映画『この夏の星を見る』完成報告で天体観測会!桜田ひより、水沢林太郎、中野有紗が新宿バルト9から望遠鏡で星を見る
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直木賞作家・辻村深月さんの同名小説を原作とした映画『この夏の星を見る』が、2025年7月4日(金)に全国公開する。本作はコロナ禍の2020年を舞台に、中高生たちが天体観測を行う競技「スターキャッチコンテスト」を独自にはじめるという青春ストーリー。

2025年5月28日、映画の完成報告を兼ね、新宿バルト9の屋上ヘリポートで天体望遠鏡を用いて作中同様の星空観測会が行われた。観測会には主人公の「溪本亜紗」役を演じる桜田ひよりさん、「飯塚凛久」役の水沢林太郎さん、五島列島の高校生「佐々野円華」役の中野有紗さんの出演者3名と、山元環監督、そしてゲストとして岡村典夫教諭が登壇した。

茨城・東京・長崎五島列島それぞれの撮影秘話
茨城・東京・長崎五島列島の3カ所を舞台に、離れていながらもオンラインでつながりながらスターキャッチコンテストに挑む姿を描いた同作。桜田さんと水沢さんは茨城県で、中野さんは五島列島で撮影に臨んだ。

水沢さんは、東京の夜空と比べて「(茨城は)こんなに明るくはなかったですし、こんな高いところから夜空を見ることもないので、まずそこに感動しています」とその違いを話す。また、茨城での撮影時は「山の中で撮影があった夜、ホテルから見上げたときはいっぱいの星や星座が見えて、その感動は今でも覚えています」と、同じ関東でも異なる星空のエピソードを語った。
また、桜田さん演じる溪本亜紗と、水沢さん演じる飯塚凛久の2人が通う作中の砂浦第三高校は、原作小説でモデルとなった茨城の高校を実際にロケ地として使用。桜田さんは「モデルになった高校を使わせていただくことってなかなかなく、本当に多くの方にご協力いただけて、実現することができました。なかでも、撮影の小道具としてではなく、(ロケ地の高校の)生徒のみなさんが作った望遠鏡や材料が置いてある状態の撮影だったんですね。作りものじゃない、本当に皆さんの思いがこもった教室で撮らせていただいたので、そこに懸ける思いが違いました」と撮影時の“気づき”を語った。

一方、長崎・五島列島での撮影はナイトロケが多かったという中野さん。「夜の山の上は本当に真っ暗で、その中で星を見たときに『星ってこんなに近いんだ』って感じて。手を伸ばせば本当に届きそうなくらい近かったです」と、五島の夜景を振り返る。

また、撮影を通して初めて五島に足を運んだ中野さんは「山と海と空と、本当に美しい自然に感動したのを覚えていて。こういうのどかな環境で、私の演じた(佐々野)円華という子がどんな風に育ったのか、生い立ちもいろいろ考えて想像しながら発見した部分もありました」と撮影エピソードを明かした。
そんな本作では、「デイ・フォー・ナイト」という、日中の映像を夜間のように見せる疑似ナイターと呼ばれる手法で星空を撮影していったと山元監督は話す。

「太陽を月明かりに見立てて、日中に夜を撮るみたいな撮影をしていったんですけれど、日本映画のなかでは、全編を通してこの撮影方法で撮っているものも少ないらしく」と、映像としての本作の見どころを挙げた。
「すごく取り残された感覚」「自分の興味を育てる時間」コロナ禍を振り返る
さらに、同作のキャッチコピー「2020年、あの時を生きた君たちへ。」に触れ、3人の出演者に当時を振り返っての心境も明かされた。
溪本亜紗同様、2020年当時高校生だった桜田さんは「文化祭や体育祭、部活で周りのみんなが本当に頑張って目指していたものが中止になってしまったことが多くありました。私は学校行事もそうですけど、作品作りの途中でコロナ禍になって自粛をしていたので、自粛が明けてからフェイスシールド越し、マスク越しにみなさんと一緒にお芝居を交わす時間がなんとも不思議な感覚になったのを今でも覚えています」と述懐。

