【オカルト】「刑に処された罪人の歯を盗んでお守りにするとよい」昔は信じられていた、奇妙奇天烈な願掛けの世界【作者に聞いた】

作画:尾花せいご (@seishoobi) さんと監修:西洋魔術博物館 (@MuseeMagica) さんによる創作漫画『放課後おまじない倶楽部』は、迷信研究部に入部した少年と、不思議な雰囲気が漂う顧問との日々を描くオリジナル作品だ。

緻密で精細な絵とノスタルジックな絵柄に定評のある尾花さんの作画と、西洋魔術や西洋の魔物、伝承、迷信などの著書多数の西洋魔術博物館さんが監修した多彩な迷信やおまじないのエピソードが大きな魅力となっている同作。エピソードの紹介とともに、監修の西洋魔術博物館さんに作品内で描かれる伝承について詳しい話を聞いた。


7話P1-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P1-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


迷信研究部の顧問・雨野先生に恋心を抱く茶園さんは、実はアーチェリー部で活動していた。迷信研究部(あるいは雨野先生)の存在に気づく前に、入部してしまったからだ。でも中途半端なことは心が許さない…!茶園さんは「この大会で自己新記録を出す!」と意気込んでいた。彼女が新記録を出したいと願う、その理由とは一体…?

7話P2-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P2-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P3-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P3-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P4-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


監修・西洋魔術博物館さんに聞く「世にも奇妙な願掛けの世界」

――「すきなモノをガマンすれば願いが叶う」という茶園さんの願掛けが登場しました。いたってシンプルな願掛けですが、この効能の程度や由来などあれば教えてください。

【西洋魔術博物館さん(以下、西洋魔術博物館)】願掛けの際の「〇〇断ち」は神仏の注意を引くための方法と考えられています。代表的なものとしては「五穀断ち」、さらに「お茶断ち」。ハンガーストライキみたいなものかと。願いをかなえてもらうにはなんらかの代償を差し出す必要があるわけで、「〇〇断ち」によって自分の願心のほどを知ってもらうという発想でしょう。

7話P4-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P5-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P5-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P6-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P6-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P6-3漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


――願掛けの定番として紹介されているのが「流れ星を見たら3回願い事を唱える」や「青い鳥や四葉のクローバーなど珍しいものを見つけると幸せになれる」でした。流れ星が見えてから消えるまでは一瞬であるため、その間に3回唱えられるほど常に頭の中にある願いは、おのずと行動にも移している可能性が高く、願いは叶えられやすい、みたいな話を聞いたことがあります。このポピュラーな願掛けについて解説をお願いします。

【西洋魔術博物館】「流れ星を見たら3回願い事を唱える」はケンタッキーの伝承にあるもので、より具体的には money, money, money と唱えるとあります。「カネ、カネ、カネ」はあまりに露骨すぎるので、そのあたりはすこしぼやかしておるわけです。発想としては、日常的でない一瞬には運命の分岐点があって、そこで方向性を宣言したい、と。今風にいう「フラグ」でありましょう。

7話P7-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P7-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P8-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P8-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P9-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P9-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


――「刑に処された罪人の歯を盗んでお守りにする」などの物騒な願掛けが登場しました。こういった類の狂気的で、怖い願掛けにはほかにどんなものがあるのか、またその由来について教えてください。

【西洋魔術博物館】不気味なものとしては「生物の一部を持ち歩く」が代表的でしょうか。トカゲの尻尾を乾燥させて財布に入れておくとか。アメリカではウサギの前足あるいは後ろ足のお守りが有名です。あとは肝試しと重なりますが、夜中に森に入って切株にたまった水を汲むといった恐怖克服型も多いです。

7話P10-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P10-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P11-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P11-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P11-3漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


――「おまじないは自分に自信を与える儀式のようなもの」という名言が登場しました。かなり現実的な考え方ですが、ネット検索などができず、物事を正確に知るには情報量が少なかった当時でも、同じような現実的な考え方はあったのでしょうか?

【西洋魔術博物館】ヴィクトリア朝のベストセラー、スマイルズの『自助論』(1859)などにも見られる「自分を信じてのしあがる」という発想が迷信・伝承の実行にも影響を与えていたと考えられるのです。それまで神秘的手続きであった迷信や伝承が「心理的サポートの手段」と見なされるようになっていきます。ボーム『オズの魔法使い』(1900)などではそれが顕著に描かれていますね。

7話P12-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P12-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P13-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P13-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


――2人同時に同じ言葉を言ったら「ハッピーアイスクリーム」と唱えるという迷信に加えて、「小指を絡めて、せえので詩人の名前を唱えて願掛けをする」というものが登場しました。同じ詩人の名前を言うことができたら、願いは叶う、とされています。なかなか達成確率の低そうな願掛けですが、この迷信の解説をお願いします。

【西洋魔術博物館】この願掛けは複数の文献に登場するもので、発祥はおそらく19世紀半ばのアメリカの学校周辺だと思われます。同一の言葉を同時に発した場合、指切りの姿勢から心のなかで願い事をするまではほぼ一緒ですが、そこから「シェイクスピア」と叫ぶ、「同時に詩人の名前を叫んで一致したら願いが叶う」といったバリエーションがあります。コンセプトとしては、偶然に偶然を重ねることでその瞬間の特別感を増すというところかと。

7話P14-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P14-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P15-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P15-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P16-1漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館

7話P16-2漫画=尾花せいご、監修=西洋魔術博物館


――願掛けが無事にうまくいったのか、茶園さんは自己新記録を出して迷信研究部に入部することになりました。実力なのか、たまたまなのか、願掛けがうまくいったのか明確にはわかりませんが、茶園さんは「愛の力よ!」と言っております。「愛の力」というものについてどのようにお考えですか?

【西洋魔術博物館】バレンタインの小鳥とか、キューピッドの矢とか、恋心はロングレンジから一方的に飛来する印象があります。昔の人にとっては恋愛感情は邪眼やチャームに類するものと考えられていたのかもしれません。となれば「愛の力」は「集中力」ということになりましょうか。

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