「この手帳には“未来”が書かれているんですよ」メガネの男が語る預言は本物か、それとも…!?【作者に聞く】
野球部の青年が公園でランニングをしていると、1冊の手帳が落ちていた。交番へ届けようとしたとき、手帳を探すメガネの男が現れる。手帳を手渡し立ち去ろうとする背中に「コレ、何が書いてあるか気になりませんか?」と言葉をかけてくる。「…気になりませんけど」と素っ気なく答えるも、メガネの男性はかまわずに話を続けて、「この手帳にはこれから起こることが書いてあるんですよ」と不思議なことを話しだすのだった。

メガネの男は、ビルのガス爆発を預言したあとに、週末に野球の決勝戦を控える青年に向かって「あなたは近いうち、左腕を骨折する」と不穏なことを口にした。翌日、メガネの男が預言したビルのガス爆発を伝えるニュースが流れた。この出来事は偶然なのだろうか?それとも預言は本物なのだろうか…?

本作を描いたのは、「good!アフタヌーン」(講談社)の2024年9号で「峰家の双子は似ていない」が掲載された漫画家・高野准(@takano_66)さん。高野さんはこれまで講談社が主催する「アフタヌーン四季賞」で数多の賞を受賞し、本作も「アフタヌーン四季賞2020秋」で佳作を受賞した作品である。高野さんに本作に込めた想いや受賞時のことについて話を聞いてみた。

――ゾッとするお話でしたが、この話を創ったきっかけや作品に込めた想いについて教えてください。
この作品は、昔に書いた小説をもとに描きました。1ページくらいの、男の子が預言の書を拾うという話でした。たまたまその小説を見つけ、ふくらまして漫画にしてみました。描いたのはコロナ禍が始まって、ライフスタイルが一気に変わってあっけにとられていたころで、それでも「life goes on」というか、「くよくよしないで頑張っていこう」みたいなメッセージを、とにかく天才肌でポジティブという性格の主人公に託した思い出があります。
――本作は佳作を受賞されたとのことですが…?受賞時のことを教えていただければと!
この時初めてこんなに長い漫画を描いたので、なにがなんだかわからず家にある漫画を参考にしながら描き、そのころに読んでいた「宝石の国」という漫画の作者がデビューした「アフタヌーン四季賞」の締め切りが近かったので送ってみたところ、本当にたまたま佳作をいただきました。送ったことなんて忘れていたころに、昼寝をしていたら急に電話がかかってきて、急いで出たら「最終選考に残りました」という電話でなにがなんだかわからず「はい、はい」と言ってたら編集部の方に、「もしかして、昼寝してました?」とバレたのが忘れられないです。思い返してみると、なにがなんだかわかってないことだらけでしたね。
――本作は高野准さんの「スキ!」を詰め込んだお話だと聞きました。具体的にどのような「スキ!」が詰め込まれているのでしょうか?
とにかく野球漫画が好きで、主人公に部活をさせるなら野球!と思っていました。相手を0点に抑える自信のある投手にとって、身内に“絶対に打って1点を入れてくれるバッター”が存在すれば、それって神様みたいな存在だなと思い、なんだかロマンがあるかも、スキ!と思って、無理やり盛り込みました(笑)。
あとは主人公がスポーツ万能だったり、「背は小さいけど態度は大きい」みたいなちょっと猫みたいな性格にしたのも、スキ!のポイントかもしれません。態度は大きい主人公を同じ目線で優しく見守ってくれる友達の2人も、話を賑やかしてくれる大事なキャラクターで、今でもスキ!な人たちです。

高野准さんは現在、「コミックDAYS」(講談社)に読み切り作品を多数掲載中。今後について話を聞いてみると「今、新しい読み切りを描いていて、どういった形になるかわからないのですが発表したいと思っています!」とうれしい返事を聞けた。さらに「今までもこれからも自分のスキ!を詰め込んだ作品ばかりです。今度はもっと長い話でそれを見せられたらと思います」と意気込みを語ってくれた。本作を読んで興味を持った人は、漫画アプリや高野さんのSNSでほかの作品も読んでみては?
取材協力:高野准(@takano_66)