【漫画】「これを司法で裁けないの、どう考えても法律の欠陥だろw」3選。無断駐車した者勝ち?賠償金を払わないのは合法?【作者に聞いた】

知らないとヤバイ法律、知ったら知ったで悪用する人が出てきてしまう…それが法律です。弁護士をしながら、法律にまつわる4コマ漫画を日々、X(旧Twitter)で発信をしている【漫画】弁護士のたぬじろうさん (@B_Tanujiro) 。意外と身近に存在する、法律にまつわる「ヤバイ」を漫画にすることで、法律を知ることの重要性を読者に投げかけています。


今回は、「これを司法で裁けないの、どう考えても法律の欠陥だろw」というような法律の闇を3つ集めて漫画で解説してもらいました。

6話1-1漫画=弁護士のたぬじろう


●ボス弁とは?
業界用語で、その事務所の所長(経営者)である弁護士を指します。ちなみに、雇われている勤務弁護士のことは「イソ弁」(居候弁護士)、雇われておらず事務所の一部を間借りして独立採算で業務をしている弁護士のことは「ノキ弁」(軒先弁護士)と言います。

イソ弁は一定の年数働くと独立したり、その事務所の経営側弁護士(「パートナー」と言います)になったりすることが多いです。

6話1-2漫画=弁護士のたぬじろう

6話2-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話2-2漫画=弁護士のたぬじろう


●自力救済の禁止とは?
裁判手続によらずに、自分で実力を行使して、自分の権利を実現することを「自力救済」といい、日本の法律では禁止されています。自力救済を認めると、自称権利者による実力行使ができてしまい、弱者が一方的に虐げられる弱肉強食の世界になってしまうためです。

――もし自分の所有地に放置された車両を、勝手に動かそうとすると、逆にこちらが何らかの法律に触れることになりますか?そのときの罰則は何でしょうか?

たぬじろうさん(以下、たぬじろう):自力救済禁止の原則に違反し、違法行為となります。

刑事についていえば、たとえば自動車を処分したり、傷付けたりした場合には器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)が成立しえます。

勝手に動かしただけの場合、窃盗罪の成立が問題になりえますが、その自動車を利用する意思があるわけではないため、通常は不法領得の意思という、窃盗罪が成立するための要件を満たさないと考えられます。そのため、窃盗罪等の犯罪は成立しない可能性が高いです。

しかし、犯罪にならないからといって、違法行為には変わりがありません。

そのため、民事上の責任=損害賠償等の問題が生じます。勝手に動かしたことにより所有者等に損害が発生すれば、その損害を賠償しなければなりません(不法行為に基づく損害賠償)。

6話3-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話3-2漫画=弁護士のたぬじろう


――駐車した者勝ち、された側は損しかしない激やば法律の欠陥例の1つ目は、「勝手に違法駐車された場合、自分で勝手に動かせず、弁護士に相談する時間も費用もかかる上、請求可能なのはパーキング料金ぐらい」という事例でした。請求可能なパーキング料金について詳しく教えてください。

たぬじろう:請求可能な損害は、通常、撤去(明渡し)完了までの駐車料金相当額です。

具体的には、近隣の月極駐車場やコインパーキングの料金などを参考にして、1日あたりの駐車料金相当額を算定することになります。

弁護士費用については、ほとんど請求ができません。

まず、日本の裁判では、弁護士に依頼するかどうかは自由であり、自分で裁判をすることができる建前になっています。そのため、自分の判断で弁護士をつけるのだから、自分でその弁護士費用を負担するというのが大原則になります。

ただし、不法行為とよばれる一定の類型の請求については、弁護士費用を一部請求することが可能です。この場合は、損害の10%が弁護士費用として認められる(加算される)のが一般的です。

放置車両の問題も、この不法行為に該当するため、損害の10%を弁護士費用として請求することが可能です。しかし、実際に要する弁護士費用と比べて、請求できる弁護士費用(パーキング料金の10%)は極めて低額ですよね。「ほとんど」請求ができないと記載したのはそのためです。

