『魔導物語 フィアと不思議な学校』インタビュー【後編】“キミのね”の3人が語る、OP曲「アソベンチャー」・ED曲「纏うものがたり」の制作秘話

2024年11月28日にコンパイルハートが発売したRPG『魔導物語 フィアと不思議な学校』(Nintendo Switch(TM)/PS(R)5/PS(R)4)。1989年に産声を上げ数々のシリーズ作が発売され、派生作品「ぷよぷよ」も大ヒットした「魔導物語」シリーズの、数十年ぶりとなる正統新作だ。

今回、オープニングテーマ「アソベンチャー」とエンディングテーマ「纏うものがたり」を担当したキミのねの3人(つむぎしゃちさん、大谷舞さん、久下真音さん)と、本作のプロデューサー&ディレクターを務めるアイディアファクトリーの安井光さんにインタビューを実施。後編ではキミのねの3人をメインに、初となる同一作品へのOP・ED同時制作の舞台裏や、楽曲にこめた遊び心やゲーム本編とのリンク、完成した2曲への思いをメンバー3人に語ってもらった。

「魔導物語」シリーズ最新作「魔導物語 フィアと不思議な学校」


「歴史と今っぽさが組み合わさったサウンドに」

「キミのね」


――キミのねは、つむぎしゃちさんが生み出す架空のゲームや映像作品に楽曲を作っていくというコンセプトとうかがいました。まずは、普段の制作プロセスを教えてください。

【つむぎしゃち】 けっこうバラバラで、作品のタイトルからメンバーみんなで構想するパターンもありますし、「こんな主題歌やりたいよね」「アニメのオープニング曲作りたいね」って意見から「だったらこういう作品があったらいいのにね」と話し合うこともあります。(作品と楽曲どちらが先ではなく)“本来ありえないんですけど、同時にできる”パターンが多いかなと思います。

――コンセプトが固まってから、具体的に楽曲として形作っていくんですね。

【久下】 そうですね。最初にみんなで「こんなイメージかな」って話をして、ラフスケッチを描くところから始まる感じですかね。

――今回の「アソベンチャー」と「纏うものがたり」は、「魔導物語 フィアと不思議な学校」の主題歌ということで物語が先にある形でした。それに対して、どんなコンセプトで作っていきましたか?

【つむぎしゃち】 オープニング曲の「アソベンチャー」は、歌詞にちょっと遊び心を入れようと思いました。フィアと不思議な学校も面白い箇所や遊び心が多いですし、キミのねも言葉遊びをよくするので、そこをリンクさせたいなと。韻を踏みながら、みんなが口ずさみたくなるような曲に、と思いました。

【久下】 やっぱり映像を見せていただいたのが大きかったです。こういう感じでここに(曲が)入ってくるというのが分かったので。(オファーの段階で)こういうイメージでというリクエストもありましたし。

魔導物語は昔からのファンの方とこれからの方がいるというところで、音楽も(そうした世代の幅が)けっこうあるじゃないですか。なのでサウンド面では、アコースティックギターやスライド奏法のように、トラディショナルな楽器や演奏法を使いつつも、“今”っぽい音はすごく意識して。歴史と今っぽさが組み合わさったサウンドになったんじゃないかなと思います。

――エンディング曲「纏うものがたり」についてはいかがでしょう?

【つむぎしゃち】 やっぱり、ゲームが終わったあとにかかるのがエンディング曲というのがずっとイメージにあったんですが、今回は新作を待っていた昔からのファンの方の気持ちをはじめいろんな感情が入り混じると思ったんです。なので、この曲はむしろ物語っぽいというか、キミのねのストーリーにも通じるような作品になったんじゃないかなと思います。

――個人的には、星空の下で走るような、世界が広がっていくイメージが浮かびました。

【久下】 楽器的にはピアノを打ち出していて、曲のはじまりと終わりに入れたりというところはすごく意識しましたね。疾走があるけれども雄大な感じ、心に留められるようなリズムというか。走っているよりは、ある場所に立って見える景色だけがぐるぐると動いていくぐらいの疾走感が合うんじゃないかなって。僕らがいただいたゲームの資料を読んでも、その方がいいなと思いました。


――キミのねのサウンドでは、大谷さんのバイオリンも欠かせない要素です。ストリングスでのアプローチで今回意識したポイントは?