水沢さんは本格的に俳優活動に注力しようというタイミングでコロナ禍を迎え、「目の前にある仕事が何もなくなってしまって。すごく取り残された感覚が強い。その気持ちも今みたいには伝えることもできず、抱え込む一方でした」と当時を振り返った。そして2020年を舞台にした本作を通して、マスクをしたり手指消毒したりって日常だったものを、だんだん忘れている自分がいることに、この作品を通してふと気づいた」と話した。

2020年当時、中学生だった中野さんは「中学最後の思い出がすべてなくなってしまったので、悲しさだったり悔しさがあるんです」と当時の心境を語りながらも、「その間、私は自宅で家族と一緒に昔の映画をたくさん見ていて、今思い返すと悲しい思い出だけじゃなくて、自分の興味を育てる時間だったのかなとも思います」とコロナ禍があったからこその経験を挙げた。
岡村先生を招いての星空観測会
そして、いよいよ天体観測会がスタート。ここで、作中に登場する高校のモデルとなった土浦第三高等学校で科学部顧問を務める岡村典夫教諭が登場した。岡村先生は原作から登場する天文部顧問・綿引のモデルにもなっており、天文学に造詣が深い人物。
観測会当日はちょうど新月の時期で、月もなく肉眼で見える星は唯一、うしかい座の一等星「アークトゥルス」だけ。この星は作中で亜紗と凛久の茨城チームが望遠鏡で捕まえた星で、その名前を聞くやいなや「ああ!懐かしい」と、凛久を演じた水沢さんが顔をほころばせる一幕も。

岡村先生は、5月末から6月にかけての東京の星空について「(アークトゥルスのように)明るい一等星はもちろん見えますし、三等星ぐらいまでは意外と見えます。それから二重星(※極めて近くにあるため肉眼だと一つの星に見える二つの星)というのがありまして、色の違うものがあったりしてこれがきれいなんですよ。これは東京でも十分観測が可能です」とレクチャー。岡村先生は大島小松川公園のような都内の公園でも天体観測会を行っており、望遠鏡を使えば東京でもさまざまな星を眺めることができるそうだ。

そうした中、桜田さん、水沢さん、中野さんは作中のキャラクターさながら声を掛け合いながら望遠鏡をセッティング。最初に望遠鏡を覗いた中野さんは「ど真ん中に入ってます!」と興奮気味に報告、続いて水沢さんは最初は見つけられない様子も、目で捉えた瞬間「いたいたいた!」と歓声を上げた。順番が回ってきた桜田さんは「見えました。とってもきれいだ!」とアークトゥルスの輝きを教えてくれた。
「見えないものを見ようとした人たちの物語」
イベントの最後は、山元監督と桜田さんからそれぞれメッセージが送られた。
山元監督は「この作品自体が、見えないものを見ようとした人たちの物語でございます。今、目の前にあるこの望遠鏡自体も、肉眼で見えない星を捉えようとした装置でございます。コロナ禍の中、先の見えない不安の中でも、自分自身を見つめ直して先を歩いていこうとする学生たちの物語なので、どうかそういうキャラクターたちとともに、この映画を皆さんに愛していただけたらなと思っております」とコメント。

桜田さんは「この作品を見終わった後、私は本当にきれいで美しいな、と思いました。それは映像の美しさだけではなくて、人と人とのつながりの美しさだったり、リモートを通して全国の学校とつながる一瞬一瞬の輝きというものが、繊細にきれいに、そして迫力のあるシーンに完成されていると思います。コロナのときに学生だった皆さんや、それを見守ってきた大人の方々にも刺さる、そんな素敵な作品だと思っています。ぜひ劇場で足を運んでいただけたらいいなと思います」と締めくくった。


【本予告】映画「この夏の星を見る」2025年7月4日(金)公開
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