「1年更新の現役」を貫く格ゲーレジェンド・ふ~どが描く「ゲーミング寺子屋」構想とは?【実直に訊く!YASの格ゲー夜話】

2025年8月11日、プロeスポーツチーム「REJECT」への加入を発表し、いま最も注目を集める格ゲーストリーマー・YASが切り取る連載企画「実直に訊く!YASの格ゲー夜話」。第3回のゲストに迎えたのは、10年以上の長きに渡り第一線で活躍し、2025年REJECTに加入したプロゲーマーのふ~どさんだ。

プロeスポーツチーム「REJECT」への加入を発表し、いま最も注目を集める格ゲーストリーマー・YASさん(写真左)と、レジェンド格ゲーマーのふ~どさん(写真右)


第6期 TOPANGA CHAMPIONSHIP優勝や、EVO 2025スト6部門5位タイなど、2025年もスト6のプロシーンで結果を残し続けるふ~どさん。REJECT加入による変化や、プロゲーマーとしての独自のスタンス、次世代プレイヤーに向けた「ゲーミング寺子屋」構想など、業界きっての理論派としても知られる格ゲー界のレジェンドに、チームメイトとなったYASさんが実直に迫る。

「もう1年プロゲーマー寿命が延びるな」結果を出し続けるベテランの心中


【YAS】まず、REJECTに加入した感想を教えてください。

【ふ~ど】忙しくなったなと思います。今もこうしてインタビューがあるし、いろいろ活動に厚みが出たと思います。REJECT部屋の対戦は加入前から参加していたので、そこは一緒というか、ずっと使わせてもらってありがとうございます、という感じです。

【YAS】REJECTでは自身の強みをどう活かせると思っていますか?

【ふ~ど】話すのが好きなので、こうやって話しながらゲームの攻略とか、今後のREJECTどうなのとか(笑)、なんでも話せるのが強みなのかなと思います。

【YAS】自分の視点だと、ふ~どさんは分析力だったり、言語化能力がほかの人より長けていると感じています。

【ふ~ど】どうなんだろうね。アドバイスをしている人自体が結構少ないのかなと思うんですよね。ほかの人よりは言っていると思うので、そういう評価をもらっているのはあるのかな。

「ゲーミング寺子屋」構想について語るふ~どさん


【YAS】TOPANGA CHAMPIONSHIPやEVOをはじめ、長年にわたって世界の舞台で安定して結果を残し続けているということを、ふ~どさんはどう捉えていますか?

【ふ~ど】(プロゲーマーの)引退っていつかわからないじゃないですか、引退した人も少なくて。だけど、どこかで絶対に終わりがくるって、それこそストIVのころからずっと思いながらやってきました。だから、今回TOPANGA CHAMPIONSHIPで優勝したり、たとえば来年のカプコンカップに出られるってなったときに「もう1年プロゲーマー寿命が延びるな」と思いながら毎年やっています。結果が出れば引退はないのかなって。

【YAS】「この年齢までは続けたい」とかではなくて、その年その年の自分の活躍次第で「まだやれるのか?」っていうのを測りながら。

【ふ~ど】ただ難しいのが、“自分の気持ち”と“世間の気持ち”があると思うんですよ。別に勝っていなくてもプロをやったっていいけど、世間の評価として「来年もプロゲーマーやっていいですよ」って思われるところにはずっといたいな、って思っています。

【YAS】なるほど。でも、今年の活躍で5年後ぐらいまで全然やっちゃっていいんじゃないですか?

【ふ~ど】けど、そうすると濁るじゃない。最高峰の試合が多ければ多い方が俺は楽しいと思っているんですけど、もし“そんなに強くない俺”がそこにいたら、大会の平均的な内容や価値は下がる。それは超微妙だなと思っちゃう。だからいいんじゃないですか、賞味期限短めで。

【YAS】ふ~どさんはパフォーマンスの質を求めて活動されていると思いますが、プロゲーマーとしてご自身と考え方が真逆だなって思う人はいますか?

