「ありがとう、また来世で」無口だった夫が死後、脳内記憶映像で妻に伝えたかったこととは?【作者に聞く】

元ゲーム会社所属デザイナーで、現在はストーリー漫画をメインに執筆している吉良いと(@kilightit)さん。個人で作品を公開・販売するほか、商業誌にも作品を掲載するなど、精力的に活動している漫画家だ。代表作『ようこそ亡霊葬儀屋さん』は、「このお話ほんとに好きです」「1度見た事あるはずなのに泣いてしまった」など、多くの読者に感動をもたらしている。

今回は、『もしも記憶が遺せたら』をお届け。亡くなった夫が、脳内記憶を映像にまとめてくれる“ブレインメモリアル”というサービスを契約していたことを娘から知らされるも、結婚生活では会話らしい会話をした記憶がなかった妻。夫の記憶映像のなかに自分はいるのか。不安を抱えたまま、夫の“ブレインメモリアル”の再生が始まった。

ところが、スクリーンに映し出されたのは若いころから現在にいたるまで、さまざまな年代の妻の姿ばかり。予想していなかった展開に困惑する妻へ、映像の中から夫が語りかける。「君と一緒になれてよかった」「今までありがとう」「もし次生まれ変わっても、俺は必ずまた君に恋をする」「何度だって見つけるよ」。

映像が終わると、「これじゃあただのラブレターじゃない」と笑う娘。その隣で、妻は薬指のリングに語りかける。「そういうのは生きてるうちに言ってくださいよ」「ありがとう…。また、来世で」。
作者の吉良いとさんに、この作品に対する思いを聞いてみた。
「この漫画はX(旧Twitter)の漫画賞に応募した作品です。テーマは『50年後の未来』でした。私は葬儀屋さんの漫画をよく描いているので、今回は「未来の葬儀」を描こう!と思いつき...。どういう技術かはさておき、自分が死ぬ時の走馬灯を一番見せたい人に届けられたらいいなあ、と。それは家族かもしれないし、恋人かもしれない。親友かもしれないし、大事なペットかもしれない。大切な存在との思い出を最後に共有できたら、こんなに幸せなことはありません。応募した漫画賞ではありがたくも一番上の賞をいただくことができました。当時この漫画を読んでいただいた皆様、ありがとうございます!」

たった6ページで夫婦の深い愛を描いた、感動の短編作品。X(旧Twitter)の投稿には「アカン、読んで一瞬で涙あふれた……」「すごく、すごくいい!」「人の想いが感じられてホロっときました」といったコメントが多数寄せられている。
画像提供:吉良いと(@kilightit)