『ガンダム ジークアクス』が令和・昭和世代の“架け橋”に Z世代が語る「ファースト再発見」の理由

『ガンダム』シリーズを制作してきたサンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)と、『エヴァンゲリオン』シリーズで知られるスタジオカラーが初めてタッグを組んだ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下、ジークアクス)は2025年1月17日に劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』が公開され、興行収入33億4014万円、動員202万人(3月30日時点、興業通信社調べ)を記録する大ヒットを達成。2025年4月8日からは日本テレビ系でTV放送がスタートし、Amazon Prime Videoでも4月9日から国内最速配信、Netflixなど他のプラットフォームでも順次配信が始まる。

2025年4月8日より放送開始!TVシリーズ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(C)創通・サンライズ


IF展開による斬新なMSデザイン、シャア・アズナブルとシャリア・ブルの“マブみ”、米津玄師さんの主題歌「Plazma」が織りなすスタイリッシュなビジュアルと音楽でSNSが沸騰中だ。伝統と革新、破壊が融合したジークアクスは、Z世代にどう映ったのか? この「化学変化」によって起きたファーストガンダム視聴への流れと新たなファン層の誕生を、10代の絵師見習い・たぬきちさん(@Tanukichi_mingo)の声とともに探る。
※なお、この記事は『機動戦士ガンダム ジークアクス』のネタバレを含みますのでご注意ください。

エンタメ業界で人気「マルチバース」手法


TVシリーズの『ジークアクス』は、2025年4月8日から日本テレビ系で毎週火曜24時29分にTV放送がスタート。Amazon Prime Videoでは4月9日より国内最速配信が始まる話題作だ。監督は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の鶴巻和哉さん、脚本は榎戸洋司さんと庵野秀明さんが担当し、サンライズとスタジオカラーによる初の共同制作が実現。ストーリーは宇宙世紀を舞台にした仮想戦記で、ジオン軍のシャア・アズナブルが赤いガンダムに搭乗する衝撃のIF設定が象徴的な要素となる。劇場先行版『-Beginning-』では、前半がファーストガンダムのパラレルワールド、後半が独自展開へと突入し、視聴者を新たなガンダムの世界へ引き込んだ。

このマルチバースの手法は、既存のIPを再解釈し、新たな物語を生み出すエンタメ界のトレンドだ。アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年公開)では別次元のスパイダーマンが集結し、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年公開)では過去改変が物語を牽引。ゲームでは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(任天堂)が勇者の勝利と敗北の分岐を描き、その後のシリーズでも分岐ごとに異なるタイトルが制作されている。ジークアクスは、ガンダム史に刻まれた宇宙世紀を大胆に再構築することで、46年の伝統を守りつつ革新を打ち出し、ファンに新鮮な驚きを提供した。

「Z世代」「女性」「古参のガンダムファン」を全方位で狙い撃ち


ジークアクスはZ世代、女性、古参ガンダムファンを巧みに捉えた。Xでは「演出と音楽がハイテンションで一気に引き込まれた」(@Shachiku_Ugu)と反応。米津玄師さんの「Plazma」が流れるクライマックスや、スタジオカラーらしい流麗な作画がZ世代に刺さる一方、シャアとシャリア・ブル(通称「緑のおじさん」)のバディ関係が「若くて野望に満ちたシャアとバディになっていくシャリアブルも若くて真っすぐでなんだかドキドキしてしまう」(@maruimaruico)と好評だ。

ストーリーで頻出する「マブ」というキーワードは、女性ファンにも共感を呼んでいる。「シャアとマブしていた頃のシャリアブルをもっと見たい 片目隠れおじさん」(@atltax_00)、「シャアとシャリア・ブルは本物のMAVじゃなかったとしてもマブではあってほしいよ」(@iphone127810)などの声が上がった。

さらに、前半のIF展開は「ファーストをリスペクトしたオマージュから効果音も構図も同じ(@CycleKobo)、「ファーストファンへのサービスがごりごりに盛られた神作品で完全に俺得でした」(@hannibaltic)などと古参ファンを唸らせた。

そんな同作について10代の絵師見習い・たぬきちさんは「もともとガンダムに興味なかったけど、父に誘われてジークアクスを観に行きました。ビジュアルの新しさやコンパクトな構成は若者に刺さるなって感じました。Xで描いたネタ絵にも反応があって、同世代にも観てほしい」とコメント。スタイリッシュさと伝統の融合が、各層に異なる形で響いているのだ。

「ビデオ戦争」お父さん世代がビデオの規格を語りだすと止まらない?たぬきちさん(@Tanukichi_mingo)


ジークアクスが突破した「初代視聴の壁」


ジークアクスは、若者に1979年放送の『機動戦士ガンダム』(以下、ファースト)を再発見させる「化学変化」を引き起こした。これまで初代は、「作画の古さ」「昭和の時代感覚」「複雑な設定」という三重の壁で若者から敬遠されがちだった。だが、ジークアクスはファーストを視聴することで理解が深まり、楽しさが倍増する構造を持ち、新規層や過去作を避けてきたファンに視聴する「動機」を与えた。Xでも「ジークアクス上映後に見始めたファースト43話完走した感想は、絵が古くてもシナリオが面白いからどんどん引き込まれてしまった このままZも見ていく」(@yoikono_ofuro)との声が上がっている。

その点についてたぬきちさんは「ジークアクスを観たあと、ファーストガンダムを見始めました。最初は作画が古いとか思ったけど、『こいつ動くぞ!』や『若さゆえの過ち』といったミームの名台詞が出てきて楽しくて。スレッガーさんの“波止場ポーズ”とか笑えるし、戦争なのにキャラの成長や人間味がすごい。ジークアクスがなかったら観ていなかったです」と振り返る。ジークアクスが初代への橋渡しとなり、新たなファン層を育んでいる。

ネットミーム化された“ガンダム文化”を若者が再発見する「化学変化」も


ジークアクスは若者にファーストガンダムを再発見させたが、課題も浮かんでいる。Z世代に刺さるスタイリッシュさが「ガンダムらしくない」と伝統派から批判される一方、「長いし複雑」と初代視聴を途中で諦める若者もいる。新旧ファンを繋ぎ、視聴を支える工夫が求められる。

それでも未来は明るい。マルチバースを武器に、意外なキャラクターが主役となるストーリーや別の英雄譚が展開される可能性もある。たぬきちさんは「ジークアクスがもっと過去と繋がったら面白い」と期待を寄せる。また、若者が「スレッガーさんの波止場ポーズ」を笑いものにしつつ愛でる姿や「マ・クベの壺」のネタにハマっていく様子も見受けられ、“ガンダム文化”の令和流再定義を示しているかのようだ。

『エヴァンゲリオン』(1995年放送)が『ウルトラマン』(1966年放送)、『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)などへのオマージュから生まれたように、ジークアクスはファーストへの敬意を詰め込みつつも、新たなエンタメ作品として“今期の覇権作”と話題となっている。

たぬきちさんは『ターンエーガンダム』(1999年放送)のキャラクターデザイン、『ガンダム Gのレコンギスタ』(2014年放送)のGセルフデザインを手掛けた、あきまん(安田朗)さんをSNSで見つけ、「話についていきたいなと思ってガンダムを履修することにしました」とガンダムをきっかけに両者の親交が深まったことを明かしている。今まさにジークアクスが世代を超えた“架け橋”となっており、その新たな化学変化が、ガンダムをめぐる「推し活」をどこへ導くのか注目だ。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』TV Series Promotion Reel


取材協力:たぬきちさん(@Tanukichi_mingo)
(C)創通・サンライズ

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