「あん時はいじめてごめんな」20年後にいじめの謝罪!?いじめられた側は「一生許さねーよ!」ぶん殴るじゃ足りない思い【作者に聞く】

20年前、いじめられたことで人間不信になった。些細なことで人は裏切り、「やめて」と言ってもやめない人がいることを知った。「傷つけた方はすぐ忘れても、傷つけられた方は一生忘れない」そんなコメントも届く、漫画家の吉本ユータヌキ(@horahareta13)さんの『心の傷』を紹介するとともに話を聞いた。※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。


X(旧Twitter)で122万PVを獲得した『あした死のうと思ってたのに』を描く吉本ユータヌキさん。実は「漫画家をやめたい」と、肩書から漫画家を消した。それから一年、再び漫画が描けるようになるまで一体何があったのか?心と向き合う日々を描く『 「漫画家やめたい」と追い込まれた心が雑談で救われていく1年間 』も好評発売中だ。

20年後の同窓会でいじめたことを謝罪された。「若気の至りってことで、なっ!」

『心の傷』_02画像提供:吉本ユータヌキ(@horahareta13)

『心の傷』_01画像提供:吉本ユータヌキ(@horahareta13)

『心の傷』_03画像提供:吉本ユータヌキ(@horahareta13)

同窓会で久しぶりに再会したのは、いじめの首謀者の加藤。高校2年生とき、体育の授業でサッカーボールを加藤に当たってしまったことがきっかけで嫌がらせ行為が始まった。「やめて」と言ってもやめてもらえずノートに「死ねバカ、学校くるな」と書かれたり、上履きに画鋲を入れられたり、いじめはエスカレート。周りは見て見ぬふりをした。以降、主人公は人間不信に陥り、大学でも就職先でも人を信じることができなくなった。「加藤にとっては笑い話になったけど、ボクにとっては治らない傷になった」と、主人公は言う。

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本作の主人公は同窓会でいじめた子と再会するが、「いじめられたことや相手に対する気持ちは実話ですが、実際は同窓会に行ってはいません。」と、吉本さんはいう。「お誘いをいただいたのですが気持ち的に行けず。もし行ったら…と考えて描いたものです。やっぱり今でも許せない、許したくない気持ちも、何か一言言いたい気持ちもあり、けど実際は言えないので『言えたらいいな』という気持ちを作品にして、少しでも消化できればと思い、作りました。」と、制作の経緯を話す。

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再会した加藤は「あん時はいじめてごめんな、反省してるから許してよ」とヘラヘラしながら謝罪。「若気の至りってことで!なっ!」と、ビールで乾杯して水に流そうとした。まったく反省していない加藤の態度に、主人公はイライラが募った。

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「ぶん殴りたい」気持ちを押し殺し、トイレに逃げ込むと「そのイライラの話聞かせてくれよ、聞かせてくれたら何でもひとつ願いを叶えてやるよ」と謎の生き物が出現。過去の話を話すと謎の生き物は、「ぶん殴るだけじゃ足んねえなぁ。会社クビになるでも離婚させるでも、もしくは帰りに事故を起こすこともできるぞ」と主人公に言った。「どうする?あいつがどれだけ傷付けば許せる?」と、主人公に選択肢を差し出すと…?彼が選んだのは時間を戻すことだった。「あん時はいじめてごめんな、反省してるから許してよ」という場面に戻った主人公は「一生許さねぇバーカっ」と言い放つ。

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漫画のなかでは謎の生き物が提案した「会社クビになるでも、離婚させるでも、もしくは帰りに事故を起こすこともできた」はずだが、時を戻したのには理由があるのだろうか?「きっとどんな選択をしても、ずっと心に引っかかり続けるだろうなと思ったんです。例えば相手を成敗したとしたら、『本当に良かったのかな…?』『やりすぎではなかったか…?』と。なので、素直な気持ちを伝えたいという願いを叶えるのが、自分のためだと思ったからです。」と、吉本ユータヌキさん。

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コメント欄には「いや殴れよ」「許すわけねーだろ!って言いながらビールぶっかけてやる」などスッキリ展開を希望する声や「若気の至り、なんてのは許す側が使う言葉であって、ヘラヘラ笑いながら主犯格が使うものではない」「悪いと思ってるんじゃなくて、自分がスッキリして区切りつけたいだけ」など、加藤に対する声が多く届いた。吉本ユータヌキさんはコメントを読んで、「多くの方が『相手は自分がスッキリするために謝っている』というコメントが多く、本当にその通りだなと思いました。昨今SNSなど誹謗中傷が溢れる世の中で、何気ない一言で相手を一生苦しめてしまうかもしれないということを想像できない人が多いのかもしれないと思っています。なので、決して『謝れば許されるわけではない』ということが伝わればいいなと思いました。」と言葉を強くした。

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実際、いじめた相手に言いたかったことを言えたわけではない。しかし、「たくさんの共感や応援のコメントをいただき、気持ち的には少しスッキリしたところがあります。ずっとイヤなものとして引きずりながら生きてきましたが、たくさんの方と気持ちと共有できたといういい思い出に少しは変えられたと感じています。」吉本さんは漫画にしたことの変化をこう話す。

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「この漫画は『あした死のうと思っていたのに』という、ぼくの過去への想いを込めた短編集に収録されているのですが、25年8月に発売した『「漫画家やめたい」と追い込まれた心が雑談で救われていく1年間』というエッセイ本では、『心の傷は』を描く前の漫画家としての葛藤を漫画にしています。どのような経緯で漫画を作っていたのか、また、いじめられていた過去についてもエッセイとして書いているので、よかったらそちらも読んでみてもらえると嬉しいです。」


取材協力:吉本ユータヌキ(@horahareta13)

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