなかなか褒めてはくれず、作業を進めるたびに落胆する毎日です。作る過程はいつも苦しいのですが、その結果、許せるレベルのものができたときは、皆の反応がすごく楽しみで。実際に自分が達成感を感じるのは、作品を見てくださった方が喜んでくれたときですね。
――この作品のなかで特に気に入っているポイントはどこですか?
頭部のツノをこのように表現しているシャアザクはほかで見たことがないので、そのあたりがおもしろい点ではないかと思っています。ほかにもこだわった点を挙げるとしたら、カラーリングを設定色の「たらこ色&あずき色」ではなく「ピンク/赤」にしたところでしょうか。明るいピンクにしたほうが汚し塗装の識別度が上がると思ったので、そのようにしてみました。

――この作品を通じて、ガンプラ制作における新しい発見や学びがありましたか?
苦手な色というのがあるんですけど、ピンクや赤はそうではないことが確認できました。この作品の経験ひとつで「成長した」と感じても、その感覚は次の作品の制作時に平気で裏切ってくるので、自分の信じる方向に向かって暗中模索しながら、一歩一歩進んでいくしかないと思っています。YouTube生配信の視聴者さんたちには周知のことですが、いつも失敗ばかりしています。まだまだ普通にヘタクソですので(苦笑)。これからも恥を笑いに変えるつもりで頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

(C)創通・サンライズ
取材・文=ソムタム田井