「俺の家族を頼んだぞ」ゾンビだらけの世界で、黒い柴犬に思いを託した父親の思いとは?【作者に聞いた】

元ゲーム会社所属デザイナーで、現在はストーリー漫画をメインに執筆している吉良いと(@kilightit)さん。個人で作品を公開・販売するほか、商業誌にも作品を掲載するなど、精力的に活動している漫画家だ。代表作『ようこそ亡霊葬儀屋さん』は、「このお話ほんとに好きです」「1度見た事あるはずなのに泣いてしまった」など、多くの読者に感動をもたらしている。

今回は、『家族を求めて終末世界を旅する男と黒柴』をお届け。舞台は謎のウイルスによってゾンビ化した人間がうろつく未曾有(みぞう)の世界。離れて暮らす妻・菜月、娘・雪子と少しでも早く再会したい風太は、街で偶然出会った黒い柴犬・ハナと協力しながら日々を必死に生き抜いていた。彼がなぜ急いでいたのかというと…。

世界がこのようになる直前、風太は仕事を理由に娘の誕生日を忘れてしまい、あきれた菜月は雪子を連れて実家に帰ってしまっていた。反省した風太は二人に謝り、家族で誕生日会を開こうと決意するのだが、その矢先にゾンビ化した女性に腕をかまれてしまった。

もし世界が元通りになったら、娘の成長を見たい。したいことがいっぱいあったのにと涙する風太の体を、ウイルスは確実に支配し始めていた。彼はある日、ハナを見て「うまそう」という言葉が脳内を埋め尽くすようになっていることに気づく…。

“誕生日プレゼントを娘に届けてほしい”とハナに伝える風太。早くハナと別れないと、ハナを食ってしまう…。「オレの家族を頼んだぞ」「今までありがとうな」。そう告げると、風太は両手を広げ、襲い来るゾンビを一手に引き受ける。そんな風太の思いを察したのか、ハナはその場から全力で逃げ出すのだった。

それから2年後、日本の暑い夏を乗り越えられなかったゾンビたちは壊滅。無事に生き延びることができていた雪子の首元には、風太が贈ったネックレスがあった。家族写真に写る風太に話しかける雪子。「いつかちゃんとパパを見つけに行くからね」「その時は私の新しい家族を紹介するから!ねっ、ハナ!」。

X(旧Twitter)では「涙なしでは見れない」「近くに同僚もいるのに泣いてしまった…」「読む度に泣いてまう」など、感動した読者からたくさんのコメントが寄せられている。感動のストーリーはもちろん、登場シーンですでに風太の腕に包帯が巻かれているといった、細かな描写・伏線もあわせて楽しんでほしい。
作者の吉良いとさんに、この作品に対する思いを聞いてみた。
「このお話は、当時私がパニックものの漫画を描きたかったことと動物を描きたかったことがかけ合わさってできた漫画です。黒柴のハナちゃんは友人の愛犬がモデル。資料のためにたくさん写真を撮らせてもらいました。劇中でハナちゃんが、飼い主に似た背格好の女性についていってしまう場面は実際に友人の愛犬が行っていたことです。その姿がかわいくて切なくて、『漫画でも描きたい!』と思いました。そういったハナちゃんの愛しい姿にも注目していただけるとうれしいです。」
画像提供:吉良いと(@kilightit)
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。