【大谷】 私はいつも久下さんからデモのOKをいただいて、そこから合いそうなフレーズを考えていくっていう感じなんですが、アソベンチャーはアコギが映える曲だったので、ちょっとカントリー要素を入れてみようかなと。

もともと私は民族音楽系がすごく好きで、ケルトやカントリー、ブルーグラスのような響きがかなり好みだったので、アコースティックで弾むようなサウンドと言ったらカントリーかなと。J-POPとかクラシックにはない“こぶし”っぽいような装飾音を入れてみたり。スライドギターも入っていたので、バイオリンにはフレットがないことを活かしてスライドの真似みたいな音で、いろんな音域を自由に行き来する感じで希望を胸に進んでいくイメージを表現しようかなと思いました。

――今回のインタビューには、本作のプロデューサー兼ディレクターの安井光さんにもお越しいただきました。安井さんは出来上がった楽曲にどんな印象を持ちましたか?

【安井】 オープニングを先にいただいたと思うんですが、「ぴったりだなぁ」と。学校の明るい風景が思い描けるような形でしたし、新しい主人公が活躍していくような世界観が見えたような感じもしたので、すごくよかったです。

【つむぎしゃち】 ありがとうございます!

プロデューサーも気づかなかった!?遊び心満載の歌詞


――キミのねはこれまでも実在の作品に楽曲が起用されていますが、オープニングとエンディング両方を同じ作品で担当するのは今回が初ですか?

【大谷】 そうですね。架空の作品でもやったことがなかったですね(笑)

――2曲のリンクというか、アソベンチャーと纏うものがたりで歌詞に使われるモチーフを意図的に重ねているようにも感じました。

【つむぎしゃち】 めちゃくちゃリンクさせよう!というわけではないんです。やっぱり私の中で、すごく昔に魔導物語で遊んでいて、新作を待っていた人たちの気持ちも考えていて、そこから「また会えた」という言葉が(どちらの曲にも)けっこう出てきたなと思います。

――時計に関係するワードが出てくるのも再会のイメージなんですね。アソベンチャーの歌詞に「キミのね」が隠れていたりと言葉遊びも多いですが、他にはたとえばどんな仕掛けが?


【大谷】 纏うものがたりは魔導物語にかけていると同時に、「惑う」ともかけていたり。(歌詞でいうと)“チクタク塔”は?

【つむぎしゃち】 纏うものがたりの“チクタクときがたち”というフレーズが、“チクタク塔”に聞こえるっていうのがあるんです。

【安井】 ああ、そうなんですね。ゲーム中にあるんですよ、チクタク塔ってダンジョンが。纏うものがたりと魔導物語は分かったんですけど、それは気づかなかったな(笑)

――お話を聞いていてかなり楽しく制作されたかなと感じたのですが、一方で苦心した点やこだわったポイントはありますか?

【大谷】 エンディングのバイオリンを入れるとなった時に、ある意味で“エンディングらしさ”をあんまり作りすぎたくないというか、(ゲームのエンディングを迎えても)この先にもまだ世界が広がっているというのは残したいよねっていう話が3人の中でも出ていて。

さっきバイオリンにはフレットがないって話をしましたが、その分すごく長い音域をだんだんギュイーンと上がっていくような効果音を出せるんですね。そうした音をたびたび入れたり、ラストもなんか「ラ・ド・ミ・ラ」ってだんだん音が高くなっていく形で終わってるんですけど、これはそういう音域で「これからもまだ登っていって、成長していく」みたいな余地を残そうかなと。そういう部分は音形などですごく意識しました。

【久下】 そうですね。続いていくゲームだと思うので、最後は締めない。「ジャンジャン」で終わらないようなところはすごく意識した。終わったあともまだ絵が動いている感じが残せるようなエンディングにしました。

――つむぎしゃちさんはいかがでしたか?