【ふ~ど】プロゲーマー像として、ときどみたいに情熱を持ってやってもいいし、酒飲みながらやる奴がいてもいい、いろんな人がいるっていうのが価値だと思うし、俺は若者に教えたりとか好きだから自分にリソース割かなくてもいいやと思ってます。逆に言うと「これ以外は正解じゃないですよ」みたいなのは超否定派です。

ふ~どさんに実直な質問をぶつけるYASさん


【YAS】これ以外は正解じゃないよ、と言うと?

【ふ~ど】「真面目にゲームをやるべきだよね」とか。俺は「ゲームは楽しむもんでしょ」って思うし、“正解”をみんなで固定観念にするのはすごい嫌だなというか。10歳がプロになってもいいし、80歳がなってもいいと思うし。

【YAS】確かに、FPS界隈ではマタギスナイパーズ(※60歳以上のプレイヤーによるシニアプロゲーミングチーム)が話題になってましたもんね。

【ふ~ど】そういうのがゲームの魅力だなと。

強くなるために「自分がいる場所を世界最高の環境にする」


【YAS】プロとして結果を出し続けるため、1番大事にしているメンタル面のポイントはありますか?

【ふ~ど】結果ってめっちゃ難しくて、弱くても「結果は出る」じゃないですか。死ぬほど練習しても、まったく練習してないやつに負けたら「頑張ってない」扱いをされる。自分の性格的には、大会の結果ではなく俺の方がゲームうまいんだよ、俺の方が頑張っているんだよと思えていればいいと思う。

【YAS】練習方法や工夫している点では?

【ふ~ど】練習は基本的にREJECT部屋でやっています。練習は世界で1番環境がいい場所を作ることが大事だと思っています。俺は船橋のゲーセン育ちなんですが、船橋で1番になっても千葉県で1番になるには千葉で最大のゲーセンに行って1番にならないといけない。最終的には日本で1番の“新宿のゲーセン”にたどり着くんですけど、だったら最初から新宿のゲーセン行って1番になった方が早い。

自分がいる場所を世界最高の環境にすれば、ほかの人たちより絶対に上に行ける。そのなかで弱くても、世界10番目かもしれないじゃないですか。事実、世界大会でもLeSharや俺が勝ったりしていて、REJECT部屋はそうなっていると思います。


【YAS】REJECT部屋にオフラインで集まって戦うのと、同じメンバーとオンラインで戦うのとでも得るものって違ってきますか?

【ふ~ど】それがね、すごく難しくて。厳密に言うと一緒のはずじゃないですか。なんなら、来られない人と対戦できる分、オンラインの方がアドバンテージがありそうな気もしますよね。一方で、オフの環境には「情報の速さ」があると思います。ほかの人のプレイを見ていて、「え、それ何?」みたいな言いやすさや速さがオフにはあるのかなと。あとね、オフは練習の緩急がよくて。

【YAS】緩急というと?

【ふ~ど】オンって24時間営業なんです。極論を言えば、ダレてプレイしちゃっている。けど、オフだと「この時間はすごい真面目にやろう」みたい切り替えがやりやすいのも魅力の1つなのかなって。

【YAS】わかる気がします。以前REJECT部屋で22時くらいまで練習をしていて、そのとき、もけさんも隅っこで黙々とやっていたんですけど、同じ取り組みをしている人がすぐ近くにいると疲れないというか。

【ふ~ど】あと、不安も少ない。今って、自分がどれだけの強さなのかって、オフに来るまでわからなくないですか?

【YAS】いやー、わからないですね。

【ふ~ど】「正直、俺ってすごい強いけど?」みたいなのを、オフの対戦でもうボキボキ折ってくれる。そうすると今の強さがわかるんですよね。そこで練習をもっとよくしようと思うし、もし勝てたら自分の練習で正しかったんだって感じられる。オンの方が、正直ちょっと抜いてやっている人も多いと思うので。

