悪い子は鬼に連れて行かれて毎日酢を飲まされる?伝承・迷信だらけのクリスマスを大解剖【作者に聞いた】
作画:尾花せいご
(@seishoobi)
さんと監修:西洋魔術博物館
(@MuseeMagica)
さんによる創作漫画「放課後おまじない倶楽部」は、迷信研究部に入部した少年と、不思議な雰囲気が漂う顧問との日々を描くオリジナル作品だ。
緻密で精細な絵とノスタルジックな絵柄に定評のある尾花さんの作画と、西洋魔術や西洋の魔物、伝承、迷信などの著書多数の西洋魔術博物館さんが監修した多彩な迷信やおまじないのエピソードが大きな魅力となっている同作。エピソードの紹介とともに、監修の西洋魔術博物館さんに作品内で描かれる伝承について詳しい話を聞いた。
クリスマスマーケットは迷信・伝承の宝庫?
西洋に古くから伝わる迷信や伝承を現代日本で実践してみようという奇妙な部活動「迷信研究部」に入部した栗丸君。顧問・雨野に連れられてやってきたのは、クリスマスマーケット。よい子にプレゼントを渡すサンタクロースという存在は、まさに迷信・伝承の王様とも言えるだろう。




監修・西洋魔術博物館さんに聞くクリスマスと迷信
――クリスマス時期における迷信で、一番好きな迷信は何ですか?
【西洋魔術博物館さん(以下、西洋魔術博物館)】やはりヤドリギの下でキスをする習慣ですね。クリスマスパーティー会場の目立たない場所にヤドリギを飾っておいて、偶然にその下に立つ人をキスで祝福するわけです。キスされた人は一年間の幸運が続くのです。わざとヤドリギの下に立つ人は嫌われるというのもポイント高いです。









――聖ニコラスがオランダ語で「シンタクロース」になり、それがアメリカで「サンタクロース」と発音されるようになった、という経緯があるようです。クリスマスに対する向き合い方も、ヨーロッパとアメリカとでは異なるのでしょうか?
【西洋魔術博物館】ヨーロッパでは聖ニコラスという具体的人物を中心に伝承が展開される一方、英国ではクリスマスそのものを擬人化したファーザー・クリスマスが描かれます。両者がアメリカで合体した結果がサンタクロースというところなのでしょう。クリスマスとの向き合い方は突き詰めるとプロテスタントとカトリックの差異になってしまうので、短いスペースではとてもとても。




――よい子にしているとプレゼントが与えられ、悪い子だと悪鬼に連れて行かれてしまう。こういった迷信は親が子どもをしつけるうえでも一定の役割を果たしたのではないかと思われます。迷信にはそういった側面も多いのでしょうか?
【西洋魔術博物館】迷信というか都市伝説というか、悪い子は人さらいにさらわれて曲馬団に売られて毎日酢を飲まされる系のお話は多いです。この種の脅かしが日常的にささやかれる一方、特定日に具体的な悪鬼クランプス(山羊顔の悪魔の姿をしていて、悪い子を地獄に連れていく)あるいは「なまはげ」として顕現してくるのも興味深いところ。教育的効果はよくわかりません。





――クリスマスマーケットの一番の見どころを教えてください。
【西洋魔術博物館】昔の記述によりますと、12月24日夜、だんだん人もいなくなり、商人たちが売れ残った品をまとめて雪のなかをぽつりぽつりと消えていく――その寂寥感がよいのだそうです。また孤独な人がひとときの暖かさを求めてマーケットにたたずみ、闇に呑まれていくのが美しいとのこと。このあたりは個人の好みということで。




――クリスマスマーケットは、開催国ごとによって様相も異なるのでしょうか?
【西洋魔術博物館】もともとドイツ各地で行われていた期間限定、露店中心のイベントです。現在では各国大都市の有力アトラクションとして運営されることが多いわけで、特徴はお国柄次第ということになりましょうか。





――「トナカイの名前を夜空の下で唱えるとなにかいいことがある」という迷信が登場しました。どんないいことが起こり得るのか、お話はあったりしますか?
【西洋魔術博物館】子供たちが8頭のトナカイの名前を記憶して唱えた結果、9頭目の「ルドルフ」が登場したともいえます。新しい夢が生まれる、あたりでどうでしょう?
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