【つむぎしゃち】 とても楽しく作らせてもらったので苦労というのはそんなになかったんですけど、アソベンチャーを作る際にすごく自分の記憶に残っていることがあるんです。

いつもは歌詞を作る時に、曲中のどこかの一行から作っていくんですけど、アソベンチャーでは「“僕”が“僕ら”になる旅だ」ってフレーズが一番最初に出てきて。それはゲームのストーリーもそうだし、私たちキミのねが出会ったのもそうだし、一人だったものが“僕ら”になる。このフレーズが出てきた時に「これだ!」と思って、そこから歌詞を膨らませていった感覚があります。サビ以外でこうなるのは初めての出来事でした。

【大谷】 歌詞すごい好きですね。RPGの本質にもつながります。仲間とか武器とかいろんなものを集めて。

【久下】 本当に僕らもそうですね。(歌詞と)リンクしてる。

ライブのセットリストにも内定!「大事な、大切な曲」


――リンクという言葉がありましたが、纏うものがたりのMVも魔導物語とつながる部分があるそうですね。

【つむぎしゃち】 ゲームの舞台が古代魔導学校なので、MVも学校をコンセプトにしています。

――MVを拝見しましたが、MVに描かれる内容もどこかゲームのクエストを彷彿とします。

【つむぎしゃち】 (ロケ地となった)学校の協力のもと、150人と本当にたくさんの生徒さんに参加していただいて作りました。かなり壮大な作品になっているので、こちらもゲームをやったあと、一緒に楽しんでもらえたらうれしいです。

――楽曲単体に留まらないさまざまな結びつきが感じられます。そんな2曲を、キミのねの皆さんはどんな作品になったと感じますか?

【つむぎしゃち】 私たちはワンマンライブというのをまだやったことがなくて、でも作っている最中から「これはライブならこの順番だよね」みたいな話をけっこう喋っていたので、ライブとかではかなり重要な曲になるんじゃないかなと思います。

【久下】 なるだろうね、なると思う。インタビューでは言えないですけど(笑)、この曲は(セットリストの)ここだよね、って決まっている感じです。

【大谷】 私たちにとっても大事な、大切な曲ですよね。

――インタビュー後編の最後に、キミのねの3名からそれぞれメッセージをお願いします。

【久下】 曲だけ聴いていただくのもすごくうれしいですけど、やっぱりゲームをやりながら聴いていただくと、この曲の真価、一番伝わってほしい部分が伝わると思うので、ぜひゲームで僕たちの曲を聴いていただけるとうれしいです。

【大谷】 このタイミングで言うのが正しいのかわからないですが(笑)、実はゲーム中にアソベンチャーと纏うものがたりのインストバージョンがBGMとして使われています。BGMってたとえば香水のように、通り過ぎた時にふといい香りがするような立ち位置なのが何かいいなと思っているので、どこにインストが使われているかを探していただくというより、ゲームに夢中になっているうちに「あれ?もしかして今の……」と、振り返ってみてもらえたら一番うれしいなと思います。

【つむぎしゃち】 オープニング曲のアソベンチャーには「何回だって僕ら巡りあおう」というフレーズがあります。魔導物語が昔から好きだった方も、フィアと不思議な学校で好きになった方も、キミのねがきっかけでゲームを知った方も、ゲームがきっかけでキミのねを知った方も“いろんな場所から出会う”ということが、このゲームをきっかけにどんどん広がっていけばうれしいです。

(C)IDEA FACTORY/COMPILE HEART/STING
(C)D4Enterprise Co.,Ltd.
(C)SEGA
※「魔導物語」はD4エンタープライズの登録商標です

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