【漫画】躁うつ病の私が「すべてが嫌になって」マレーシアに行った話。多民族国家のマレーシアは生きにくい?【作者に聞いた】
東京ウォーカー(全国版)
「中学校2年生から高校1年生までのはっきりした記憶がない」
そう語ったのは、書評ライターや連句人として俳句や文芸情報をX(旧Twitter)で発信をしている高松霞さん
(@kasumi_tkmt)
。
家族の不幸に無意識に追い詰められていた日々と、それにより発覚した躁うつ病との日々を綴ってもらい、その心情にぴったりな俳句とともにコミカライズ。
作画は、自らのことを「霊感のようなものがある人間」と紹介する漫画家・桜田洋さん
@sakurada_you
が担当。その柔らかで心に染み入る絵のタッチと、鮮やかな色づかいが魅力だ。
今回は「自分は弟とは違って間に合った人間なのだ」と語る、高松さんが日本から逃げ出すようにして行ったマレーシアでの記憶と、飛行機で日本に戻るまでのシーンをお送りする。高松さん自身の俳句もあるので必見。
――今回の話で、一番読者に伝えたいことは何ですか?
高松霞さん(以下、高松):マレーシアへの旅行は、コロナ禍直前に行くことができました。日本では東京オリンピックを控え、Welcome外国人!オモテナシ!の雰囲気がありましたよね。難民、移民差別、外国人留学生、さまざまな問題を抱えながらです。その不可思議さ、生きづらさは、躁鬱病患者というある種のマイノリティにとっての生きづらさとも似ているのではないか……という気持ちがありました。マレーシアには「なんもない」と書いてしまいましたが、日本にはない多様さ、それが日常になっているという素晴らしさがあると思います。
――1つ目の俳句「とつくにの……」について、どのような思いで選んだのでしょうか?
高松:作者の中村安伸さんは俳句の友人のひとりです。『虎の夜食』という私も大好きな句集を出されていて、どれか入れたいな〜とページをめくっていて「とつくにの〜」を発見しました。うとうとしちゃうシーンにぴったりだと思いませんか?
――「私は間に合った人間」という部分が印象的でした。マレーシアから日本に帰る飛行機でふと思った理由は何だと思いますか?
高松:機内で小さくアナウンスされる「テイクオフ」の一言がとても好きです。後戻りできない、このまま空を抜けて、その土地に向かわなくてはならない。冒頭で「逃げるように」と書きましたが、逃げるように生き延びたという実感があります。
――2つ目の俳句「地図になき……」は高松さん自身のものです。どのような思いで作られたのか教えてください。
高松:編集さんに「高松さんの句も是非……」と言われて出しました!(笑)桜田さんもおっしゃってましたが、このシーンにぴったりですよね。地図にない島はきっとまだあって、そこに着くことができたら、失った人ともまた違った関係性で会えるのかもしれません。
第2話では、多民族国家マレーシアでの記憶と、「自分は間に合った側の人間なのだ」と気づいたエピソードについて綴ってもらった。人とは異なる視点で眺めた世界と、じわっと心に染み入る俳句が織りなす情景を、じっくり味わってみてほしい。
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