【YAS】自分もそう思います。こればかりは形容しがたいですけど、オンとオフで自分のなかの動かしているときの手応えみたいなのが全然違うんですよ。

【ふ~ど】ちょっとドキドキ感もないですか?5先で4-4になったとき、絶対オフの方が勝ちたいと思うんですよ。負けて言い訳しにくいのもオフのいいところかも。

プロを目指す若手に投げかける「何になりたいか」の問い


【YAS】若手育成や格ゲー文化の継承を意識してふ~どさんが構想しているという「ゲーミング寺子屋」について教えてください。

【ふ~ど】俺たちは対戦したければREJECT部屋みたいな環境があるけど、若い子やほかのプレイヤーと関係値がまったくない人は環境がないじゃないですか。だから俺が教える環境があれば、そういう差をなるべく減らせるのかなと。そんなに人に構っている余裕があるのか俺は、ともなるんですけど、教えるんだったら俺が強いうちに教えたいなとも思うし、その方が言葉の信憑性もある。それと、俺は対等に話すことによってお互いが伸びたりすると思っているんです。双子やひなおはまだ10代ですけど、相手の意見も聞いて、自分の成長にもなるって部分で寺子屋っていいなと。

【YAS】なるほど。

【ふ~ど】あと、日本でストリートファイターが人気な理由もやっぱり(競技シーンが)強いからと思っていて、それをなくしたくない。もし俺たちの世代がいなくなったあとに国として最強じゃなくなって、人気が落ちちゃうのも嫌だなと思うし、ずっと(日本が)最強であってほしい。

【YAS】ゲーミング寺子屋で具体的にはどんな内容を教えたいですか?

【ふ~ど】マインドとかを教えるのは、そうでもないんですよね。なんか朝8時に起きて、みたいな。

【YAS】あはは、そういうマインド。

【ふ~ど】どっちかって言ったら試合内容で、「なんでそれをやったのか」「こっちの方がお得じゃないの」とか、そういう感じ。それをどんどん詰めていけば、結果的にすごくいいプレイヤーになると思ってます。

【YAS】ちなみにその寺子屋って、31歳の生徒って可能ですか(笑)?

【ふ~ど】全然。40歳いますもん。

【YAS】あ、本当ですか!よろしくお願いします。

【ふ~ど】ゲーミング寺子屋も名前がかわいいから言っているだけで、何歳でもいいし、みんなが適当に集まって、楽しい空間であったらいいなと。だけど俺は「若い子が絶対最強」って気持ちがすごく強いので、この考えを証明したいって気持ちはあります。

【YAS】次世代のプレイヤーにもプロになりたい方はたくさんいると思うんですけど、プロになるために強さ以外で必要なものって何だと思いますか?

【ふ~ど】「何になりたいか」は結構大きいと思っていて、ちゃんと自分と見つめている人は少ないんじゃないかなと。たとえば「有名になりたい人」と「最強になりたい人」なら最強になりたい人の方が強くなると思うんですよ。

目立ちたい、スト6がすごく人気があるから、SHAKAさんと一緒に格ゲーやりたいとか、いろんな要素でゲームをやること自体はいいモチベーションだなと思うんですけど、それが達成したときに追いつかれちゃったりするとも思う。なので、「最強プレイヤーになる」というマインドにできたらいいんじゃないかなと思います。

【YAS】じゃあ、そうした若い子たちに向けてふ~どさんからアドバイスするとしたら?

【ふ~ど】俺はずっとゲームはゲームだと思っているので、辛かったりつまらなかったらやめたり、ほかのゲームをやってもいいと思う。カジュアルな部分がゲームのいいところなのかなって思っているから、強制的に引き込んでもなって思っちゃうんですよね。YASさんだって3年後はもうやってないかもしれない。

【YAS】可能性としてはあります。

【ふ~ど】俺もそうじゃないですか。ただ、「今だけちょっとモチベある」ってことはいっぱいあるので、そういうときに今1番熱いところに行けるといいんじゃないかな。最近で言うとレッドブルの若い子に向けた企画(※「Red Bull 283 Academy」はプロゲーマーが講師となり、次世代を担うプレイヤーを育成するイベント)みたいなところに率先して応募するのがいいと思います。

今後の2人の活躍に注目だ!


【YAS】ありがとうございました。

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