6話4-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話4-2漫画=弁護士のたぬじろう


●受忍限度とは?
社会生活を営む上で、騒音や悪臭などの被害について、社会通念上我慢すべきとされる範囲を指します。

社会生活を営んでいれば、一定の音や臭いが発生するのは仕方のないことですよね。そのため、通常生じるような音や臭いであれば、違法行為にはなりません。この受忍限度を超える騒音や悪臭があって初めて、同行為が違法性を帯び、損害賠償の対象になり得ます。

6話5-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話5-2漫画=弁護士のたぬじろう


――35年ローンで買った家の隣人が、ごみ屋敷で激臭&騒音やばすぎ人間という展開にも、法的に相手を引っ越しさせることはできない、という事例でした。依頼主の亀谷さんができる最適解は何でしょうか?

たぬじろう:最適解が存在しないんですね…。少なくとも私には「こうすればよい」という決定的な手段は思いつきません。

強いていえば、購入前に近隣の状況等をよく調べて、購入をやめるべきだった、ということになるのかもしれません(汗)。

購入してしまったあとでは、法律ではどうすることもできません。

隣人にやめてくれるようお願いをしたり、行為がやむことを願って(威嚇効果を狙って)損害賠償請求をしたりすることも考えられますが、それをすれば必ず解決するというものでもありません。

究極的には、損害が発生することを覚悟してこちらが引っ越しをするか、激臭&騒音を我慢してそこで暮らし続けるのかという判断をしなければならないのかもしれませんね…。自宅は、大きい買い物ですから、しっかりとリサーチをしてから購入しましょう…。

6話6-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話6-2漫画=弁護士のたぬじろう


●財産を指定するとは?
強制執行を行うためには、「この財産に強制執行をしてください」と対象を明らかにして強制執行の申立てをしなければなりません。

不動産の強制執行であれば、その所在がわからなければなりませんし、預貯金の強制執行であれば、金融機関名+支店名まで特定が必要になります。

相手が所有している財産がわからなければ、勝訴しても、判決文はただの紙切れ同然になってしまうのです…。

6話7-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話7-2漫画=弁護士のたぬじろう


●強制執行とは?
差押え、と言った方がわかりやすいですかね。裁判所に申立てをすることで、その財産を差し押さえて、そこから債権を回収することができます。不動産であれば、競売により不動産がお金に換えられて、その代金から配当を受けることができます。

6話8-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話8-2漫画=弁護士のたぬじろう


――勝訴したのに財産を回収できないケースというのはわりと多い事例なのでしょうか?

たぬじろう:一定程度あるのは確かだと思います。

財産を持っていない人からは回収が不可能ですし、財産を隠されてしまうと、それを見つけることも難しい。調査する方法として、たとえば財産開示手続という制度等も用意はされていますが、本気で強制執行を逃れようとしている人から回収することは、かなりハードルが高いです。

勝訴したのに財産を回収できないというのは債権者からしたら、最悪ですよね。そういった事情もあって、多くの裁判は判決までいかずに、和解で終わることが多いのです。和解の場合は、自分で約束したことなので、判決に比べれば任意に支払ってくれることが期待できますから…。

6話9-1漫画=弁護士のたぬじろう

6話9-2漫画=弁護士のたぬじろう

6話9-3漫画=弁護士のたぬじろう


【もっと教えて!たぬじろうさん】
法律は、正しい人の味方、弱い人の味方だと思っている人がいますが、必ずしもそうなっていないのが現実です。もちろん、できる限り公正になるように立法がなされているわけですが、完璧な法律というものはありません。人が作るものですからね。残念ながら。

弁護士という仕事をしていると、可哀想だけど法律では力になれないというケースを見ることも多いです。

ただ一方で、知っていれば不合理な結論を回避できるケースも多いです。「知らないともっとヤバイ」のが法律の世界ってことですね。

この連載では、少しでも皆様にそのような不合理な結論を回避するための法律知識をお伝えできればと思っています。

なお、弁護士には守秘義務があるため、漫画の中でも、たぬじろうたちは事件や個人が特定できない範囲でしか話をしていません。

個室を予約していたのも、(特定できる内容を話していなくても)周囲に話が聞こえないような配慮ですね。

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