【オカルト漫画】馬の頭蓋骨をかぶって踊るウェールズの奇習を実践。謎の歌声に学校中がパニックに!【作者に聞いた】
作画:尾花せいご
(@seishoobi)
さんと監修:西洋魔術博物館
(@MuseeMagica)
さんによる創作漫画『放課後おまじない倶楽部』は、迷信研究部に入部した少年と、不思議な雰囲気が漂う顧問との日々を描くオリジナル作品だ。
緻密で精細な絵とノスタルジックな絵柄に定評のある尾花さんの作画と、西洋魔術や西洋の魔物、伝承、迷信などの著書多数の西洋魔術博物館さんが監修した多彩な迷信やおまじないのエピソードが大きな魅力となっている同作。エピソードの紹介とともに、監修の西洋魔術博物館さんに作品内で描かれる伝承について詳しい話を聞いた。
馬の頭蓋骨をかぶって踊る新年のおまじない?
西洋に古くから伝わる迷信や伝承を現代日本で実践してみようという奇妙な部活動「迷信研究部」に入部した栗丸君。クリスマスが終わり、新学期に入ったが、ミステリアスな顧問・雨野先生の迷信実践は止まらない…。




監修・西洋魔術博物館さんに聞く、ウェールズの奇習「マリルイド」
――今回は、ウェールズの奇習「マリルイド」がメインになるお話でした。馬の頭蓋骨を使った獅子舞みたいなもののようです。この風習の意味や、歌について解説をお願いします。
【西洋魔術博物館さん(以下、西洋魔術博物館)】マリルイドは歴史も起源も諸説あって真相は不明としか言いようがありません。18世紀末頃から行われていたようです。マリルイドという言葉も、「聖女メアリー」の意とする説、「灰色の雌馬」とする説などいろいろです。英国ではクリスマスシーズンになると「ママリー(mummery)」という仮面劇を上演する一座がお屋敷を訪問してお金を稼ぐ伝統があり、マリルイドもその一種と見なす向きもあります。
マリルイドの歌はウェールズ語で「さて罪なき友よ、まかりこしたるわれらに一曲歌わせたまえ」くらいの意味です。




――マリルイドの材料はどうやって集めているのか気になりました。骨は本物なのでしょうか、あるいは似せて作ったモノなのでしょうか?
【西洋魔術博物館】馬の頭蓋骨は昔の英国にあってはそう珍しいものではなく、比較的入手が容易だったはずです。おもしろい使い方としては、教会の床下にぎっしり並べて反響材にする例も報告されています。子ども向けにペーパークラフトの要領でマリルイドを作る場合もあるようです。






――ウェールズ地方での普及率はどれくらいなのでしょうか。身近な行事なのでしょうか?
【西洋魔術博物館】印象としては19世紀初頭ですでに「奇習」というとらえ方をされていたようです。ウェールズの一部で伝承されていて、20世紀半ばでほぼ見られなくなったのですが、最近になってBBCの記録映像などをもとに有志が復元・実行中というところでしょう。





――マリルイドと獅子舞に共通点があったように、ルーツが繋がらなさそうなのに、共通点のあるおまじないやお祭りはほかにもありますか?
【西洋魔術博物館】1月15日にお正月のしめ飾りをお焚き上げする左義長(どんど焼き)。2月2日のキャンドルマスまでにクリスマスツリー等の飾りをきちんと処分しないとゴブリン化するという英国の伝承。ともに聖なる飾りの変化あるいは悪用を防ぐ意図があるように思われ、興味深いです。








――西洋魔術博物館さんにとっての、クリスマス時期の一番好きな迷信を教えてください。
【西洋魔術博物館】迷信といってよいのか、クリスマスの晩、牛やロバが人語をひとことだけ話すという伝承があります。笑い話に近い部分もあり、牛に「おまえ、言葉をしゃべるのか?」と尋ねると、「はい」と返事をしてそれっきりしゃべらないとか。





――「クリスマスに豆を食べないとロバになってしまう」という小ネタで出てきた迷信がおもしろかったです。どの地方で信じられている迷信で、どのような経緯があって迷信になったのでしょうか?
【西洋魔術博物館】これは自分がロンドンで聞いたことがあるもので、典拠はありません。おそらく好き嫌いをいう子どもへの脅しの類ではと思っています。『ピノキオ』に悪い子がロバに変えられる話がありますし。あるいはエピファニー(公現節)に行われる王様ゲーム(豆を一つ粒入れたケーキを焼いて切り分け、当たった人がその日の王様)の誤伝承か。





ウェールズの奇習「マリルイド」に始まり、クリスマス明けから新年にかけての迷信・伝承を紹介してもらった。情報社会となった現代では考えられないような迷信も、当時の人々が本気でそう信じていたものもあると考えると、ワクワクしてしまう。









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